アイドルと神話
時代の潮流に乗り遅れないように、話題の事象には乗っかってみるようにしています。ジャンルに得手不得手もありますから、すべての…というわけにはいきませんが、意識ひとつで変わる視界もありましょう。
さて、今宵はYouTubeの再生回数が2億回を超えたYOASOBIの『アイドル』たる楽曲を視聴してみました。
やばい耳に残ります。
アイドルも音楽も専門外ですが、そんな私が聴いても実にアイドル的な歌と感じます。YOASOBIといえば『夜に駆ける』のイメージが強いものですから、これは少々癖があるように感じますが、可愛い雰囲気とウザい媚び声の境界線上にいるような絶妙な演出がヒットしているのでしょうか。
これを機にYOASOBIの作品を改めて色々と見て聴いていたところ、まさに時代に求められている流行のようなものか…などと思いつつ、やはり言わずにはいられません。
毒気がない。
テーマごとに色彩を変えますが、喜怒哀楽の感情を豊かに表現しながら、しかし毒気がありません。それは曲自体の造りも、ボーカルの歌声も同様で、夜遊びしてたんだろうか。いや夜遊びはしていたかもしれませんが、火遊びをしたり病みの中に浸かったりはしていなかったんじゃあないかと、そんなことを想像します。精神性が健全に思われて、それが多数派に受け入れられる所以なのかもしれませんが、私にとってはサビ抜きの寿司のような、或いは山椒のない鰻重のような、物足りなさを感じられるのです。
では、どうしたらいいか。
ここは毒気の馨しい作品に触れて自分を取り戻す試みを始めることにいたしましょう。
さぁ、ラヴクラフトの作品は用意しましたか?
小説はもとより、漫画版も秀逸です。
アイドルを偶像と訳するならば、古の神々に関する伝承もまたアイドル的といえるかもしれません。
貴方の推し邪神は誰ですか?
あぁ、便宜上「邪神」といいましたが、正確には神でも旧神でも旧支配者でも外なる神でも構いません。私が申し上げておりますのは、クトゥルフ神話に登場する、ヒトあらざる何かのことです。
拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、
ああ そんな…!神よ!
窓に! 窓に!
ー了ー