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維持って大変なことよ

「さいきん、ムシがふえてない?」

 息子がポツリと疑問を呈しました。春から夏にかけて、たしかに虫の増える季節です。そうだね、と応えると続いて彼は訊ねました。

「どうしてさむいとムシがすくないの?」

 なぜでしょう。寒いのキライなんじゃないかしら。あんまり寒いと凍っちゃうし。そもそも虫は恒温動物ではないし、そう、恒温動物じゃないからかな。と私は答えました。

「こうおんどうぶつってなに?」

 体の温度を保つことのできる生き物だよ。自分で熱を作れるんだ。人間も。大きい動物とか鳥は大体恒温動物かなぁ。自分で熱を作れるから、寒いとこでも結構大丈夫なのよ。

「あー、シロクマとか、ペンギンのこと?」

 そうそれ。自分で熱を作れない動物は、変温動物っていうんだ。例えばヘビなんかは変温動物だから、暑ければ体も暑くなるし、寒いと冷たくなる。すっごく寒いと動けなくなって寝ちゃう。冬眠っていって、冬の間はじっとして寝ているような感じらしいよ。

「ズコー。ねるんかい!」

 省エネなんだよ。熱を作るのってすごくエネルギーを消耗するから。体温を保つためには、めっちゃエネルギーを使う……



 …そう。大量消費社会の始まりは、恒温動物の誕生の瞬間なのかもしれません。高い活動性を維持するためには、そのためのコストを払い続けなければならないのです。その仕組みはマクロな視点にも通ずるところがあって、人間社会や国家はそれ自体が恒温動物に近いもののように感じます。

 全ての生物に生老病死があるように、天体にも寿命があります。恒星の死は所属する惑星の死を招き、それは不可避の現象です。どうして社会や国家や文明に、寿命がないと言えましょうか。いつか死を迎える此の宇宙に居ながら永遠の成長を謳うのは欺瞞でしょう。それは終末期医療に延命治療を強要するようなもので、度し難い愚者の蛮行、すなわち生命に対する冒涜です。

 そう考えると、日常に起こり得る問題など瑣末なことばかりです。大体なんとかなります。

 高ストレス社会と呼ばれて久しい日本社会ですが、日常生活のストレスを書き出して分類して宇宙と比べると、どうでもいいことだらけです。


 祈り、暮らす。それだけでいい。


 いつだって真理はシンプルです。理性的思考は科学との親和性が高く文明を発展させるけれど、置き忘れた感情の中には幸せがあったはず。




 拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、貴方が祈り暮らす穏やかな日々に、幸せの燈が灯りますように。




#未来のためにできること
#エッセイ #ムシ #息子4歳
#脱成長 #祈り暮らす #育児日記

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