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V系の話

 学生時代からルイ・ヴィトンに身を包む姿は煌びやかで、その資金はどこから来るのか、と訊ねたことがありました。

 ああ、これ?

と、何でもないことのように応える指先にも気品があって、育ちの良さを感じます。高校生の頃に親から融資を受けて資産運用を始め、大学入学後は奨学金を運用して余剰資金でブランド品を購入している、とのことでした。

 丁寧に使えば長持ちするし、価値も落ちにくいから飽きたら売ればいい、とのこと。コイツ只者ではないと確信した私は、心の中で「ルイ・ヴィトン」と呼ぶことにしました。

 ルイを実家に招いたときには、なんて上品な子だろうと驚かれたものです。不思議とヴィトンも下品な感じにならないのは、ファッションへの取り入れ方とか立ち振る舞いの成せる業なのだろうと私は思いました。

 なんやかんやあって卒後にはすっかり会わなくなりましたが、ヴィトンを見かけるとルイのことを思い出します。


 先日、予期せずルイに遭遇しました。

 互いに気付いて懐かしいなぁと挨拶を交わした直後、ルイは私の身体をじっと見ながら言いました。

ねぇ惺仁くんって、ウエスト何センチ?
すっごくスタイルいいよね。
モード系とか似合いそうだし、
いいなぁっていつも見てた。
僕なんて30過ぎてから太っちゃってさ。

 
 彼はそう言って笑います。

 太ったようには見えないけど、と応えると、いや〜おなかがね?と肩をすくめます。相変わらず彼の仕草は洗練されていて気品が漂います。

 人生ファッションにも色々なスタイルがあります。

 それぞれの色を存分に発揮できる社会がいい。

 Vヴィトン系男子に祝福を。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方が貴方の好きなものを胸を張って好きと言える世の中でありますように。



#多様性を考える #LGBTQ
#エッセイ #三人称の表現って難しい #週末プロジェクト

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渡邊惺仁
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