サバを読む話
生まれてこの方サバを読んだことのない男、渡邊です。嘘です。細かい数字は違ってもニュアンスが伝わればいいかと思い、問題にならない範囲でサバを読みます。どんぶり勘定です。
サバは痛みやすい魚ですから、昔は慌てて数えて数の間違いが多く、数え間違えることをサバ読みと表現するようになったことを知りました。転じて意図的に数を増やしたり減らしたりすることも「サバを読む」と言うようになったとか。
例えば検査結果の数値は細かく言い過ぎると却って分かりにくくなりますから、患者さんに説明するときにはある程度サバを読んで伝えます。基準値上限の5倍くらいとか、2cmくらいの病変だとか、そんな雰囲気です。
日常生活でサバ読みされることの多いものは色々ありますが、代表的なものは何でしょうか。身長や体重や年齢あたりはよくあります。それ自体に是も否もありませんが、時折驚くようなサバ読みに遭遇することがあります。
一歳半の娘は言葉が増えてきて、言語コミュニケーションが徐々に円滑になってきました。年の近い兄の影響を受けて、積極的に言葉を使おうとしています。指で「1」を表現できるようになった彼女は、質問の意図を理解して自分の年齢を答えます。
「娘ちゃん、何歳?」
と訪ねると、元気良く「1」を作って、満面の笑みで
「三歳!!」
そこでサバ読むんかい。
三歳!?いつの間に!?と驚きながら、最近まで一歳じゃなかったかと訊いてみたところ、娘は自分の手をジッとみてからギャリック砲のポーズで
「ご!!」
と叫びました。
考えたな!ちくしょう!!(cv野沢雅子)
危うく地球もろとも宇宙のチリになるところでしたが、どうにか三倍界王拳で迎え撃つことに成功した私は考えます。成程これが今流行りの年齢自認の問題か、と。ともすれば非常に繊細なテーマです。彼女の年齢自認は三歳から五歳。つまりトランス三歳ないしトランス五歳ということになるでしょう。これはしっかり向き合わねばなりません。再び質問してみましょう。
「娘ちゃん、何歳?」
「三歳!!」
トランス三歳です。満面の笑みです。
脅威の二倍サバ読み。全王様もおったまげです。
そんな限界突破×鯖イバーな娘ですが、兄のことが大好きで、最近は二人で同じ一発芸を繰り出してきます。最近の流行りは「ちょーっとだけ…ちょーっとだけ…ちょーっとだけ…ビヨヨ〜ン!」と「こわいぞォ〜」です。繰り出すタイミングと声のトーン、振付と表情がポイントです。
さて、貴方はサバ読みの経験がありますか?
渾身のサバ読みエピソード、お待ちしております。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、鮮度が落ちる前に美味しいサバを食べられますように。