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お化け屋敷と三歳児
先日、お化け屋敷に行きました。
それは子供でも入場できるような、比較的小規模な屋敷でした。
「おばけやしき!?いきたいいきたい!」
と意気揚々な息子を引き連れて、列に並び順番を待ちます。独特な雰囲気が漂う異世界感に、息子のワクワクも最高潮に達していきました。
いよいよ扉をくぐろうとすると、屋敷の中が暗いことに息子は一抹の不安を覚えたようです。しかし強気に「ようし、おばけをたいじしてやるぞ…」と拳を握りしめていました。パンチしちゃいけないよ。おばけも多分痛いからね。
屋敷の中に入って数メートル進んだあたりで、息子の足が止まります。私の手を強く握りながら、
「な、な、な、なにかいる…!」
とビビりまくっております。ええ、そりゃあ何かいるでしょう。ここはお化け屋敷ですから。
ええ?なにかいる?ととぼけながら息子の手をひいてもうすこし前に進みます。完全に腰の引けた息子は首を振りながら、
「だ……だっこ!だっこだっこだっこ!!」
と明らかに取り乱しておりました。
抱き上げないと前に進めそうにありません。私は息子をヒョイと抱き上げて、ゆっくり前に進みました。あぁ、お化けが👻出てきますね。
ビビる息子は必死の形相で呟き始めました。
「ねぇ…かえりましょうよ…」
「出ましょうよォ…。出ましょうよォ…。」
深夜に枕元で囁かれたら霊障かと思うような独特のイントネーションで、貴様お化け側かとツッコミたくなるほど「出ましょうよォ…。」を連呼しています。なぜ敬語なんだい。
その後、いよいよ登場するお化けたちに都度驚きながら恐怖しながら、発する言葉は「ぎゃー」でも「うわぁー」でもなく
「ィィ゛出ましょうよォーーーー!!!」
身体を機敏に捻るもんですから、抱っこバランスを取ろうとする私とのコンビネーションで、奇妙な動きをしながらお化けに接近していくクリーチャーが誕生しました。私もとうとう笑いを堪えきれずにフフフッフフフフフフッあはははははははははははははははははははと笑いながら歩きます。
出口に辿り着いた息子はしばらく放心してから、おばけ…こわかったねぇ、と呟きました。
かくして三歳の息子の楽しいお化け屋敷デビューが幕を閉じました。
拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、貴方の訪れる屋敷のお化けがポップでチャーミングでありますように。
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