ZOO 《詩》
「ZOO」
まだ眠たげな瞳の新しい太陽だけが
空にある 雲ひとつない
作り損ないの風景に剥き出しに
なった自我を意識の中に見た
深い孤立のうちに時が過ぎた
特殊な大陸の様だ
世界で一番古い魔法を使う毒蛇と
進化の過程で太陽の炎に焼かれて
孤絶した人々の影が揺れていた
中華街にあるレストランでは
趣味に合わない服を着せられて
無理に引っ張り出された様な
不機嫌なウェイトレスを
クロコダイルのジャケットを着た
ギャングが口説いていた
まるで論外
そう言わんばかりの無愛想な態度
ウェイトレスの歪めた口には
歯列矯正の為に取り付けられた
鉄のワイヤーがセクシーに光っていた
哲学的で頑ななまでの沈黙が
漂着した時には
もう閉園時間が迫っていた
やる事の無くなったひと昔前の
社会主義者とアイリッシュ•パブで
生ビールを飲む
別に悪い奴じゃ無い
善意はあっても今の事情が彼には
よく理解出来てない
それだけの話しだ
栄光に包まれた勝利の記念碑がある
直ぐ側を流れている川は
緑色に変色し腐っていた
人口増加と共に汚濁して行ったのは
なにも空や海や川だけじゃ無い
幸福なセレモニーと
絶賛の嵐だけじゃ不気味だろう
そう言って彼は笑った
一片の懐疑も無く与えられた餌を
喰らう動物達
閉鎖された壁と檻
其の上にも空はある
研ぎ澄まされた深層意識の様に空に
星が輝き始め
太陽は死ぬ様に眠りにつき
月はゆっくりと目を覚ます
動物園は閉園の時間だ