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夏霞 《詩》
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「夏霞」
大義名分とか 不変の真理とか
価値観の錯乱とか
閉塞した状況にある抜け道だとか
浮浪者の様に貪り酒を煽り
深夜に台所のテーブルで
詩を書き続ける事だとか
赤子を抱いて
子守唄を歌う反社の女だとか
永遠に失い続ける宿命だとか
人生における
正常な軌道から ずれ始めた事だとか
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確かあれは三日前
空から綺麗な星が落ちて来た
その時 始めて知ったんだ
幻想に似た夏霞
あの時 全て受け入れたんだ
彼奴が姿を消した本当の理由を
優しさの中にある強さの意味を
いつからだっけ
人が城を作り始めたのは
愛しき人が愛しき人へ捧げた詩は
決して消える事はない
確かあれは三日前
空から綺麗な星が落ちて来た
たなびく霞は夏の夢
夜は明け方 刃物の様な細い月
僕は ひとり空へと手を伸ばす
過去は過去 未来は未来
確かに僕等はあの街角で出逢った
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