風見鶏 《詩》
「風見鶏」
忘れたいものは絶対に忘れられない
風向きひとつで
くるくると回る風見鶏
どんな色をした風でも構はしない
其処には独自の世界も意志も言葉も
持たない哀れな姿があった
僕は笑って黙殺した
忘れなよ そんな事は
誰かが僕にそう言った
あの時殺したのは他でも無い
自分自身だったからだ
僕はひとりボトルを開けた時の
ウィスキーの香りを思い出していた
ハイボールを飲む君の横顔
灰皿の上のメンソールの煙
朝まで語り合ってた夢
忘れたくないものは
時間の経過と共に
緩やかに弧を描き
少しづつ色褪せてゆき
忘れたいものは絶対に忘れられない