【テキスト】スキマゲンジ第31回「真木柱」その2

前回のあらすじ。
玉鬘を手に入れた髭黒大将ですが、北の方には物の怪がついていて錯乱することが多いのでした。

スキマゲンジ第31回「真木柱」その2。
不運な美女たち。

翌日の夕方になると髭黒大将はそそくさと出かける準備をします。昨日来ていた衣装は香炉をぶちまけられたので、焼けて穴が開き、焦げた臭いもついているので、少し体に合わない衣装を着ます。

玉鬘はうつくしく、北の方のことを思い出すのもイヤなので、髭黒大将は自分の邸に戻らない日々が続きます。物の怪の発作が頻繁に起きているようで、それを聞くにつけ恐ろしくてなおさら寄り付こうともしなくなっています。

北の方の父親は「そんな状態で、大将の邸にとどまっている必要はない」と、ついに迎えに来るのでした。

大将と北の方の間には子どもが3人います。姫は北の方が連れて行くことになりましたが、男の子2人は邸に置いていきます。姫は大将にとても可愛がられていたので、「父君に会ってから出かけたい」と言いますが、大将は戻ってくるはずもありません。姫君は、いつも寄りかかっていた柱に歌を書きつけて、泣きながら邸を出るのでした。

髭黒大将は、北の方と姫が実家に戻ったことを聞いて、「父親の兵部卿宮が決めたことだろう。世間体の悪いことだ」と邸に戻ります。玉鬘は、そんな揉め事の原因が自分であることを心から嫌だと思っているのでした。

北の方の父、兵部卿宮は、髭黒大将に会おうともしません。もちろん、姫を会わせることもしないのでした。

そんなこんながあって、玉鬘が一層ふさぎ込んでしまっているので、髭黒大将は、玉鬘を出仕させることにします。

宮中は冷泉帝に仕える女御や更衣たちがたくさんいて、華やいでいます。ちょうど男踏歌という行事も行われていて、殿上人も女性たちもみんな華やかに着飾って楽しんでいます。玉鬘も女房たちも、このように晴れやかな気持ちで過ごせたらと思っています。

髭黒大将は、宿直をしながら「夜になったら退出させよう。宮仕えに気持ちが移ったら厄介だからな」と女房たちに催促しています。女房たちは「源氏の君が、帝の許可を得てから退出させるように、と仰っています」と言います。

蛍兵部卿の宮は、玉鬘が出仕していると聞いて、こらえきれず文を送ってきます。玉鬘が戸惑っているところに、帝がやって来ました。

月明かりに美しい姿が見えます。源氏の君に気配までそっくりです。帝が、思いもかけず結婚してしまわれたのですね、と言うのを、玉鬘は顔も合わせられない気持ちで聞いています。

髭黒大将は、帝が玉鬘の局に行ったということを聞いて、落ち着かなく急き立てます。玉鬘も、このまま帝のそばにいると間違いが起きてしまうかもしれないと思うので、何とか退出の許可をもらうのでした。帝は、玉鬘が噂以上にうつくしいので、退出させるのも残念に思っています。大将は、玉鬘がいる局のそばまで車を寄せて、付け人たちも近くに侍らせています。帝は「こんなに監視がきびしいのは、やりきれないな」と不快に思いますが、「どうやってあなたに文を届ければいいのでしょう」と思い悩む様子は勿体ないほどありがたいことです。

髭黒大将は、その車を、直接自分の邸まで走らせます。内大臣も源氏の君も、あまりの失礼さに呆れてはいますが、どうしようもありません。玉鬘も思いがけないことだったので嘆いていますが、髭黒大将ひとりが、宝物でも盗んできたかのように大喜びしているのでした。帝に対してやきもちを焼く髭黒大将を玉鬘は不快に思い、これまでにないほど冷たい態度を取るのでした。

次回スキマゲンジ第31回「真木柱」その3は、その後の玉鬘と北の方、少し近江の君も登場します。

玉磨かざれば光なし。お楽しみに。

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