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国家戦略から見た中国語の重要性

当noteでも度々言及していることではありますが。

中国語を操れる日本人の人材が少なくなっているというのを、最近身をもって感じています。民間の企業でも「中国語ができる人材」の求人募集が減っているということも関係しているのでしょう。対中感情の悪化という面もこの下火になっている中国語学習のブームに拍車をかけているのかもしれません。

そのような中、今回NHKの外注の中国籍職員が外国語放送で、「釣魚島は中国の領土」「慰安婦、南京大虐殺を忘れるな」と原稿に書いていないことを話したということで大きな議論と話題を呼びました。

「中国人はけしからん」とか「NHKはなぜ中国人を雇ったんだ!!」という感情的な批判は抜きにして、このニュースから透けて見えるものがあります。それは「中国語を完璧に操れる日本人の人材は国内において本当に足りているのか?」という疑問です。

特に近年、中国やロシアなどイデオロギー面で対立している国と日本が「国際社会でどう折り合いをつけていくのか」という問題は、日に日に深刻になっています。

だからこそ私たち日本人は、「国家戦略としての日本の立場や文化の対外宣伝」の重要性をしっかり理解しなければなりません。なぜなら中国もロシアも「対外宣伝」という点でいうならば、日本よりも一歩二歩先を進んでいる国だからです。

ロシアといえば伝統的に「対外宣伝」に力を入れてきた国です。短波ラジオを聞いたことがあるならば、モスクワ放送を聞いたことがあるかもしれません。モスクワ放送も、日本語を含む世界中の言語で世界に向けてロシア(ソ連)の立場を24時間にわたって宣伝してきました。

ここに最近では中国が加わっています。中国は自国の豊富な資金力をバックにここ20年の間に、テレビ、ラジオ、インターネット、マルチメディアなどさまざまな媒体に多額のお金を投資してネットワークを整備してきました。そして今中国はこれらのメディアを通じ、国内のみならず海外に向けて世界中の言語で自国の立場、思想、文化などを大々的に宣伝しているのです。実際これらの宣伝のおかげで世界には多くの「中国の支持者」が生まれ、成果を上げています。

一方で日本はと言うと、対外宣伝という意味では以前からこれらの国に大きく後れを取っていました。ただ、自動車産業や電子産業漫画アニメなど日本の強みも徐々に育ってきてはいます。しかし00年代以降は、経済衰退を背景に、日本はこの分野でますますじり貧となっており、外交や経済の面で負け続けていると言っても過言ではないでしょう。

ただ中国に関しては、彼らの対日宣伝は必ずしもうまく言っているようには見えません。北京放送についても日本語放送はありますが、一方でCGTN(中国中央テレビの国際放送)には、英語、スペイン語、アラビア語など諸言語の放送はあるものの、日本語放送はありません。人民日報には日本語版がありますが新華社ウェブサイトなどには日本語版はない状態です。日本語独特の難しさも関係しているのかもしれません。

だからこそ日本政府は、「中国語をしっかり操れる日本人」の人材を利用して対中宣伝を強化する必要があるのです。これらの面から国の言語を使える人材というのはとても重要と言わざるを得ません。

奇しくも今回の事件で、NHKは海外放送の重要性を正しく理解していないということ、そして「中国語ネイティブの人は日本の政治的立場を正しく伝えられない可能性がある」ということが露見してしまいました。NHKには今回の件を反省し、「中国語放送に携わるアナはすべて日本人で」と言うぐらいの気持ち(物理的に難しいのでしょうが)で、しっかりと「リスク管理」をしていただきたいと思います。

◇◇

一方でわれわれ個人的なレベルでいうならば、外国語を勉強するようになるきっかけというのは大体において、その国の文化や習慣、人々に興味を持ってやる、というのが一般的なはずです。その面から言っても中国語というのは、政治的な影響でモチベーションをやられやすい言語であり、続けるのに非常にタフなメンタルが必要な言語だと実感しています。

だからこそ言いたい。昨今の中国、ロシア、朝鮮半島の政治情勢をうわべだけ見て、「中国語、韓国語、ロシア語を学習する人」に批判的な目を向けたり、「NHKは中国語、韓国語、ロシア語の放送をやめてしまえ」といった的外れな攻撃をしたりするのはやめていただきたい。彼らの中には、将来国益に資する重要な職務を担うかもしれない人たちもいるのです。「その国が嫌い」だからといって対外宣伝までやめてしまうのは愚の骨頂だということをしっかり理解しないと、日本という国の国力をつぶすことになりかねません。

「中国語、韓国語、ロシア語を学習する人」が増えることを願って。


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