中国外交部ウェブサイトの見方
私のこのnoteをフォローしていたり、私のツイッターをフォローしている人の中には、中国事情に注目していたり、はたまたチャイナウォッチを生業としている人、さらにはチャイナウォッチャーを目指している人たちもいらっしゃると思います。
そこで今回から数回に分けて、そのような方々向けに、「中国ニュースの基本技・基礎知識」をご紹介したいと思います。
今回は多くのチャイナウォッチャーが注目しているであろう「外交部ウェブサイト」の見方を解説します。日々チャイナウォッチをしている方々にとっては、「そんなの当然だよ」と思えるものばかりでしょうが少々お付き合いください。
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情報ソースが限られている中国においては、外交部ウェブサイトは中国政府の外交政策、要人の動向を知る上で貴重な情報源となっています。ただそうは言っても、やみくもに外交部ウェブサイトを見るだけではどこにどのような情報が隠れているか効率的に探ることはできません。このため、外交部ウェブサイトを開いたら真っ先にチェックする必要がある箇所を見極める必要があります。
私が普段、外交部ウェブサイトのトップページを開いた後に真っ先に注目する場所は以下の青マルの部分です。
トップページで注目すべきなのは基本的に数か所でしょうか。
ページ上の右側にある習近平以下国家指導者の動向のニュースは、基本的に新華社のと同じであることが多いですし、外交部のウェブサイトを見なくても事足りる場合が多い。しかも並びが日付順ではなく、習近平をはじめとする党の序列の並びになっているので非常に見にくくなっています。
つまり習近平の動向が立て続けにあったときなどは、同じ日のニュースであっても、李克強や楊潔チなどの序列がやや低い指導者のニュースは埋もれてしまい、トップページ上の右側の見出しの末尾についている「更多」を押して詳細を表示しないとわからなかったりするのです。ただまあ、そういう場合は新華社など別のメディアが先に速報していたりするんですけどね。
注目すべきはキャプチャー2枚目、3枚目の「发言人表态」「外交部长活动」「外交部新闻」、そして○はついていないですが次点で「业务动态」でしょうか。
「发言人表态」はその表題の通り、外交部報道官主宰の定例記者会見の実録が掲載されている項目です。平日の毎日大体日本時間で午後7時~11時すぎごろまでの間に、その日に開催された外交部の定例記者会見がアップされます。また記者会見がない週末や日中、夜間であっても、緊急の場合は外交部報道官談話がアップされたりします。このため、私が真っ先に注目している項目となっています。
「外交部长活动」も、その表題の通りです。外交部長(今なら王毅)の動向が主にアップされています。特に王毅の場合は精力的に動いているため、外遊のときなどは毎日アップされることが多く、気の抜けないことが多いです。
「外交部新闻」は、主に外交部副部長、部長助理クラスの指導者の動向がアップされています。この項目もそれなりに動きはあるものの、「发言人表态」「外交部长活动」と比べるとそれほど重要度も、注目度もそれほど高くないとは言えます。しかしまれに副部長が米国などの重要な国で行った講演の内容が立て続けに出ることがあったりしますし、台湾問題や対米関係の問題で見解を講演の中で語ったりするので、やはり1日に1回は確認したりしています。
「业务动态」はさらにその下の職位である、各司(局)の司長クラスの指導者の動向がアップされているので、重要度はさらに下がります。ただ、ここも「まれに」、米国や日本、欧州の国の中国駐在使節を呼んで抗議したなどといったニュースが出たりするので、そのあたりは気が抜けないところです。
これら3項目の下にある「驻外报道」は基本的にあまり注目しません。各国駐在の中国大使館の「数日遅れの」ニュースがほとんどなので新鮮味はないからです。
その代わりにより新鮮なニュースを求めて、各国駐在の中国大使館のホームページを巡回することも度々やっています。その場合に重宝するのがトップページ上(キャプチャー1枚目)の「驻外机构」です。
この項目にカーソルを置くと、「驻外使馆/驻外总领馆→亚洲/非洲/欧洲/北美洲~」とあり、さらにこのリンクをクリックすると、各国駐在の中国大使館、総領事館の紹介ページに飛ぶことができます。
ここに各国駐在の中国大使館のウェブアドレスがあるのです。これを利用して各国駐在の大使館のウェブサイトを巡回することになります。こうすれば各国の中国大使館(または総領事館)が発出したローカルニュースを、外交部サイトのトップページ下にある各国駐在大使館の情報よりも早く見つけ出すことができます。
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最後に。トップページ上にある「外交部」の項目にカーソルを置くと「主要官员」という項目が出現します。ここも結構注目しているページです。
基本的に中国の部長(閣僚級)未満の人事と言うのは、あまりメインニュースで報じられません。なので人事で誰が異動したかはとても分かりにくくなっています。
ならば、どうやって人事が交替したかを見分けるのか。とても原始的ではあるのですが、目視に頼るのが一番なのです。定期的に担当官の内訳を見て、写真や名簿に変化がないか、新しい人が入ったり、今まで入っていた人がいなくなっているかどうかを見る。実際に台湾メディアや香港メディアをはじめとした大陸以外のチャイナウォッチャーもこの手法を活用しており、メディアも現に度々ニュース記事にしています。
注目すべきは「誰がいないか」「誰が入ったか」だけではありません。写真の順序もとても大切です。なぜならこれは部内(外交部党組内)での序列も意味するからです。人が代わっていなくても、順序が変わっていたら序列の変化を意味するわけですから、部内で「何かがあった」と推測できるわけです。
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どうでしょうか。「こんなに多くのページ見切れないよ」とおっしゃる方もいると思います。私は効率化のため、グーグルクロームの拡張機能「page monitor」を使っています。これは、指定されたウェブページの新着情報があるかどうかを、設定された時間間隔で定期的に自動巡回してくれる機能で、かなり重宝します。皆さんも使ってみてはいかがでしょうか。