終わりが始まる気配など、皆無
出会いがあれば別れがある。
始まりがあれば終わりもある。
世の摂理である。
井伏鱒二が訳した于武陵の勧酒。
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
これを思い知らされた気がする。
ジャンプ本誌で「ハイキュー!!」が完結してからもう8か月経とうとしている。
原作が終わる=舞台も近いうちいつかは終わる。ある程度の覚悟はしていた。
でもそれは、突然、あっという間に訪れた。
前々作「最強の挑戦者」はコロナウイルスの影響であえなくほぼすべての公演が中止となった。
その間に原作が終わった。
次に対音駒戦の「ゴミ捨て場の決戦」
終わりが近い、のかな。
「まだ、終わらないでほしい」
音駒戦の中に出てくる言葉だ。
次は鴎台と貉坂&梟谷編だな、そんでブラジル&Vリーグ編で終わりかな。
そう思っていたが。
制作者サイドからは「終幕」のアナウンスが出された。
終幕
LUNA SEAかっ!!と突っ込まずにはいられないくらい動揺した。
何せハイキューもだし、ハイステも短いながら私の人生を作って勇気を与えてくれた作品だ。
こちらの記事にある文章の一説「がむしゃらにがんばっている人はかならず、未来を見ている。その人の瞳には、信じる未来が映っている。」まさに主人公の日向翔陽はこのタイプだったし、他のキャラクターたちも皆、一様に何かの目標を掲げ、時に悩み、壁にぶつかり、それでも自分たちのプレー、自分たちのチーム、そして自分自身を信じてきた。
正直最初からハイキューが特別好きだったワケではない。
コミックスは惰性で買っていたので内容もキャラクターにも大して思い入れはなかったし、ジャンプ本誌もゴミに出すのが面倒で途中から買うのを辞めた。アニメもやっていれば見る、程度のものだった。
当時、志おんには何もなかった。
知らない土地、知り合いも誰もいない。仕事も見つかったが配偶者からの強い希望で派遣または契約社員しかダメだと言われ、やりがいもない。
悩みだけが毎日ぐるぐる先行している。生きる価値とは何だろう、ただ苦しい、虐げられるだけの生活から抜け出したい。
けどどうやって?お金もないのに?職もないのに?
自分の価値とは?自分の意味とは?
自 分 は 何 者 だ ?
こんなことばかり考えていれば当然病む。見事に病んで寝れなくなった。まともな生活は送れなくなった。まともに動ける日は一カ月のうち5日あるかないか。もともと酷かった配偶者からの扱いも、もっと酷くなっていった。
そんな時、Twitterで「今週のハイキューはヤバい」というtweetを見かけた。
なんでも春高編真っ只中、ゴミ捨て場の決戦中だという。
ゴミ捨て場の決戦というのは物語にも出てくる俗称で、主人公のいる烏野高校と東京の音駒高校が対戦する時にはそう呼ばれる。
カラスもネコもゴミ捨て場の住人だからだ。
10巻くらいまでは真面目に読んでいたから、音駒は知っている。やる気のない陰キャセッター・孤爪研磨と、胡散臭いパリピ系ミドル・黒尾鉄朗、時代外れもいいとこなヤンキー・山本猛虎、現監督&コーチは学生時代からの因縁・直井学、若干のネタバレになるが、こちらも中学生時代からのライバルで再戦ゴミ捨て場の決戦を願う猫又育史。全員ご紹介したいが割愛。キャラ、だけじゃない。設定濃ゆ。
これだけ盛り上がっているのだから相当面白いのだろう。どんなものか、けど本誌買うのめんどくさいな。
と思っていたところ。
ジャンプ+という名のアプリで読めるという。しかも今すぐに。
これは!!!!!!買いだ!!!
そう思って早速月額会員になって、その週のジャンプを読み漁った。
ヤバい、というか、なんなんだ??
その週は、音駒の幼馴染、黒尾鉄朗と孤爪研磨の出会いの回想を綴っていた。
自分が認識していた「黒尾鉄朗」という人間は、キャプテンの資質である面倒見がよさそうな雰囲気を備えてはいるが胡散臭く掴みどころがない。腹が黒そうで食えない感じの、だが人当たりはよく気さくなので、きっと普通にモテるであろう。現にゴミ捨て場の決戦では「黒尾先輩、かっこよくない?」という声が応援団から聞こえている。
孤爪研磨はというと陰キャ、ゲームしたさに夜遅くまで起きていることを親に怒られ逆転の発想で早朝に起きてゲームをするレベルのゲーマー(やりこみ系)でオタク気質だが自頭はよさそうな感じ、どちゃくそマイペースで長い黒髪が目立たないようになぜか髪を金髪に染める、観察眼が鋭くいつも黒尾に世話を焼かれている弟のような雰囲気を持ち合わせている。
幼い二人はある日突然、出会う。
家庭の事情で引っ越してきた黒尾。黒尾家が孤爪家へ挨拶しに来た際「年が近いというだけで、 仲良くなれると思うな大人達」と出会いを懐かしんでいる。
そこから二人の関係性が語られていく。
なぜ研磨がバレーを始めたのか。二人が今日(こんにち)までバレーを続けてきたか。そしてなぜ二人が音駒に進学したのか。
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?
ハイキューってこんな深い話だったっけ?ただバレーやってただけじゃないの??話が進めばこういった関係性の話にもなってくるか・・・などと思いながらその週は話を読み終えた。
深い!!!!!!!!!!!!!!!!!
そこからハイキューにどっぷりハマった。毎週本誌は欠かさず見ていたし、グッズを集めたり、コミックを再び読み漁ったり、アニメも見直した。
そんな中、運命的としか言えない出会いをする。
当時、志おんには「2.5次元」の舞台というものに、正直いいイメージはなかった。某テニスの漫画は某動画サイトで格好のネタにされていたし、クオリティはどうなっているのか。だいたいが「コスプレした役者が歌って踊ってる」くらいのイメージしかなかったのだ。
あの宝塚でさえ、ベルばらをやるときに上演反対の声が上がったそうだ。自分が好きな作品だからこそその思いは強いだろう。
志おんもそうだった。
ハイキューも舞台をやっているという話を聞いてはいたが、自分の愛する作品がどんなものになるのかわからない。原作とは違った手が加えられ違った解釈をされるは嫌だった。ビジュアルは?大体どんな人が演じるのか。考えれば考えるだけ不満が募っていったので、考えるのはやめた。
その日は何か欲しいグッズがあってジャンプショップに立ち寄った、んだと思う。このあたりの記憶は定かではない。
その際にレジのお姉さんが「チラシ入れておきますね」と言っていたので「あ、はい」と適当に返事をした。
家に帰ってから袋を開けるとチラシが一枚入っていた。
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」"最強の場所(チーム)"
げ。。
舞台のチラシかよ。見たくないな。そう思ってチラシを見た。
・・・・・・・・え。すご。
とても驚いた。原作と変わらないクオリティの役者さんたち。特に絶対的エースの牛島若利。当時私は彼が好きだったので尚更思ったのだが。
完 璧 や ん ・ ・ ・ !!
ビジュアル完璧やん・・・!!え?ええ?ほかの役者さん・・・ええ!?次元超えてきましたか!?これが2.5次元てやつなのか!?
しかも自分が住んでいる都市でその劇が開催されるという。
これは・・・!行くしか・・・!けど一人で参加とか。。ぼっちはやだな。しかもチケット、サイドシート?なにそれ?補助席的な?それしかないのか。うーんどうしよう。
などと迷っている間に、公演日当日を迎えてしまい、ナマの舞台を見る機会を逃してしまった。
これが、最後の公演とも知らずに。
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