MPA(行政学修士)という選択肢
過去ポストに書いたように、私は今オンライン大学院に通っている。大学院で勉強しているのはMPAというものだ。え、MBAじゃなくて?と多く質問されるが、そうMBAとは似て非なるものだ。
MPAはMaster of Public Administrationの略で、日本語では行政学修士や公共経営修士と訳される(ちなみに、現外務大臣の上川氏もMPAホルダー)。日本では専門職学位と括られることが多い。MBAとの違いはというと、MBAは民間ビジネスセクターを主たる対象として経営資源(ヒト・モノ・金・情報)の活用方法や戦略を学ぶ一方、MPAは主に公共セクターを対象に組織をどのように経営(運営)するか、政策効果をどのように把握するかを学ぶ。当然現代社会においてはビジネスセクターでも社会問題を扱うし、公共政策も公共機関だけで担われているわけではない。しかしながら、MPAはより行政やNGOといった機関に着目している点でMBAとは異なる。ケーススタディも授業の中で扱うが、テーマはやはり非営利団体の例が多い。
具体的な学問のディシプリンでいえば、経営学・政治学・経済学・社会学といった社会科学の学問知見を分野横断的に扱うことが多い。そういう意味で、特定の学問を究めたいという人には不向きでないかと思われる。むしろ「公共」に関する事柄に幅広く関心があり、さらに社会問題に行政やNGOの立場から携わりたいという人には一考の価値がある。また、海外のMPA大学院は、将来的に国際機関で働きたい人にも向いていると思う。
しかし、ここで注意すべきことがあって、それはMPAの大学院の少なくない割合で、入学条件として実務経験が求められることである。ビジネスマンがMBAをキャリアップのために取得するのと同じく、MPAも多くの場合、中堅の行政官もしくはNGOスタッフのためのキャリアアップの一つと位置付けられている。実際に、毎週の授業の中の課題では「自身の経験や専門を生かし、○○(公共の課題)について論じよ」という問いが多い。これは公共セクターの経験が全くない場合、回答するのはあまり容易ではないだろう(そして授業から得るものは少ないかもしれない)。
MPAはMBAと比べるとかなりマイナーだし、今後もメジャーになることはないと思う(実は、私自身もあまりメジャーになってほしくないと思っている笑)。ただ、現代では民間企業が社会課題に取り組むのはもはや当然であるし、その社会課題は解決されるどころか、どんどん複雑性が増している。そんな中においては、MPAもキャリアアップや自己研鑽の一つとしてもう少しだけ注目されてもよいのかもしれない。