「何もしない」をする:気づきが心を変える
私たちはとにかく忙しい人生を送っています。
社会人となった今振り返ると、学生時代は比較的のんびりとしていた良い思い出になっていますが、当時の感覚では勉強、部活、バイトに、とにかく忙しい思いをしていました。
要は、私たちはいつも忙しいんですね。
多忙な私たちが時間を作って、座禅なり瞑想なりマインドフルネスなり、「何もしない」をすることなんてできやしません。それも毎日なんて。とても無理な話です。
しかし、だからこそ瞑想なのです。忙しいからこそ「何もしない」をすることがより充実した生き方をするうえで必要なのです!
この記事では、「何もしないことをする」を通じて得た気づきを共有したいと思います。
<目次>
1.私たちは忙しいが、心まで忙しくする必要はない
2.「何もしない」をする
3.外から見ればただ座ってるだけだが、心の中は飛び跳ねている
4.気づきが私たちの心を変える
5.まとめ
1.わたし達は忙しいが、心まで忙しくする必要はない
よく言われることですが、「忙しい」の「忙」という字は「心を亡くす」と書きます。もともとは「心が今ここにない状態」を指しています。
一方で、用事が立て込んでいる状態、スケジュールが詰まっている状態でも忙しいという言葉を使います(例えば「仕事が忙しい」)。
ここで注意したいのが、必ずしも「仕事が忙しい=心が今ここにない状態」というわけではないということです。これらは別のことです。
仕事が忙しいからといって、心が今ここにない状態になる必要はないのです。同じように、スケジュールがぎっしり詰まっているからといって、心が今ここにない状態になる必要もないのです。
もう少しつけ加えると、「仕事が忙しい」は客観的な状況を指し、「心がここにないという意味の忙しい」はわたし達の内面、主観的状況を指しています。主観はとらえ方です。
だから、仕事が忙しいという客観的状況に対して、必ずしも心が今ここにない状態になる必要はないのです。
2.「何もしない」をする
さて、とはいっても「仕事が忙しい→心も落ち着かない」というメカニズムにわたし達は慣れきっています。熱いものに触れたらぱっと手を離すように、「用事が立て込むと、その瞬間から心が落ち着かない」状態になります。一呼吸置く暇もありません。ほとんど反射です。
この反射から離れるためには、逆説的ですが「何もしない」をするのが有効です。
ただ姿勢良く座って呼吸に意識を集中します。これだけです。
3.外から見ればただ座ってるだけだが、心の中は飛び跳ねている
姿勢良く座って呼吸に意識を集中しているだけなので、外から見るとただ座っているだけのように見えます。
でも、心の中はそうはいきません。呼吸に集中しようとしても、実に様々な考えやイメージが沸き起こっては、去っていきます。時にはずっとメロディーが頭から離れないこともあります。
また、集中できたと思っても、数秒後には他の雑念が沸き起こります。エゴが出てきたかと思えば、執着心が出てきます。そして気がつけば執着心に囚われていることもしばしばです。
4.気づきが私たちの心を変える
このように、ただ座っていても心はじっとしていないのですから、ただ座ることは心の落ち着きをとりもどすためには意味がないと思われるかもしれません。
しかし、「心がじっとしていない」という気づきこそが心に落ち着きを与えてくれるのです。
心が静まらない。雑念が去来している。どんどん考えが浮かんできては消えていく。
あの時こう言えばよかったと思ってるんだなあ。
少し寒いな。・・・と感じたな。
上記のように、自分の心が何をしているのかを言語化していく作業は、自分の心を客観視しているのと同じです。ここがポイントです。
心は主観です。その心の動きを言葉にしていく作業は、心を客観視することです。つまり、自分を客観視しているということです。
心に囚われてしまうと、考え始めてしまいます。考えるのではなく、「今自分は考えているな」という気づきへ変換します。
同じように、忙しくても、「今自分は忙しいと感じているな」と気づきへ変換できれば、そこに余裕が生まれます。
このように、「何もしない」をするとは気づきの訓練なのです。
この訓練を継続するとどうなるか。
マインドフルネスの権威であるジョン・ガバットジン氏によると、毎日45分間 × 8週間(56日)継続すると、格段に気づきの力が高まるそうです。中には、ひどい足の痛みで杖をついていた人が杖なしで歩けるようになったなどの回復事例もあるようです。
私の経験から言うと、高まるのは気づきの力だけではありません。心の声を聞いていると自分について多くの学びがあります。私の場合、過去の自分の行動がパッと頭に浮かんだ瞬間に、あれはエゴだった!と気づくことが多くあります。
5.まとめ
瞑想は確実に私たちの在り方を変えます。私たちの在り方が変われば、世界の見え方も変わります。
言い方を変えれば、私たちの在り方が変われば、世界は変わるのです。
・瞑想は良い姿勢で座って呼吸に集中するだけ
・去来する雑念を言葉にして見守る(=心を客観視)
・気づきが私たちの心の反応メカニズムを変える(=自動反応解除)
この記事が皆さんのお役に立てばうれしいです。
いただいたサポートは、よりみなさんの役に立つ記事を執筆するための研究費用(書籍購入、ワークショップ開催・参加、フィールドワークなど)として使わせていただきます。