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散りばめられた小花

「愛してる」


ダリアの大輪が咲くように
色あざやかに眩しいほどの笑顔で
あなたに真っすぐ届けられる

女じゃない


だから
精一杯に小さな小さな花を
たくさん咲かせることを
覚えたの


わたしにでもできる想いの届け方


「好き」って想いを小さく花開かせては
想い咲いたばかりの柔らかい花びらを
潰さぬように
花軸の部分から
もぎり取る


首だけになった小さな小さな想いを
そっと散りばめる

あなたの足元だったり
扉を開けた先の地面だったり
さりげなく通り過ぎる道だったり
いつも座る椅子の肘掛けの上だったり


気づいてもらわなくて良いの


わたしがあなたのために咲かせた花たちを
あなたの近くに届かせることができただけ
あなたの周りに散りばめられただけ

それだけで
想いは報われている


ゴミと間違われて払われたり
足元気づかずに踏みつけられたり
あなたの目に入ることなく
風で舞い散ってしまったり

それでも良いの


あなたの周りに散りばめられただけ
わたしは満足


ある日
そんな小花に
気づいてくれたあなたが居た


舞い散った首だけの小花を
踏みつけられて潰れかけている小花を

そっと拾い上げては
ジャケットのポケットに
大切にしまってくれた


花軸からもぎり取られた小花たちが
たくさん集められて
小さな花束みたいになって

いつものわたしの日常に突然現れた


通り過ぎようとした道の端だったり
風で飛んでいってしまいそうな
窓際の桟の部分だったり
毎日眠る枕元だったり


驚いたの


それって、わたしだから
気づくことができたのよ


また小さな小さな花が咲く


もう現実にはいなくなったあなたと
そんなやり取りばかりして
時だけが過ぎていった


今日はあなたの大切な日ね
待ち遠しい日でもあったはず


「キミヲ ササエラレルヨウニ ナリタイ」


そう言ってもらえた日を思い出しながら
あなたが集めてくれた小花たちを
全部掬いあげて

ミルクも砂糖も入っていないコーヒーと一緒に
口に含んだ


あなたからの最後の小花は


「キミニ  ホウコクニイキタイ」


だったけれど
あきらめてくれるかしら

全てを苦味と一緒に飲み込んで
もう胸の中におさめたから


全てのSNSから
あなたを削除する


あなたの心のどこか片隅で
小さく咲くことができているのなら

それだけで満足



今は違う色の小花が
たくさんたくさん咲き始めているの

また花軸からもぎり取っては
あなたの周りに散りばめる

あなたは全く気づかないけれど
それでもいつも笑ってくれるから



それだけで満足なのよ





「散りばめられた小花」


~END



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恋し続けるために顔晴ることの一つがnote。誰しも恋が出来なくなることなんてないのだから。恋しようとしなくなることがわたしにとっての最大の恐怖。いつも 支えていただき、ありがとうございます♪