物語は現実を越えるか
「大変申し上げにくいのですが、あなたの余命はあと3000文字きっかりです」(村崎羯諦「余命3000文字」)
物語冒頭で、「俺」はどうしようもない不条理を突きつけられます。その様は『変身』の主人公グレゴール・ザムザを彷彿とさせます。
それから医師の助言通り、自分の寿命を縮めないよう当たり障りのない毎日を過ごすようになります。
そのような生活をしてから5年が経ち、35回目の誕生日を迎えた日、「俺」はアパート火災の現場に遭遇します。しかも中には子どもが取り残されているという状況です。果たして主人公がとった行動とは。
結末は実際に読んでいただくとして、僕が一際目を惹かれたのは、本編が終わったあとの一文です。
物語に没入していたところで急に現実に引き戻されたような気分になりました。
これは単なるフィクションではなく、現実と地続きになっているのではないか。
自分が同じ立場だったら?
家族や友人が同じ状況下にあったらどうするか。
物語にはそれを想起させる力があると改めて思いました。
次回は本作に収録されている「私は漢字が書けない」について取り上げます。
見出し画像はこちらから引用しました↓
「余命3000文字」|現代小説|文学・小説|書籍|小学館 (tameshiyo.me)
余命3000文字 | 小学館 (shogakukan.co.jp)
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