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デンマークの小学校を1週間観察して #学校編

先日、デンマークの首都コペンハーゲン近郊のモンテッソーリスクールに1週間観察に行ってきました!
観察レポートを、学校編とデンマーク社会編の二つに分けてシェアしていきたいと思います。

今回観察させていただいたInternational Montessori School Copenhagenは昨年の8月に開校したばかりの新しい学校です。
International Schoolのため、デンマーク以外の出身の子どもたちがほとんどです。共通言語は英語で、6歳から13歳の子どもたちが共に学んでいました。

▼デンマークを観察先に選んだ理由

オランダの学校を観察している中で、
「もっと様々な学校を見てみたい、国の文化背景で学校の雰囲気も変わるのだろうか」
という興味がありました。
せっかくヨーロッパにいるなら、足を運んでこの目で確かめてみよう!

そんな想いに突き動かされ、最初に思いついたのが北欧です。
(大学在学時から比較教育学や国際教育について学んでいる中で、北欧の教育に以前からとても関心がありました。)
*下記の動画は、大学生の時に見た『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』という映画に出てくるフィンランドの教育を切り抜いた部分です。この動画を見て、いつか行ってみたい!と考えていました。


北欧といえば、世界幸福度ランキングの上位国です。
2022年の最新ランキングでは、
ランキングトップが5年連続のフィンランドであり、2位がデンマークです。

World Happiness Report/worldhappiness.report
(注)この調査のスコアは、一人当たりGDP、健康寿命、社会的支援、人生の自由度、他者への寛容さ、国への信頼度の6項目について調査した結果を順位付けしたもの。2022年公表の本ランキングは2019〜2021年の平均スコア。

2020年にUNICEFが発表した子どもの幸福度においても、デンマークはオランダに続く2位となっています。

そんな幸福度が高いと言われているデンマークに観察対象のモンテッソーリスクールがあったので、アポイントをとりデンマークまで観察に行ってきました。

▼International Montessori School Copenhagenについて

昨年8月に開校したばかりのこの学校には、
Elementaryのクラスと、2歳半-5歳児を対象としたPreschoolがあります。
観察したElementaryクラスは、6歳から13歳までの18人の子どもが共に過ごすミックスクラスです。

この学校の特色は大きく3つありました。

①世界中から集まる子どもたち

インターナショナルスクールのため、ほとんどの生徒がデンマーク以外の出身です。
観察初日のサークルタイムで自己紹介タイムになり、日本から来たことを伝えると、
一人の子どもが、「みんな違う国だね!」
と言い、子どもたちの出身国の紹介が始まりました。
イタリア、ルーマニア、ブルガリア、リビア、ウクライナ、中国、インド、アメリカ、メキシコ、、、
世界中から集まった子どもたちは、母国語ではコミュニケーションが取れないため、英語が共通言語です。
母国が異なる子どもたちは、ワーク中に、これはあなたの国の言語では何ていうの?、漢字でどうやって書くの?と多様性に溢れた会話が繰り広げられているのがとても印象的でした。

②モンテッソーリ環境で育っていない子どもたち

18人の子どもの中で、幼稚園からモンテッソーリの環境で育ったのはたった3人。
ほとんどの子どもは、この学校に来て初めてモンテッソーリの環境で生活しています。10歳で初めてモンテッソーリの教具を使って学びはじめた子どもたちにとっては、今までの学びの環境とは大きく異なっていることを意味します。

③発達に個性のある子どもたち

クラスの子どもたちの中には、医療機関で発達障害の診断をされている子どもや、発達が気になる子ども、共通語の英語を十分に理解できていない子どもなど、出身国や年齢など目に見える多様性だけでなく、とても個性豊かなメンバーが集まっています。
彼らは開校してから約半年、互いの個性を尊重し合いながら共に生活をしています。

▼観察を通して考えたこと

①子どもの意思を持って選択することの重要性

人は1日に35,000回決断をしていると言われるほど、選択の連続です。
選択肢に直面するのは、大人だけでなく子どもも同様です。
けれども、子どもが選択する前に大人が選択肢を決め、子どもの選択の機会を奪ってしまうと、自分で選択する意思がだんだんと薄れ、些細なことでも親や誰かの指示を仰ぐようになっていきます。

このことを顕著に感じたのが、
・1日のワークプランを考えている子どもの姿
・活動に取り組む子どもの姿

です。

多くの教育システムの中では時間割で授業が決められていると思います。
私も大学で履修を組むまで、自分で1日の授業を組み立てることなんてしたことありませんでした。
観察した学校の子どもたちも半年前までは自分で1日を組み立てる経験をしたことがありません。

だから、何をしたいかも、どうやって計画立てていいかもわからない。

クラスのメインガイドの先生は、子どもたちの主体性を育むステップとして、
1週間ごとに各分野の達成してほしい目標を子ども達に紙で渡し、その紙を参考に子どもたちは1日のワークプランを考えていました。
しかし、クラスのある子には到達目標の紙を渡していませんでした。
気になってメインガイドの先生に話を聞いてみると

「多くの子どもたちが自分の意思で選択するところまで達していないため、紙を配ってその中から自分で組み立てることを大切にしているけど、
ある子どもにとっては、与えられたものを学ぶよりも、自分で選択して学ぶ方が意欲を持って学ぶことができる。そういう子たちにはわざと渡していない」と話していました。

1週間観察していると、
その子は毎日自分の中に「今日やりたいこと」があり、一人で集中して活動に取り組んでいます。
一つ達成すると、先生のところに行き、
「みんなに発表してもいいか?」
と質問する子どもの姿は、いつも満足感のある笑顔で溢れていました。

一方で、1週間の到達目標をもらっている子どもたちにとっても、1日の活動を組み立てることが求められています。
彼らも一人ひとりその日の気分や興味関心が異なります。
自分の意思で決めて取り組む時、さらにその活動に「楽しさ」を見出した時の子どもたちの集中力は、やらされているという気持ちでやっている時とは大きく異なります。

自分にとって納得いく自己決定こそが、幸せに生きる基盤なのだと改めて感じられました。

②違いが学びを創る

年齢も性別も文化背景も性格もそれぞれの異なる18人。
対人関係の中で毎日何か問題が起こります。

誰かに言われた言葉が傷ついた。
態度が気に食わなかった。
誰かのせいで活動に集中できない。

何か言い争いが起こると、必ず当事者が向き合って話し合いが行われます。
その場には、先生は二人の間にいるけれども、先生が解決することはなく子どもたちが中心に繰り広げられる対話。
「誰かの正義は、他の誰かの悪になるかもしれない」
と言われるように、人の数だけ多様な価値観があります。
だからこそ、言い争いや喧嘩を否定するのではなく、
問題が起こった理由に目を向け、相手の価値観の違いを理解する。
そこから、自分ー他者ー環境を傷つけない関わり方を模索していく。
この対話にこそ、生きた学びがあるのではないかと感じました。

▼まとめ

1週間の観察で学んだことはたくさんありますが、
1週間の学びを一言でまとめると、モンテッソーリ教育のキーワードの一つにもある「自由と責任(Freedom and Responsibility)」です。

自由とは、自由にさせる側が放任することでも、自由にする側がわがままになることでもありません。
自らの考えによって、自ら選択すること(自由に選択すること)には必ず責任が伴っています。

そして、この真の自由を理解し、獲得していく過程には
・自分を理解すること
・自分が生きている社会を理解すること
・自分以外の他者との違いや共通点を理解すること
がとても重要です。

大人が子どもを一人の個人として尊重し、
これらを獲得していける環境を整えていくことができるか、
考えさせられる、良い学びとなりました。

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