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「鵼の碑」感想(ネタバレ有)

京極夏彦「鵼の碑」、ようやく読み終わりましたので
さらっと感想などを。
【ネタバレ注意!!】


実に17年ぶりの百鬼夜行シリーズ。
いつものごとく、分厚いながらも読みやすい構成で
割とさくさく読み進めることができました。

今回ちょっといつもと雰囲気違うなと思ったのは
凄惨な事件があんまり起きないんですよね。
人死にもほとんど無し。
過去には起きてるんですが、死者の謎を追う話がメインで
追っている内に新たな犠牲者が―――
みたいな展開にはならなかった。

謎に関しては割と予想通りではあったのですが
もっと闇を感じる真相でもよかったのになーと思いました。
石はともかく生物が光るとなったらもうそれしか無いでしょうからねえ。

今回のテーマは原子力絡みということで、
発刊が遅れた理由の一つともいわれてますが(噂なので真偽不明)、
当時の原子力界隈の事情などが知れてなかなか興味深かったです。
舞台である日光ととある人物を絡めて来た辺りは唸りました。

前作の邪魅のときも思ったのですが、
妖怪に関する京極堂の解説が簡潔に済まされちゃってるのは
個人的に残念な部分でしたね。
もっと一章くらい使って長々と妖怪蘊蓄が聞きたかったところです。

もう一つ残念なのはやはりメインどころの出番の偏り。
敦子はスピンオフで主役張ってるらしいので(未読)
出番無しはしょうがないとして、
榎さんも今回殆ど何もしませんでしたね。
まああの人は出てくると謎が解決してしまうから
扱いにくいのは分かるのですが、
何となく無理くり出番を作ったような感じにも
見受けられました。

ただこの辺りは悩ましいところでもあって、
ある程度メインキャラも絞った方がストーリーがまとまって
読みやすくなるというのはあるんですよね。
京極堂・関口・木場・榎木津の4人は出てこないと困りますが
後の仲間は無理に全員出さなくても問題ない。
というかメインどころを削るくらいなら
余り脇に出張って欲しくない。
今回はそういう意味ではかなりキャラも絞られて
読みやすい構成ではあったと思います。

光る猿や碑の謎はモチーフとしては面白かったのですが
ラストの結論はやや肩透かし感があったかなーと。
まあ京極作品は謎解きとして見てしまうと
そこまで難解ではないのは毎度のことなのでしょうが。

新キャラの緑川さんは今後の作品にも出てきそうですね。
次回作『幽谷響(やまびこ)の家』にも期待です。

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