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『Windfall』 : 棚ぼたのお金
一見平和そうな生活に、いきなり暴力的な横槍が入ったら。映画『本作は邦題で『運命のイタズラ』(原題は『Windfall』=棚ぼた式に入ったお金)は、裕福なカップルの所有する別荘で起きる事件、そこで繰り広がる心理描写を見事に描いている。
庭にプール、サウナ、コッテージ、屋内には映画室まである豪奢な別荘の雄大なシーンから映画は始まる。周りは大自然で、人の影は見えない。
そこに現れた一人の男。庭に続く広大なオレンジ畑をを見下ろしながらゆっくりとくつろぐこの男は、実は侵入者だ。
そこへ別荘のオーナーカップルがやってくる。若くして成功した億万長者のCEOと魅力的な妻。この二人が侵入者によって人質に取られるというストーリーなのだけれど、これがなかなかの心理スリラーになっていく。
この映画は2年前に観ていて今回はNetflixで見直したのだけれど、この一見幸せそうなカップルに潜む内側の抑圧した心理がよく描かれていることにもう一度感心した。
名もなき登場人物たちが繰り広げる人質事件だけれど、この映画は軽妙なユーモアに満ちている。別荘のオーナーである傲慢な億万長者が、失業者・フリーターであるだろうこの侵入者のことを、社会の中の「ノーバディ 」、つまり何の重要性もないゴミのような存在呼ばわりするだけでなく、映画の最後のクレジットでも「ノーバディ 」とされているのを見れば、ただの軽快な映画ではなく、物事がダークに展開していくことがわかるだろう。
邦題は、『運命のイタズラ』。息を飲むほど広くて眩しい豪邸に住むCEOの夫とその妻が、強盗に入っていた男と時間を過ごし、思いがけぬ結末を迎えるのが運命の悪戯だという設定だ。
美しい別荘を舞台にしながらも、フィルム・ノワール(暗黒映画)の雰囲気が登場人物たちの不穏さを表しているようで、静かな世界観の中に流れる違和感が面白い。
だだっ広い豪邸の中で、成金主義者の男と、自分を解き放てない弱い立場の女性、そして失業した労働者階級の男という現在の社会情勢を表している。
会話の運び方でストーリーが進んでいく過程も素晴らしいし、3人の会話によって展開が予想外に進み、悲劇をもたらし、キャラクターの本性や欠点があらわになるところが見どころ。ぜひおすすめだ。
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