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子どもや先生と対等な関係を築きながら、地域に根ざした活動で誰も取り残さない教育を|大阪府 公立中学校 校長 大泉志保さん

こんにちは。大阪府の公立中学校で校長をしている大泉志保です。

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私が教員を志したのは、権力を持った先生の姿に違和感を持ったことがスタートでした。

管理職になった現在もその違和感を忘れずに、「管理より感化」を心がけたコミュニケーションで、先生や子どもたちと対等な関係を築きながら学校の環境をつくることに取り組んでいます。校長室をオープンにし、子どもや先生といつでも話ができるようにするなどさまざまな工夫をしています。

また、公立学校の職員であることへの自負もあり、地域に根差した教育で誰も取り残さないことを意識して携わってきました。

「教育は国の基本」という父の言葉と、学校への違和感を抱え教員生活がスタート

私が教員を志したのは、学校の先生に違和感を持ったところがスタートでした。私自身が学生の頃は体罰がまかり通っており、力で生徒を従わせるような文化がありました。先生が権力を持っていることに対してずっと心に引っかかりがありました。教員になってからは、そういった文化にすぐに馴染んでいく同僚も多くいる中で、大学を出たばかりの自分が「先生」と呼ばれることさえも、受け止めることが難しかったのを覚えています。

違和感の背景をたどると、父の存在が大きかったように思います。父から「教育は国の基本だ」と、ずっと聞かされていたので、子どもの頃から大事な仕事であることは認識していました。しかし、私がこれまで目の当たりにしてきた大人が権力を持つ学校文化が、「国の基本」として土台になってしまったら、それは怖いことだと感じました。

初任から管理職となった今でも、その違和感を忘れることなく、子どもや先生たちに接しています。上からものを言うのではなく、対等な関係を築きながら自分の思いを伝えていくことを大事にしています。

管理職になっても子どもや先生一人ひとりのことを思い浮かべる時間が楽しい

対等な関係づくりの工夫として、職員室だよりで、エッセイ風に自分の思いなどを書いて伝えています。その日に私が気づいた先生のキラっとした出来事や、先生が気付いていないかもしれない子どもの様子などを観察して書いています。

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このようなエピソードは、1日を振り返る時間の中で文章になっていくのですが、担任として学級通信を書いていた頃と同じで、管理職になっても一人ひとりを思い浮かべる時間が1番楽しいんです。

校長室もオープンにして誰でも入ってこられるように大改造しました。最初はやんちゃな子どもが1〜2人、休憩をしに入ってくるところから始まりました。校長室はいつでものぞける状態なので、私がどういう対応をするか先生も見ることができます。その様子を見て、だんだんと子どもたちにこんな対応をすればいいのだなということが伝わります。そんな風に1年かけて誰もが気軽に尋ねてくれるような空間をつくっていきました。

「管理よりも感化」を大事に先生たちとコミュニケーション

その他にも掲示物や先生への評価についても工夫しています。学校の教育目標は代々変わっていませんが、ただ掲示しているだけだと形骸化し、なかなか自分たちのものになりません。

ですので、今年は美術の先生にお願いしてピクトグラム(情報を伝えるための絵の記号)を使って教育目標の掲示物を作ってもらいました。自分一人でやってしまったり、校長から命令する形ではなく、得意な先生に相談したり頼ったりすることで、自分ごとにしてもらえるような機会をつくっています。

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声のかけ方にも工夫をしています。例えば「教務の○○先生」など、あえて役割を認識できるように呼んでいます。自分はどのようなことで必要とされているのかを実感してもらったり、適材適所で先生方のいいところを発揮してもらえるような声がけとして行っています。

先生との評価面談においてもかっちりしたものはやっていません。普段の会話で同僚として話を聞きます。私自身、構えずに話してもらえると嬉しいので、こちらもオープンな姿勢を心がけています。職員室も会話の多い空間になっていると思います。

これらは、「管理よりも感化」を大事にすることでつくってきた環境です。私自身が行動することで大切にしていることをじわじわと伝えていき、先生たちを感化していけたらいいなと考えています。

学校現場での時間を大事に、私らしいやり方で変えていく

小さな工夫をコツコツと積み重ねながら泥くさく変えていくことに注力していますが、早く大きく変革することは私自身、苦手で力もないと自覚しています。

管理職になってからいろんな校長先生と話をする中で、自分とは違うアプローチをされている方に憧れることもありましたが、自分にしかできないやり方を模索して取り組んでいます。

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あるとき、全国的にも著名な校長先生と意気投合したことがありました。その先生を通して、学校での取り組みをテレビで取り上げたいというお話をいただいたのですが、各方面との調整が必要ですぐにお返事ができませんでした。

メディアに出るということは、調整にとても時間がかかります。それができるかできないかが、著名な先生と私の違いだと実感した一方、そのようなことで学校を離れる時間が長くなってしまうことは嫌だったので、私のやり方で目の前の現場を変えていくことを選びました。

地域とともに、子どもたちの教育に携わりたい

また、公立学校の教職員であるという自負も大切に持ち続けています。子どもたちの中には、高いお金を払って私立に通えない子もたくさんいるので、最後の1人であっても地元の公立学校で子どもを受け入れたいという思いで、地域とともに教育に携わっています。

現在、校区に住んでいることもあり、学校を出てからも地域に勤務校の子どもたちがたくさんいる環境です。地域と共にやっているという実感は常に感じています。

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誰一人取り残すことのない学びの実現のために導入されたはずのGIGAスクール構想で、乗り遅れた家庭や子どもがいることが忘れ去られてしまうようでは本末転倒なので、時代がどんな風に変わっていくにしても公立の良さを残すことに尽力したいです。

声をあげた経験を職場に返せるようなプラットフォームに

声を上げたら聞いてくれる人がいて、その声をあげる経験を自分の職場に返してという好循環が生まれるといいなと思います。

政治的な意図を持たずに、一人ひとりの声が大切にされる経験を先生方ができる場になってほしいです。

そして、学校が「もっとこうなったらいいな」という思いがある先生には、将来的に学校運営に携わることも視野に入れてもらえたら嬉しいです。現場のことを知っている先生が、自分ごととして課題に取り組む力を発揮してほしいと思っています。


プロフィール 大泉志保(おおいずみしほ)
大阪教育大学在学中4年間はアメリカンフットボールに明け暮れ、大学卒業後、大阪府公立中学校の教員になる。2009年働きながら大阪教育大学大学院に入学。それをきっかけに、教師にとって時間と空間を広げることがいかに大切であるかを知り、若い先生方にもどんどん外へ出ることをすすめるようになる。現在公立中学校の校長。座右の銘は一点突破全面展開。20年以上毎年数回フルマラソンを走っている。


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(取材・文:高野雅子 編集:建石尚子)

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