
自分の「楽しい!」を大事に、人とつながる。人をつなげる。|埼玉県 公立高校 教諭 逸見峻介さん
こんにちは。埼玉県の公立高校で教員として働いている逸見峻介です。

私は、大学院卒業後、地理歴史科の教員として働き、今年で9年目になります。本業の傍ら、ワークショップデザイナーとして活動していて、さまざまな人をつなぎ、教育について対話する場をつくっています。
社会科教員だからこそ、社会とつながり、いろんな人と関わりたい
対話しながら学ぶことが大切だと思っています。教員を目指していた大学時代に、たまたま友人が「読書会をやろう」と声をかけてくれて、それからみんなで古典を読むようになりました。
みんなで読むと自分だけでは発見できない視点を得られ、学びがどんどん深まっていきました。1人ではなく、人と関わりながら学ぶことで、対話の面白さを実感した出来事でした。
自分の専門教科が社会科だということもあり、民間企業などのことをあまり深く知らないまま教員になるのはどうかと思って、いったん就職することも視野に入れましたが、その企業に対して腰掛的に所属することに納得がいかず、まっすぐ教員になることに決めました。
ただ、教員だけをやっているとどうしても視野が狭くなってしまうので、今でも意識的に学校外の人と交流しています。教員になってからでも、学ぼうと思えばなんでも学ぶことができるので。自分がやっていることが世間の感覚とずれていないかを確かめることができますし、何よりいろんな人と関わりながら学んでいくことに楽しさを感じています。ここ数年は発信にも力を入れています。発信することで学びもどんどん深くなってきました。

人とつながる、人と人をつなぐおもしろさ
教員の仕事の傍ら、教育をもっとオープンにしていきたい!という目的で、ライフワークとして「Open Education」というプロジェクトを主催しています。自分にとって大事な人や、活動の理念に共感できる人をゲストに呼んで、参加者とともに教育について対話する場をつくっています。
学びの場で出会ったさまざまな職業の人たちを巻き込みながら、企画・運営を一緒にやっています。
企画ごとに、さまざまな人とコラボレーションをしているので、とても勉強になります。自分が自由にやりたいことに挑戦できるので、最高におもしろいし、やっていてとても充実感があります。

例えば、ゲストに小学校の先生を招いたときには、キャリア教育の一環として「小学校の先生に興味がある」と言っていた勤務校の生徒や教え子たちにも声をかけました。自分にとって大切なゲストと関わった生徒たちが教育について対話をしていました。そんな場を提供することができて、とても幸せでした。
さまざまな人の懸け橋となり、人と人をつなぐことが私自身とても楽しいんです。どんどん輪が広がっていくのが、とてもモチベーションアップになっています。楽しくなければ、絶対にやっていません(笑)
たくさん影響を与えてくれた先生との出会い
初任校では、とても素敵な学年主任の先生に出会うことができました。例えば、学校行事の臨海学校の出来事なのですが、体育の先生が真剣に生徒を指導している場面で、その先生はすっと立ち上がり、生徒の後ろや横を歩いて、声をかけていました。体育の先生の指導をサポートしていたんですよね。
後ほど話をしてくれましたが、「誰かが本気になっているとき、“私も本気だよ”というメッセージを送ることができるのがチーム。教員はチームだからね」と教えてもらったことが、とても印象的でした。
その先生は、周りを引っ張っていく力がある先生で、みんなから一目置かれる存在でした。「放課後に外部の人を呼んでキャリアの話をしてもらう会を一緒に担当してみないか」と提案してもらったときは、チャレンジの機会をもらえたことがとてもうれしかったです。自分の得意分野を活かして、さまざまなチャレンジをすることができました。
さまざまな方をゲストとしてお呼びしましたが、ウクレレのプロ奏者になった卒業生を呼んだときは、その先生の発案で最後に教員だけに向けて特別ライブをやってもらいました。感動的な雰囲気に包まれたことを今でも覚えています。一緒に企画をすることで多くのことを学ぶことができました。
そんな素敵な先生に初任校で巡り合えて、一緒に仕事ができた私は幸せ者だったと思います。「やりたいことをやってもいいんだ」と思うきっかけにもなりました。周りに認められながら、やりたいことをかたちにしている先生がロールモデルとしていたことで、教員としての幅が広がったと思いますし、今でもさまざまな活動の原動力になっています。
違和感があることは、声に出して、変えていこう
今年度から新しい学校に異動しました。うまくいかないことも多いですが、これまでの経験を活かして、校内の組織改編などにも取り組んでいます。
先生方に「どう思いますか」などと聞いてアンケートを取り、より良い組織体制を目指して試行錯誤しています。さまざまな人の声を聞き、きちんと段取りをとってアクションしていけば、割と物事ってより良いものになっていくと感じています。
「教員のそれぞれが思っていることをかたちにしていいんだ」、「みんなで変えることができるんだ」という実感が、学校や社会全体に広がっていくといいなと思います。
教員も生徒も、自分の思いを声にして、気軽に語り合える社会に
素晴らしい意見を持っているのに、表立って声にするのを躊躇している教員が結構いるのではないかと感じています。職業柄、謙虚な方も多いのでもちろんそれぞれのパーソナリティによると思いますが、発信していった方が私は良いと思います。すごい人たちは本当にたくさんいるので。「本当はこう言いたい」という人に「それ言って大丈夫だと思いますよ」と思うことも多くあります。なかなか難しいかもしれませんが、それぞれの課題意識を少しずつでも発信していくことで、もっと学校もよくなると思います。
このSchool Voice Projectは、もう少し教員がのびのび活動できたり、呼吸がしやすくなったりするきっかけになると期待しています。私の問題意識ともぴったり合っているし、なかなか意見を発信できていない教員にもスポットライトが当たるので、「このプラットフォームが教育現場の未来に必要だ!」と感じました。ここから新しい風が生まれると思います。
今年11月からは、School Voice Projectのアンバサダー(プロジェクトに賛同・参画している教職員メンバー)として、集まったアンケートのテーマをもとに気軽におしゃべりする会「フキダシカフェ」をスタートさせました。とても楽しく運営をさせてもらっています。今後は、教育に携わる仲間と学校教育について気軽におしゃべりができるフキダシカフェのようなものが、さまざまな場所で当たり前に生まれていくといいなと思います。
最近の教育現場では、忙しさのあまり、先生同士が語り合う時間があまりないと感じます。先生たちが、たわいもない話や青臭い話を自由に語り合える時間がどんどん増えていってほしいです。

プロフィール 逸見峻介(へんみ しゅんすけ)
高校地歴科教員・ワークショップデザイナー・教員のパラレルキャリア推進者。「人間っていいな!面白いな!」と思える人を増やすことを目指し、日々必死に生きている。教育をもっとオープンにするために、ライフワークとして対話の場「Open Education」を主催、学校内外で様々な人とコラボを行っている。現在は「教員の魅力発信」と「高校生・学生向けのマネーリテラシー」に関する情報を発信している。
▼ 活動目的・ポートフォリオ
▼「何のために」パラレルキャリアを行うのか?
▼ 「Open Education」ページ
▼ 高校生・学生向けのマネーリテラシーtwitterアカウント
今年9月には、逸見さんが主催するイベント「Open Education」で、School Voice Project 代表の武田緑をゲストにお呼びいただきました!
WEBアンケートサイト「フキダシ」は、現在ユーザー登録を受け付けています。教員の方だけではなく、事務職員や用務員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、ICT支援員の方など、学校現場で働くさまざまな立場・職種の方が対象です。ぜひご登録ください。
↓ ユーザー登録はこちら ↓
(文:糸田麻希子 編集:建石尚子)