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旅について

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#ドイツ

最後の1コマ

現在は専ら白黒フィルムを用いて写真を撮影している私ですが、約15年前に写真を撮り始めた頃はその殆どをカラーフィルムで撮影していました。当時一番のお気に入りだったのはPRO400Hというフィルム。もう何年も前に製造中止になってしまったフィルムですが、実はまだ手元に少し残っています。製造中止が決まった時にまとめ買いして大切に大切に使っていたのですが、最近期限が切れて1年経過したことに気づいたので、劣化してしまう前に使い切ってしまうことにしました。早速、先週のコーブルク(Cobur

Rolleiflexで夜を撮る

先週、バイエルン州北部フランケン地方にある小さな街、コーブルク(Coburg)へ行ってきました。小さいと言っても歴史ある街で、その名は11世紀に史料に登場します。16世紀から17世紀にかけてはザクセン=コーブルク侯国(Fürstentum  Sachsen-Coburg)がここに拠点を置きます。更に19世紀にはザクセン=ゴータと同君連合を組み、ザクセン・コーブルク=ゴータ公国(Herzogtums Sachsen-Coburg und Gotha)となります。そして、この公

Rolleiflex、故郷に帰る

ドイツという国に関しては疎くても、Rolleiの二眼レフを持っている方ならブラウンシュヴァイク(Braunschweig)という地名には聞き覚えがあるのではないでしょうか。1927年、この地でRolleiflexのプロトタイプが完成しました。私の手元にあるRolleiflex Original(1929年)の前面プレートには、Franke & Heidecke Braunschweigと誇らしげに刻まれています。 ある時、Rolleiの二眼レフの歴史について書かれた本を読み

Xenotar、Kreuznachへ行く

新たにLeicaを買うたびにその都度それをWetzlarへ持って行き、Rolleiflex Standardのレンズ・TessarをJenaに里帰りさせ、Rolleiflex 2.8F PlanarをBraunschweigのかつてのFranke & Heidecke社屋の前に立たせたように、Rolleiflex 2.8F XenotarをKreuznachに連れて行ったことがあります。今日はその件について書こうと思います。 クロイツナッハKreuznach、正しくはBad

Aschaffenburg

今年は9月以降もなかなか気温が下がらなかった中部ドイツ。しかし、先週末ひと雨降って最高気温が一気に10℃以上下りました。今週末からいよいよ秋らしく雨天が続く予報が出たため、一昨日の晴天が広がった日に日帰り旅行に出かけました。行き先はアシャッフェンブルク(Aschaffenburug)。バイエルン州に属する街です。 アシャッフェンブルクと言えば、ドイツ中部独特の薔薇色をした石で建てられた壮麗な城(Schloss Johannisburg)。内部は美術館になっています。実はこの

アンナのドレスデン

とても面白い本を読みました。『Dostojewski in Deutschland(ドイツのドストエフスキー)』(Karla Hielscher著)という本です。 正確に言うと最初から最後まで読み通したのではなく、今までに自分が訪れたことがある場所について書かれた章のみ読みました。すなわちヴィースバーデン、ホンブルク(現在のバート・ホンブルク)、そしてドレスデンです。このうちドストエフスキーが最も長く滞在したのがドレスデンで、その期間は延べにすると2年半に及ぶそうです。そし

Weimar

今日、ふとしたことで手にしたCandida Höferの写真集『Weimar』。彼女の写真集は何冊か持っていますが、各国の図書館の写真を集めた『Library』と並び、この『Weimar』は一番好きな写真集です。何度も見返しているので、既にカバーがヨレヨレ。 2件目の写真は、この写真集に収められている『Goethe-Nationalmuseum Weimar II』という写真です。この写真を見て私はどうしてもこの場所へ行きたくなり、何年か前にWeimarまで足を伸ばしたこと

Tessar、Jenaへ帰る

2016年の夏、夫の出張についてイェーナ(Jena)へ行くことになりました。 イェーナといえば、Carl Zeiss。私のRolleiflex Standard、テイクレンズの周縁にはくっきりとCarl Zeiss Jenaと刻印されています。約80年前に製造されたカメラとはいえ、この私のRolleiflex Standard、よく出来たカメラで、古いカメラにありがちなコマの重なりというトラブルもなく、どんなフィルムを使用したとしても、きちんと、しかもかなり均等にコマ間が出

Ulm

すでに約2年も前のことになりますが、2022年7月最後の週、ウルム(Ulm)というバーデン=ビュルテンベルク州にあるドナウ川沿いの中規模都市(日本の感覚からすると、小さな街)へ行きました。川を渡ればバイエルン州です。ここには教会建築の中では未だに世界で一番高いと言われれる塔を戴く大聖堂(Münster)があります。この「世界で一番高い」とは一体どのくらいの高さなのか、一度は自分の目で見てみたいと以前から思っていました。この頃はまだコロナウィルスの感染拡大傾向が安定しておらず、

Bad Ems

その生涯を閉じる前の約20年間、ドストエフスキーは断続的に何回もドイツを訪れています。一昨年とある本を読んで以来、私はその足跡を追うように毎夏ドストエフスキーが訪れた場所を旅するようになりました。最初はドレスデン(Dresden)、去年はヴィースバーデン(Wiesbaden)、そして今回はバート・エムス(Bad Ems)。 私とドストエフスキーとの付き合いは長く、最初に読んだのは大学進学を控えた高校最後の春休みでした。ドストエフスキーの小説は、その世界観を何某かの形で感受で

Tübingen

今日はチュービンゲン(Tübingen)の写真を投稿します。仕事がある夫をシュトゥットガルト(Stuttgart)に残し、10年前の夏、一人で出かけた街です。写真はで全てRolleiflex 2.8FとPRO400Hで撮影しました。 チュービンゲンには1477年に創設された古い大学があり、その昔、私の古い友人がこの大学に留学していました。 「チュービンゲンってどんなところ?」 「すごい田舎だよ。けっこう方言がきつくて、大変だった」 かつてそんな言葉を交わしたことを、シュトゥ

Maria Laach

Maria Laachってご存知ですか。 現在も活動を続けている修道院がある素晴らしいい自然に囲まれた場所です。そして、週末は買い物客で賑わう場所でもあります。修道院と自然豊かな場所が何故買い物客で賑わうのか疑問に思った方は、どうぞこの記事を読んでみてください。2022年4月に書いた記事です。 ドイツ語C1試験を終えた日の夜、私は思わず呟きました。 「どこか綺麗な場所へ行きたい」 夫が応えました。 「よし、行こう。どこかいい?」 森があって山があって大量の水があって、しか

仁義なき戦い

ウィーンのCafé SperlにはHausordnungなるものがあります。Hausordnungという単語は「施設利用規則」とでも訳せば良いでしょうか。旅行前、「ウィーンでは久しぶりにCafé Sperlへ行こう」と話している時に、夫がCafé SperlのHPでこのHausordnungを見つけました。 「Café Sperlでは昼の12時以降、座席でのラップトップ使用は禁止なんだって!」 その後、私たちは滞在期間中、毎日Café Sperlで昼食を食べることになるので