3日で作る、コック・オ・ヴァン
コック・オ・ヴァン、鶏肉の赤ワイン煮込み。ずっと作ってみたかった料理をやっと作ったのでその記録。
こんな記事を書いていながら結局キッチンが好き。毎夜毎夜、娘が寝静まったあとにこっそりとキッチンに立っている。
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コック・オ・ヴァンは、鶏肉を香味野菜と赤ワインで煮込んだフランス発祥の料理だ。レシピには手に入れづらい材料や、まるっと買っても持て余してしまう材料を使っていることがある。そういうのにこだわるといつになっても作るタイミングを逃してしまいがち。あくまで、フランスの、家庭料理というのを念頭に、これじゃなきゃだめ、というプレッシャーはやめて料理に取り掛かった。つまり、ずぼらなコック・オ・ヴァン。本来あるべき姿ということで勘弁していただきたい。
参考にしたレシピはこちら。
第一夜
鶏ももに下味をつける。すぼらなコック・オ・ヴァンとはいえ、おいしくいただくために、わたしに可能な限りの助力は惜しまない。そう、骨付き肉は欠かせない。煮込み料理のときは骨のあるなしがすごく影響すると思う。出汁はもちろん、骨があることで肉が固くなりすぎないし、ほろほろこぼれる様子が美味しくてたまらない。
だらりと垂れ下がるもも肉に、関節で切り目を入れて、ぶつ切りにしていく。にんにくも大雑把に芽を取っておく。(すぐ焦げるので)
香りや色の強い下味をつけるときは、琺瑯の保存容器がとても便利。無印の大きめサイズを愛用している。
ビニール手袋をはめて、ぎゅっぎゅっと下味を揉み込む。間違っても素手でやってはいけない。にんにくの芳しい匂いが、一晩中、布団の中から漂ってきてしまう。にんにく料理の夢を見るかも。
第一夜はここまで。
第二夜
火を止めて、このまま半日〜一日寝かせます。
※夏場は要注意
第三夜
3日目は食べる日でございます。
寝ている間に味が落ち着いて、ワインの力で肉もより柔らかくなり、野菜出汁(フォン)の滋味あふれるスープに仕上がっている。上品に、スープを濾してみたりしてもよいけれど、今夜はもう食べさせてください。
空腹は最高のスパイスという言葉の通り、こちとら3日前からじりじりと待たされているのだから、その期待度といったら。
玉ねぎや鶏皮は、しっかり赤ワインの赤を吸っているので見た目は少しおそろしいかも?旦那さんにも、見た目と味(おいしい)のギャップナンバーワン料理との感想を頂いた。
ほろりん、と骨から崩れ落ちる身。中心に近い部分は赤に染まらず、つるんと白い肌をさらけ出している。想像していたよりも、ワインの影は薄い。エグみやタンニンはまったく感じない。ふとした瞬間にブドウの豊かな風味が鼻を抜けていく。それ以上にセロリとハーブの爽やかな風味が効いていてとても食べやすい。たとえば、ブフ・ブルギニョンは、同じブルゴーニュ発祥の、牛肉の赤ワイン煮込みだが、それの重たさとは対極にあると言ってもよい。
最初にコック・オ・ヴァンを知ったとき、鶏を赤ワインで煮る?牛の間違いでは?と思ったくらい、その相性を疑った。濃厚な味付けの鶏肉を想像できなかったから。でも食べてみてわかった。このさっぱりした芳醇さがクセになるのだ。それに、家で作る、食べるならやはり手頃な鶏がちょうどよい。またひとつ、食材の新しい取り合わせを知り、料理の引き出しが増えた。そしてたまには、待つ料理も悪くない。
ごちそうさまでした。