感情移入するって、そういうことか……『脚本の科学』を読んで妙に納得
フィルムアートさんから出版されている『脚本の科学 認知と知覚のプロセスから理解する映画と脚本のしくみ』を読んで、感情移入について「なるほどな」と思いました。
感情移入は大切だ!
シナリオ・センターの講座のなかでも、観客が登場人物に感情移入をすればすれるほど、ドラマに惹きこまれていくというお話をしています。
作家にとって、観客を感情移入させることは大切です。
どうすれば観客が感情移入するのかは、シナリオの表現技術として手に入れることができます。(こっちが気になる方は、一番下にyoutubeのリンクを貼っておきます)
でも、そもそもなぜわたしたちは、
架空の世界の、
(つまり、実際には起きてやしない!)
見ず知らずの人が、
(友達でも、ましてや家族でもない!)
ピンチになったり、
(たいてい主人公は助かるわけだし!)
報われたり、
(泣いちゃったりもする)
する姿をみて、ハラハラドキドキするのか。
これ、めっちゃ不思議じゃないですか?
その疑問が『脚本の科学』によって解けました。
「映画を見ているときに心と脳には何が起きているのか?」ということを科学的に説明しながら、物語を語る手法(=ストーリーテリング)の原則とその戦略を明らかにする。
映画脚本だけでなく、小説、マンガ、ビデオゲームなど、あらゆる「物語」に関わる分野においても大きなヒントになる一冊。
フィルムアート社公式サイトより
『脚本の科学』はメカニズムを教えてくれる
『脚本の科学』は、『「映画を見ているときに心と脳には何が起きているのか?」ということを科学的に説明』してくれます。
シナリオの表現技術に関する書籍が、
観客にAと伝えたいなら、こうすべし!
と解説するのに対して、『脚本の科学』は、
観客がAと感じるの、なぜか?
を神経科学の観点から解説してくれます。
すっごくシンプルに、前者を『テクニック』とすれば、後者は『メカニズム』といってもいいかもしれません。
なので、両方手の内にいれておくといいかもしれません。
人間は、ムレをなす動物だ!
で、肝心のなぜ人は感情移入するのか……
『観客は、映画のなかで起こっていることを心配する能力に恵まれている』p35
この一文については、反論のしようがありません。
で、それはなぜなのかというと……
『血縁関係から範囲を拡大して、人類は相互扶助的な集団のなかで、他者との感情的な絆を作る能力を発達させてきたが、それは小説や詩や映画に登場する虚構のキャラクターとの間に感情的な絆を作る能力につながっている』p37
なのだとか!!!
そういえば、そもそも人間のような生物的には強くない生き物が、生態系の長となりえたのは、ムレで助け合う力があったからだというのは、Eテレなどの特番でよく観ます。
人間が生きぬくうえで磨いてきた社会性が、虚構のキャラクターとの感情的な絆を作るところまで進化したというわけです。
『映画で観るキャラクターたちは危険に陥ったり、苦しんだりするかもしれないが、観客自身はそうではないことを知っている。しかし観客はキャラクターが感じていることを十分に理解することができる』p38
人の痛みを理解するわたしたち
どこからともなく
「いいなぁいいなぁ~人間っていいなぁ~」
という声が聴こえてきそうです。
映画を観る、そして登場人物の痛みや悲しみ、喜びに共感する……映画って、いや物語って本当にすばらしいですね。
文化芸術をおろそかにしてはいけないのは、映画や演劇、小説などを通して、感情的な絆の範囲を拡げる訓練になるから、という一面もあるからですよね!
ということで、ぼくらが映画に感情移入しちゃう理由が明らかになって、スッキリしました。
シナリオ・センターのあらいでした。
▼ちょっと高い。『脚本の科学』▼
▼感情移入をさせる方法の一例▼
▼作り手になれば、なおさら感情的な絆を拡げられるようになりますよ▼
小・中学生向けの講座も開講中!