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才能ということばを、努力から逃げる言い訳に使っちゃうかも
一般的に、「あの人は、才能がある!」というのは、褒めことばとして使われます。なんなら、誰もが一度は言われたいことばの一つ、かもしれません。
実際、活躍している小説家や脚本家、映画監督、演出家、画家やミュージシャンからは、まばゆいほどの才能を感じます。
でも、と思います。
凡人であるぼくらが、
「あの人は、才能があるから!」
「やっぱり、才能がある人は違うわね!」
って感じで、才能という言葉を使うとき、実は、自分が努力から逃げる言い訳にしているだけなんじゃないか?と思うのです。
だって、ぼくらは本当は知っているんです。才能あふれる彼らが、凡人にはマネできないほど、めちゃくちゃ努力をしてるってことを。
才能は開花するもの
「才能が開花する」ということばがあります。
花開、と書かれると、ある日、目が覚めたらなにかしらの才能が花開くようなイメージが浮かびます。なんか転生しちゃった感じです。油断すると、自分はなにもしなくても、時が来るとさえ思ってしまいます。
ですが、花を育てたことがある人ならわかるように、花が咲くまでにはお手入れが必要です。花が才能だとすれば、土が自分。その土にかける水は、努力。
土に、丁寧に、丁寧に、水をやらないと、花は咲きません。
ノンフィクション作家の石井光太さんは、文章を書こうと決めた高校生の時、「文章が下手だったので、1日に3冊は本を読み、1週間に1冊は手で書き写していました。プレゼントも全部図書券にしてもらっていて、だからバレンタインもチョコではなく、図書券」という話を聞かせてくれました。
小説家の原田ひ香さんは、「私はシナリオライター時代に毎週原作を探して企画書を提出していたのですが、この期間の膨大な読書量が、今の自分につながっていると思います。今でも私は最低でも週2冊は読んでいますし、他の小説家の皆さんも皆さん、本をびっくりするほどよく読んでいます」とおっしゃいます。
特撮モノや戦隊モノで人気の脚本家小林靖子さんは、「皆さんは普段お仕事されていると思いますし「忙しい」とか「病気になった」とか、何かと書けない理由を作っちゃうと思うんですが、それをしたらプロにはなれません。
お題をいただいて、締め切りがある。締め切りまでに絶対書いてエンドマークを打つ。シナリオ・センターのプログラムはプロの現場とまったく同じなんですね。違いはギャラがないことだけです」と笑ってお話ししてくださいました。
スポーツの世界は、ある意味で努力の内容や質がわかりやすい部分があります。
元メジャーリーガーの松井秀樹選手は、巨人軍に入団した年に、毎晩のように素振りをしていたという逸話が残っています。
すでに超高校生級スラッガーと言われていた松井選手ですら、プロの世界に入ってなお努力を続けたわけです。
誰もが天才だと認めるイチロー選手は、高校の3年間、寝る前の10分間の素振りを365日、3年間欠かさず続けていたそうです。それだけでもすごいですが、最低10分だったとか。日によっては、1時間や2時間バットを振る日があったそうです。
かれらは才能の塊だ!なんて言って、目を逸らす
才能に光を当てる時、そこには努力という影がはっきり浮かびます。才能と努力は、ワンセットです。
なのにぼくらは、才能が『かれら』と『じぶん』では違うんだ、と言って、かれらの努力と、じぶんの努力の総量から目を逸らします。
でも、努力を始めるのに、早いも遅いもありません。努力の差は埋められます。1日10分の努力も、1年続ければ60時間です。あとは、やるかやらないか。
多くの脚本家を輩出するシナリオ・センターを創設した新井一は言います。
「シナリオライターになれる人は(中略)、忍耐というか根気というか努力というか、そういうものを持ち続けている」
40歳を過ぎてズブの素人から野球選手を目指すとか、そんな途方もないことではない限り、努力は花を咲かせてくれるのではないでしょうか。
▼石井光太さんの公開講座の内容
▼原田ひ香さんの公開講座の内容
▼小林靖子さんの公開講座の内容
ぼくは、小さい頃から苦手だった文章を書くことに、ちゃんと向き合ってみようと思う2021夏。
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