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特別シンポジウム「進化する社会的共通資本」〜Evolution of Social Common Capital〜 を実施しました:2024年3月26日

2024年3月26日に京都大学人と社会の未来研究院社会的共通資本と未来寄付研究部門特別シンポジウム「進化する社会的共通資本」を開催した。本研究部門設立が5月に3年目を迎えるのにあたり、活動の報告を行い今後の発展をより多くの人々と考えようという趣旨で、あえて、招待制でオフラインのリアル開催とした。

本シンポジウムは、社会的共通資本に関連する研究者や社会的共通資本を社会実装している実践者、本研究部門と今後連携していきたい方々が一堂に集まり、社会的共通資本の可能性を対話する機会となった。

イントロダクションとして、内田由紀子教授(京都大学 人と社会の未来研究院長)は、社会的共通資本を研究する意義について話された。

続いて、 当研究部門発起人である久能祐子氏(S&R財団 理事長兼CEO / 京都大学 総長特別補佐)から、研究部門設立の経緯から現在の活動まで振り返っていただいた。

基調対談として、山極壽一氏(総合地球環境学研究所所長)と金井政明氏(株式会社良品計画会長)に「第二のノマド時代と社会的共通資本」というテーマで対談いただいた。西洋の考え方がベースとなっている現代社会の人間関係を脱し、人として心地よい人間関係になるための変化が必要な時代になったという内容であった。ゴリラの集団関係から考えてきた山極氏と、良品計画の実践の中で地域との関係を考えてきた金井氏の相違と共通点が垣間見れた。

基調講演として、舩橋真俊特定教授(京都大学 人と社会の未来研究院 社会的共通資本と未来寄附研究部門)が「進化する社会的共通資本ー拡張生態系の視点からー」というテーマで講演した。本研究院のアウトリーチ活動から、舩橋特定教授の研究領域である自然環境保全の話が中心であった。特に、社会的共通資本を拡張させて、自然ー社会共通資本と概念拡張をしていく発表に、社会的共通資本の概念として進歩する可能性が見出された。

セッション2「社会的共通資本の概念を問う」では、西村勇哉氏(NPO 法人ミラツク代表理事)モデレートのもと、多くの研究者に登壇いただいた。

藤倉達郎教授(京都大学 アジア・アフリカ地域研究研究科)には、ネパール研究を基に、社会的共通資本の管理にネパールの地方自治の手法が参考になるのではないかといった指摘がなされた。

德地直子教授(京都大学 フィールド科学教育研究センター)には、社会的共通資本と森林資本について講演いただいた。森林を資本として捉え直し、森林が人間社会に与える影響を話された。改めて、森林も社会的共通資本なのだと再認識した。

若手研究報告として、渡邉文隆非常勤研究員(京都大学 人と社会の未来研究院 社会的共通資本と未来寄附研究部門)と西山知樹氏(東京大学 経済学部)が報告した。渡邉氏は、社会的共通資本が生成していく過程を分析し、社会的共通資本を維持・管理するために寄付が重要な役割を果たすと結論付けた。西山氏は、現在あまり注目されてこなかった宇沢の数理の側面に注目し、理念としての社会的共通資本を越えて、宇沢が社会的共通資本を実践しようとした足跡を研究していた。

実践報告として、西岡大輔非常勤研究員(京都大学 医学研究科 社会疫学分野 )に「社会的共通資本:医療のこれからの役割」というテーマで登壇いただいた。一般的に医師は、病気になった患者さんの病気を特定し、それを治すことが目的だと思われる。病気の原因は、身体の仕組みだけではなく、社会的な要因があることを西岡氏は指摘する。西岡氏は孤独が原因となって体調を崩している患者と多くかかわってきた経験から、社会的共通資本としての医療を模索していた。

セッション2への講評として、広井良典教授(京都大学 人と社会の未来研究院)にコメントをいただいた。セッション2では、多くの領域への言及があり、生態系や医療を同じ場で語られることは珍しい。多くのテーマが繋がり合う結節点に社会的共通資本があるのではないだろうか。また、社会的共通資本は完成された概念ではないため、この概念を進化させる必要性を感じると同時に、進化の可能性が垣間見られるセッションであったと締めくくった。

クロージングセッションとして、川村健太特定准教授(京都大学 人と社会の未来研究院 社会的共通資本と未来寄附研究部門)モデレートのもと、占部まり氏(宇沢国際学館 代表取締役)、堀内勉氏(多摩大学 社会的投資研究所 所長)、菅野暁氏(東京大学 CFO)、村井暁子氏(京都大学 経営管理大学院 客員准教授)で、「社会的共通資本の社会実装の可能性」というテーマで対談が行われた。社会的共通資本を社会実装するために、どのようにお金を投下するかが議題になった。

全体への講評として、再度、広井良典教授にコメントをいただいた。現代は、時代の潮目にある。市場経済万能では律せられないテーマへの関心が高まっている。そのことを考えるために、社会的共通資本に注目していきたい。また、本研究部門は理論と実践の橋渡しすることも目標としているため、今後多くの社会的セクターと協力していきたいと本シンポジウムを締めくくった。

シンポジウム終了後の交流会では、拡張生態系で栽培されたハーブも提供され、登壇者と参加者の交流や参加同士の交流が行われた。また、本シンポジウムにおいて研究部門のアウトリーチ活動の中で社会的共通資本を知った方も参加され、本研究部門の活動が徐々に広まっている実感があった。

社会的共通資本と未来寄附研究部門の取り組みをご支援いただく窓口として「人と社会の未来研究院基金」を設けています。
特定の一民間企業からの寄附で運営されることが多い通例の寄附講座とは異なり、様々なセクターから参加をいただくことを目指しております。https://sccf.ifohs.kyoto-u.ac.jp

また、社会的共通資本がなぜ今必要なのか、Beyond Capitalismとして今後どのように社会的共通資本と未来を拡張していくのか、企業に求めることやアカデミアとしてのあり方も再考する各種イベントを実施しております。
https://sccf-kyoto.peatix.com

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