【古代ギリシャ語の効用の話つづき】あの「ギリシャ共和国」は本当は「ギリシャ」ではない?!ジャパンの正式名が「ニホン」であるように本名は別です!
一見、現代では役立ちそうにない古代ギリシャ語も、勉強していると意外なほどに役立つ雑学が学べていいことがある、という連作記事の続きです。
前回はgのつくコトバまでたどりつきました。今回はhのつくコトバをやりましょう!
世界史の教科書とかに出てくる「ヘレニズム文化」のヘレニズムって何?
世界史にヘレニズムという言葉が出てきましたよね。
かのアレクサンドロス大王の征服事業の後、ユーラシア大陸中にギリシャ文化の影響が広まりました、その「ギリシャ文化の影響を受けた世界的なモード」のことをヘレニズム文化といいます。
「ギリシャの影響が世界に広まってできた文化なら、どうしてギリシャ流文化、とか言わないの?ヘレニズムってなんのことなの?」
と高校生の時に思った方に、ギリシャ語学習者として明確な答えをお教えしましょう。
ヘレニズムの「へレス」というのは、なんのことはない、ギリシャのことです。
我々がギリシャと呼んでいる国は、そもそも本当はギリシャなどという名前ではないのです。
ソクラテスもプラトンもきっとビックリ!「おれたちがギリシャ人だって?そもそもギリシャって何?」
古代ギリシャ人たちが自分たちのことを呼ぶときは、Ἕλληνες「ヘレネス」と呼んでいました。ヘレネスの対義語がバルバロイ、つまり「野蛮人」「異国人」となります。
古代ギリシャには、アテネとかスパルタとか、いろいろな都市国家が乱立していましたが、「いくつもの都市に分かれていても、オレたちは文化的には同じヘレネスだよね」という意識があったようです。
では「ギリシャ」はどこから来たのでしょうか?
ハイ、またしても西欧史観の影響です(!)。
西欧が日本のことを勝手に「ジパング」などと呼んでいたのが、いつのまにか現代でも「ジャパン」という名前で定着してしまったのと、経緯は似ています。本当はニホンだっつーの。
ギリシャの場合は、どうも古代ローマ帝国の市民たちが、かつて栄華を誇ったギリシャから移民してきた人たちを「グラエキ」と勝手に呼び始めたことから始まったそうです(old people(古い民)というような意味が込められているとか、いろいろ言われているのですが、グラエキの語源は私もよくわかりません)。それがグリークとかグレコとかになって、なぜか日本のカタカナ語ではギリシャとなった。もうなにがなんだか。
現代の「ギリシャ共和国」も本当はギリシャ共和国じゃない?!
古代ギリシャ人が自分たちのことを「ギリシャ人」などと呼んでいなかったように、現代ギリシャ人も自分たちのことを「ギリシャ人」とは呼びません。
古代ギリシャ語の「ヘレネス」とは、表記はΈλληνεςと同じですが、発音が異なり、H音が抜けて「エリネス」と言います。ギリシャの方々は自分たちのことを「ギリシャ人」ではなく「エリネス」と呼んでいます。
同様に「ギリシャ共和国」という国名も、ご当地では別の呼び方をしています。彼らが自分の国を呼ぶときは、Ελληνική Δημοκρατία、カタカナで表すと、「エレニケー・デモクラティーア」です。
勝手に「ジャパニーズ」と呼ばれている日本人とはどこか親近感が生まれるかも!?
ややこしい!
と思いきや、事情を鑑みると、なんだか日本人としては親近感が湧きますよね。
自分たちのことは「ニホンジン」と呼んでいるのに、なぜか外国に出ると、「私はジャパニーズです」と言わなければいけないハメになっている状況。みんなが便利ならそれでもいいかとは思うのですが、国際スポーツ大会の応援などで振っている旗を見た海外の方から、「その旗に書いてあるNIPPONというのは、どういう意味なのですか?」と聞かれると、なんか萎えますよね。
ニホンジンが勝手にジャパニーズにされたように、エリネスが勝手にグリーク(ないしギリシャ人)にされているのだ、と理解すれば、ギリシャの方とは話が合い、気持ちが通じるかもしれません!
「おうおうそうだよな!西欧の奴らが勝手に名前を変えやがってさあ!」と!