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どうして生物学(というか進化論)はこんなにも強力なのか?…に応えてくれた推薦図書

※本記事内の参考文献URLおよび参考DVDのURLにはAmazonアフィリエイトリンクを貼らせて頂いております旨、あらかじめご了承ください

↓こんな一見ファンシーな表紙をしていたので、てっきり「大衆向けのわかりやすくて楽しい生物学入門」の類かと思って買ったら、なんと、バリバリな科学哲学の本でした

いちおう「入門書」ではあるので、説明は非専門家向きに丁寧なのですが、

ぶっちゃけ、高校生物で習う程度の、生物学の用語は前提としてないと、途中で議論をミッシングするだろうし、途中では確率統計が主役になるので数学の基礎知識がないとこれまた途中で議論をミッシングすると思う

、、、などと、初学者にもある程度の前提知識は要求してくる厳しさはあるぞ、ということは申し添えつつ、私の結論としては、これは推薦図書ですぞ!!

というのも、この本は、

前書きにある通り、「生物学といってもいろいろあるが、もっぱら、進化論をメインに、その哲学的意味を追っていく」ものとなっていまして、

これがたとえば私のようなSF好きな哲学オタクの心を惹きつける。私自身も過去のnoteで何度も記事にしてきた通り、論理哲学的な議論をしたいとき、進化論というのは見事な試金石になる

どうも「ジュラシックパーク」みたいな大衆向けSF映画でそういう描かれ方をするせいなのかもしれないが、進化の問題は科学や論理や数学ではとても扱えない、不思議で人知の及ばないものである、という誤解が広い

少なくともわたしが知っている限り、その印象は違います

進化論ほど、科学論や数学、哲学や論理と相性のよい成功例は、(物理学みたいな「最初から数学ベースだから、数学と相性がよくて当たり前」な分野を除外すれば)他の科学でもなかなかないくらいなのです。

※そしてたぶん、これが『デューン:砂の惑星』みたいな「もし〇〇という環境の惑星があったら、おそらく、こういう動物たちがいるだろう」という考察をベースにした「生態系シミュレーション重視」のSF作品に、リアリティが感じられる、理由の一つ

たしかに、現代進化論は、数学モデルにも、論理的な推論にものりやすい。ただし、それを哲学的に吟味しようとすると、まだ議論しなければいけない(という永遠に議論しなければいけない)テーマが残されています。

本書は、そんな、現代進化論の哲学的問題を紹介してくれる本であり、

たとえば、私がずーーーーっと、何度も何度も蒸し返している、以下、ふたつの率直な疑問、

【1】進化論が正しいとして、最初の生命はいったいなんだったのか?(あるいは、最初の生命はひとつだったのか、それとも複数か?

【2】進化論が正しいとして、それはこの宇宙における生物進化は決定論であるということを意味するのか?それとも非決定論なのか?

という話もちゃんと出てくる上、

私がこの本を読むまで誤解していたこと、「進化論の証明は、推論仮説演繹法ではなくて、実は最善説明モデルによる証明である」という点もたいへん勉強になりました。※そーです、私はこの本を読むまで、ダーウィンは仮説演繹法を使って進化論に到達したのだと誤解していた。。。

そしてこの本の最大の議論は、いちばん最初に出てくる、この議論でしょう↓

結局、生物学とは、いつかは物理学に還元されつくすものなのか、それとも、物理学では説明できない対象を含んでいるのか?

↑これがいかに重大なテーマかは、SF好きな方こそがわかってくれるかも、です。生物学が物理学に還元されつくす範囲のものに収まるならば、「生命」というものも、、、おそらくそういう程度のこと。しかし、生物学の中で「物理学には還元できない何かがある」となると、、、これは、私たちにとって、「生命」というものに対する見方が大逆転するのです

実は、個人的には、「生物学もいつかは物理学に還元され尽くすだろう」とは予測してるのですが(私はドライな機械状論者ですからね、、、)、そう決めつけるのもおそらく尚早、生物学からは未来において何か革命的な発見が、「ありえる」という期待は常に持っています

そして、そういう「可能性」をもっているからこそ、

生物学は、気になって仕方のない学問であり続けているのです

ともかく、こちら、強く、推薦図書として挙げさせていただきます!


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