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"ハコをつくっただけでは終わらせない"という思考から繋がる、ボクらの未来の創造のおはなし

台風一過。

例年なら9月に集中する台風が、少し遅れて通り過ぎていてもあまり気にらないような。それは例年ならそこにあるべきイベントたちがいないからかもしれなくて、でもそんな状況でもうちの4人の子どもたちの運動会(小学校は体育発表会という名前でした)が無事終わりました。ゆっくりといつもの日常を取り戻しつつある、そんな秋の日です。

先日、来年4月から新しくおいかぜの仲間になる、新卒採用者の3人と課題図書を使った2時間ほどのディスカッションをしました。課題図書を事前に読んで、ボクやスタッフとディスカッションをしてもらって、1200字程度のレポートを書いてもらおうという内容です。本当は現場のみんなとOJTでの教育から始められればと思っていたのですが、みんなあまりに忙しいので年明けまでお預け、それならボクが概念学習と称してグループディスカッションやってみようってなったわけです。

第1回はこの本。

ボク自身、あまりこういった類の本は読みません。嫌いというわけではない。仕事柄むしろ積極的に読んだほうがいいと思いながらなかなか手に取れないんだけれど、たまたまお客さんと一緒に進めているプロジェクトの関係でタイミングよくこの本を手に取ることになりました。読んでみると"なるほどなるほど時代を捉えていて面白いなぁ"と思って課題図書にしました。

さて。D2Cっていったいなんなのでしょうか?

D2C(Direct to Consumer)は、メーカーが自社で企画・製造した商品を、自社のECサイトを用いて直接消費者に販売する仕組みのこと。直接販売のひとつ。

Wikipediaがこう教えてくれるとおり、エッセンスはこの言葉に詰められています。いま巷で騒がれているD2Cという言葉には、もう少しいろんなキーワードが付加していたり、もっと広義に捉えられているとボクは思っています。

Shopify(ECサイトのパッケージ) + amazon AWS(クラウドサーバ)、ターゲットはミレニアル世代とZ世代、世界観とストーリー、サスティナブルやエシカルの文脈、テクノロジーとデータドリブン、コト付きのモノ、プロダクトですらコンテンツ、ライフスタイル、顧客を仲間と捉えるコミュニティ型マーケティング、LTV(顧客生涯価値)……

といったように、いまウェブ業界、プロダクト業界を席巻しているD2Cはこういうキーワードを纏いながら一つの大きなトレンドとしてボクたちを巻き込んでいます。アメリカのD2Cと日本のD2Cが同じ流れではないけれど、コアの部分では同じような流れが起きているし、これからもその流れは加速していくと思います。

かつ新型コロナウィルス感染拡大以降、D2Cの流れは更に加速しています。今までは実店舗での販売チャネルに重きを置いていた企業でも、ウェブファーストにシフトせざるを得ない、まさにD2Cの"おいかぜ"になってしまったわけですが。

20年間この業界に関わってきて、いまのD2Cの流れはとても自然な流れだなと思っています。ボクが10年以上お客さんに伝えていることに"ハコをつくっただけでは終わらせない"という言葉があります。ウェブサイトやウェブショップをつくるということは単にハコをつくるだけの話であって、そのハコを使って何をするかということが無ければ意味がない、良いモノをつくらないと売れないし、良いコンテンツがなければ伝わらない。もちろん"どうやって売るか?"、"どうやって伝えるか?"というテクニックがありますがもっと大事なことは、その手前の"良いモノって何か?""良いコンテンツって何か?"というのがある。そしてその裏裏側に"クオリティや世界観や理念やストーリー"だったりがあって、ウェブサイトやウェブショップをつくるということは実はとても奥行きのある話なのです。つまりボクが何を伝えたいのかというと"ウェブサイトやウェブショップで何かをするということはあくまで手段である"ということです。

サーバ・ネットワークテクノロジーからスタートしたボクたちおいかぜが、いまやデザインやブランディングやプロモーションまで業務範囲が拡がっているのは、ボクの思考と行動の変遷そのものなのです。そして良いウェブサイトやウェブショップをつくろうと思ったとき、その全てを自分たちや信頼できるパートナーさんたちで賄えないと本当の意味で良いモノを作れないという覚悟でもあります。

おいかぜは本当にいろんな職種の人たちがいます。営業、プランナー、ディレクター、デザイナー、ウェブエンジニア、ITインフラエンジニア。最近では映像をつくってくれるスタッフもいたりするので、ボクがお客さんによく話す"うちはウェブのことならだいたいなんでもやれます"って言葉が本当に"なんでも"になりつつある。

創業のときから"自社でつくること"を続けているのは一貫したボクの強い想いです。プロデュースやディレクションやプロモーションに特化したり、技術だけ追い続ける方が(つまりは選択と集中)、商売人としては賢明なんだろうと思うのだけれど"つくること"を会社に内包していないとわからないことがあると思っています。例えば"とても単純に見えるけれど時間や手間のかかること"、"ディティールの集まりが産み出すクオリティの高さ"っていうのは、身体的に理解するものだと思うのです。ボクたちおいかぜは"そういう理解を前提とした総合力"を目指したいと思っています。

ボクが3人の新卒採用者に最初にこの本を読んでもらいたかったのは、いまのボクらの業界のトレンドが、業界の歴史や、前述のおいかぜの歴史の帰結であり(もちろん過程でもあるんだけれど)、かつボクたちとは逆の理解でトレンドを捉えてほしいと思ったからです。感覚的にトレンドを捉えて歴史を遡ってほしかった、そういう意味でD2Cは、ボクたちの"いまの業界の全体像を捉えやすいキーワード"だと思っています。

そしてもう一つ。

D2Cのようなキーワードは消費されていく宿命(すごく矛盾しているのですが)を持っているとも思っています。D2Cがトレンドワードになってしまった以上、それは仕方のないことです。でもボクは新卒採用者の3人が、単なるトレンドとして捉えず、もっと本質的なところにたどり着いてほしい。仮にこれから先、D2Cというキーワードを聞くことがなくなったとしても残るもの、それはきっと歴史を遡れば見えてくる、そんな本質的なところをとらえたディレクター・デザイナー・エンジニアになってほしいなと思っています。

かといってインターネットの起源から学び直せなんて思っているわけではありません。次回の課題図書はこの本。おいかぜが創業した時期くらいの時代の空気を捉えることのできる本です。

糸井重里さんが1990年代後半から2000年くらいに書いた、それはそれは素晴らしい本です。"まるで予言の書"というコピーが大袈裟ではないくらい、次の時代(つまりは今の時代)を捉えた言葉の数々。ボクも久しぶりに読み直してみようと思っています。

こうやって本を読んだりコミュニケーションをしながら、ボクらの業界やおいかぜのことを理解してもらう概念学習って、新しく会社に入るみんなにとってとても良いことだなぁと思っています。そしてもう次のディスカッションがたのしみだったりしています。

実はボク自身も自分たちの業界を俯瞰して捉え直すことに役立てていたり、おいかぜのいまの業務、おいかぜの未来についての言語化をしているんだろうな。現にこのnoteはまさにそういうことですよね。

ボクが概念学習と読んでいるこの行為は、彼らのためだけではなく、関わる全ての人たちにとっての学習と言語化の機会で、双方向あるいは全方位的に作用しているなぁと感じています。そして突き詰めるとこの行為は、ボクと彼ら3人とスタッフたちによる、ウェブ業界やおいかぜの未来を創造する行為なのかもしれません。

楽しいですね。

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