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【読書録】『戦国武将が愛した名湯・秘湯』岩本薫

今日の本のご紹介は、温泉についての、旅行ガイドブック的読み物、『戦国武将が愛した名湯・秘湯』(2018年、マイナビ出版)。

著者の岩本薫氏は、本業のコピーライターのかたわら、webマガジン「ひなびた温泉研究所」を運営している。また、別のご著書に『ひなびた温泉パラダイス』もある。かなりの温泉好きの方のようだ。

温泉の本は巷に数あれど、戦国武将とのつながりのある温泉という切り口で紹介してくれているのが、この本の最大の特徴だ。

なぜ戦国武将と、温泉なのか?という点については、前書きに、このように書かれている。

 (…)温泉は戦国武将で選べばまず間違いない。(…)(p3)
 (…)戦国時代といえば、刀だ、弓矢だ、槍だ、火縄銃だと、そんな直接的な武器で命がけで戦っていたのだから、生傷だって絶えなかっただろうし、打ち身だったり、捻挫だったり、骨折だったりと、それから日々の身体の疲労だって、そうとうなものだったはずだ。
 (…)病院もサロンパスもバンドエイドもエナジードリンクもない時代だ。(…)それらの代わりを務めていたのが、"温泉"だった。
 いわば温泉は戦国武将たちにとっての野戦病院であり、活力を養うエナジードリンクだったわけだ。(p4)
 なんといっても格が違う。実績が違う。歴史が違う。だから、いい温泉は戦国武将が教えてくれる。(p6)

ところで、私は、「城ガール」である。お城を訪問し、お城の関係者である戦国武将たちの生き方に思いを馳せるのが好きだ。それに、私は、お風呂や温泉も、もともと、大好きだ。だから、このまえがきは、私のハートをわしづかみにした。「戦国武将×温泉」というコンビネーションに、大いに心ときめいた。私の趣向に、どストライクなのだ。

そして、本論を読み進めると、温泉の紹介部分もさることながら、その温泉を愛した数々の武将にまつわる歴史上のエピソードがたくさん紹介される。有名なものも、そうでないものも、とても読みやすく、分かりやすく解説してくれている。さすがは、コピーライターさんだ。歴史を変えた戦などの様子が、ありありと浮かんでくるのである。とても面白いし、勉強にもなる。

以下、自分の備忘録として、本書で取り上げられている温泉をリスト化しておく。これらの温泉に行かれる場合には、是非、事前に、本書をお読みになることをお薦めする。それぞれの温泉に、それぞれの愛すべきエピソードがあり、予備知識なしで行くよりも、何倍も楽しくなること請け合いだ。

織田信長

下呂温泉(岐阜県)「湯之島館」「民宿 松園」

豊臣秀吉

有馬温泉(兵庫県)「上大坊」「陶泉 御所坊」

徳川家康

熱海温泉(静岡県)「日航亭・大湯」「山田湯」

武田信玄

下部温泉(山梨県)「古湯坊 源泉館」★日本温泉協会オール5評価
小谷温泉(長野県)「大湯元 山田旅館」★日本温泉協会オール5評価
川浦温泉(山梨県)「山県館」

上杉謙信

貝掛温泉(新潟県)「貝掛温泉」★日本温泉協会オール5評価
松之山温泉(新潟県)「凌雲閣」
生地温泉(富山県)「たなかや」
燕温泉(新潟県)「河原の湯」「黄金の湯」
関温泉(新潟県)

真田家

別所温泉(長野県)「石湯」「大湯」「大師湯」
角間温泉(長野県)「岩屋館」
松代温泉(長野県)「国民宿舎 松代荘」

小田原城攻めの豪華キャストたち

箱根湯本(神奈川県)「早雲足洗の湯 和泉」「大和館」

多数の戦国武将たち

(丹波長秀、堀秀政、多賀常則、豊臣秀次、大谷吉継、前田利家など。もっと古くは、日本武尊、源頼朝、木曽義仲、巴御前、長尾為景など)

草津温泉(群馬県)「時間湯・千代の湯」「時間湯・地蔵の湯」「奈良屋」

武田勝頼

伊香保温泉(群馬県)「千明仁泉亭」「伊香保温泉露天風呂」

伊達政宗

青根温泉(宮城県)「湯元 不忘閣」
東鳴子温泉(宮城県)「高友旅館」

直江兼続

五色温泉(山形県)「宗川旅館」

加藤清正

平山温泉(熊本県)「やまと旅館」

毛利元就

湯野津温泉(島根県)「泉薬湯 湯野津温泉元湯」
湯野津温泉(島根県)「薬師湯」★日本温泉協会オール5評価

福島正則

山田温泉(長野県)風景館

みなさまのご存じの温泉や、既に行かれたことのある温泉はあっただろうか。熱海、箱根湯本、草津、伊香保、など、有名な温泉地もあるが、レアな秘湯の温泉地も多く紹介されている。

なかでも、「日本温泉協会によるオール5評価」を持つ温泉のうち、武将の愛した温泉が4つもあるのは、すごいことのようだ。同協会からオール5をもらっている温泉は、日本に数十施設しかないらしい。(日本温泉協会のレーティング制度があったことは、本書で初めて知った。勉強になった。)

温泉は、まさしく、日本の宝。とりわけ、戦国時代から、武将に愛された歴史ある秘湯には、是非、将来にわたって存続していってほしいと願っている。

楽しんでいただければ嬉しいです。

著者の、別の温泉本はこちら。

過去にご紹介した、女一人旅で温泉を楽しむ本についての記事もどうぞ!

過去の温泉記事へのリンク集はこちら。


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サザヱ
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