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【読書力】『余命10年』岸博幸

今日ご紹介する本は、岸博幸氏の『余命10年』(2024年3月、幻冬舎)。副題は『多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと。』

著者の岸博幸氏は、元官僚の大学院教授。テレビのパネリストやコメンテーター等としてメディアにも登場しているため、ご存じの方も多いのではないだろうか。

岸氏は、60歳で、血液のがんである多発性骨髄腫との診断を受けた。そして、余命があと10~15年であると宣告された。本書は、それを機に、ご本人が悟り、気づき、考えたことを、惜しみなく読者に共有してくれるものだ。

以下、特に印象に残った箇所を書き留めておく。

 (・・・)僕の人生は70歳で終わってしまう可能性が高いのだ。だったら、本来の自分らしい生き方を貫こう。
 そこで心に決めたのが、残り10年は、"ハッピー"と"エンジョイ"という2つを追求して生きるということ。

p36-37

 余命を告げられたということは、「これまで長い間頑張り続けたのだから、最後は好き勝手して、自分自身の人生を楽しんでいいよ」という天啓。そんな風にとらえても、いいのではないだろうか。

p69

 僕と同様、「余命を告げられる」という経験をした人、あるいは、する人は少なくないだろう。そんな人たちに、声を大にして言いたい。人生の残り時間を告げられるということは、悲しい知らせではなく、自分最優先の生き方をするチャンスを得た、すごくラッキーなことなのだと。
 特に中高年の人の多くは、家族も自立しているだろうから、好き勝手なことをやりやすいはずだ。これを機に、自分がもっとハッピーで、エンジョイできる生き方をして、最期を迎える時に、心から「楽しい人生だった」と言えるように過ごしてほしい。

p69-70

"ハッピー"とは、周囲に気兼ねするのはやめ、自分がやりたいこと、やるべきだと思うことを最優先にし、日々の自己満足度を高めることだ。
 これに対して、"エンジョイ"とは、チャンスがあれば積極的に新しい世界に飛び込み、今までと違った経験をし、人生の幅を広げるということ。

p37

 僕がまずおすすめするのは、「バケット・リスト(Bucket List)」、死ぬまでにやり遂げたいことのリストを作成すること。

p71

 バケット・リスト作成に次いで、ハッピーとエンジョイの実現のために僕がおすすめしたいのは、常に"スマイル"と"大きな声"を意識すること。

p73

 「人生をエンジョイする」のに欠かせないのは、ワクワク感やドキドキ感だと思う。だからこそ、残り人生をもっとエンジョイするには、意識して自分から"サプライズ"を探す、作り出すことが大事だと思う。

p78-79

こういった、限られた余命と向き合ってどう生きるかについてのメッセージが、本書の中心となっている。

しかしそれにとどまらず、若い世代への転職や起業のすすめ、子を持つ親たちへ向けた子育てのヒント、日本の明るい未来のための、価値観の転換、社会保障制度改革などを含む提言などにも話が及ぶ。元官僚ならではの著者の視点は鋭い。

病気や死をことさらに意識せず、健康な人生を送れることが、どれだけ幸運でありがたいことか。そして、漫然と人生を過ごし、有限な時間を無駄にすることが、どれほどもったいないことか。本当に大切なことは何なのか、後悔しない人生を送るためにはどうすればよいのか。こういった大切な問いを投げかけて、自分の人生から逃げずに向き合う機会をくれる。本書はそんな一冊だ。

なお、私が過去にnoteでご紹介してきた他の本の中にも、重い病に直面してご自分の人生と真剣に向き合った方々のものがある。本書と併せて手に取ってみていただければ幸いだ。

ご参考になれば幸いです!

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