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【読書録】『捨て本』堀江貴文

有名な実業家である堀江貴文氏が、人生を豊かにするために、余分なものやしがらみを捨てるべきことについて説いた本、その名も『捨て本』(2019年7月)。

ご存じのとおり、堀江氏は、東大在学中に起業し、東大を中退、ビジネスで大成功し、刑務所での服役も経験した。出所後は宇宙事業などの様々な事業を進めている。とてもスケールの大きい人だ。

そんな堀江氏は、出所後、ずっとホテル住まいで、持ち物もトランク4つしかないという。とても身軽で、フットワークの軽い人生を送っている。

この本では、堀江氏が、色々なものを捨てることによって、自分らしい人生を生きる術を獲得してきた、その秘訣や、そのようにして得られる人生の素晴らしさについて、様々な切り口で語りかけてくる。人生において、さまざまなしがらみに悩んでいる人、人生の踊り場にいると感じる人には、ヒントとなる一冊かもしれない。

本書の構成

序章では、捨てることの必要性について説く。「常識や理屈に縛られ、思考停止した生き方をしている人が、どうすれば自由に生きられるのか?」というのが、堀江氏が近年ずっと探求しているテーマだということだ(p13)。

豊かに生きるには、モノや他人への執着を捨て、いまを生きること。
他人を気にせず、自分の気持ちに従うこと。
ケチにならず、分け与えることだ。(p13)

そしてその後は、第1章(from 1972 to 1990)、第2章(from 1991 to 2003)、第3章(from 2004 to 2013)、第4章(from 2013 to 2019)と続き、堀江氏の人生のライフステージに引き寄せつつ、人生で捨ててよいものがこんなにあるということを、ご自身の経験をもとに綴っていく。終章では、宇宙事業への思いを語りながら、今後も、捨ててはいけないものがわかっているから、何も怖くない、という。

以下、この本で、個人的に刺さったエッセンスを備忘のために挙げておく。

刺さったところ

「捨てる」ことに寂しさはついて回る。…捨てることに踏ん切りをつけられず、現状にとらわれたまま、新しい世界へ飛び出していくことはできない(p86-87)。
人付き合いには、刺激の賞味期限みたいなものがある。仕事や人間関係、触れる情報によって、誰しも人生のステージは変わっていく。その間に友人や趣味仲間の、刺激の賞味期限はすり減って、話が合わなくなっていくのは、ごく普通の減少だ(p132)。

私は、年齢を重ねるにつれて、昔の友人と話が合わなくなり、疎遠になってしまうことが増えてきた。そんな自分に、心の奥底で、罪悪感を持っていた。でも、合わなくなって当然なのだ、と言ってもらって、救われた気になった。新しい世界に進むため、前進するために、当然のことなのだ。

モノは、いつか尽き、朽ちていく。でも体験は、尽きない。多少色あせることはあっても、誰からも奪われたりしないものだ(p141)。
ライフスタイルは必ず変わるのに、借金してまで自由度の極めて低い不動産を所有しようという理由は何なのだろう?…ほとんどの場合、「家を買うのが立派な大人」だという刷りこみに、屈したのだと思う(p175)。
持ち家は安心感を軽く上回るリスクだらけ(p183)。

家を所有するリスクについては、私も大いに同感で、持ち家を持つ気になれない。いい歳になったが、この歳まで、一度も不動産を買ったことはなく、ずっと賃貸住宅に住んできた。

私の実家の家族や、古くからの友人たちの持ち家信仰は強く、よく不動産を所有することを勧められる。また、この歳で、それなりに収入もあるだろうに、不動産を持たないのは不思議だ、と言われる。

確かに、コスト的には、その物件に長く住むのであれば、賃貸よりも持ち家のほうがお得なのもしれない。

でも、私にとっては、大金をはたいてローンを組んで不動産を持つメリットに比べて、自由を失うリスクが大きすぎるように思えてならない。

家を買うと、特定の地域の特定の家に、一生住まなければならないという縛りが生まれる。そうすろt、やりたいことをやるために、いつでもどこにでも行ける、という、今の心理的な自由が制約され、フットワークが重くなりそうだ。それが、私にとっては、とても、うっとおしい。

それに、自然災害のリスク、欠陥住宅のリスク、近所の治安の悪化や変な隣人に遭遇するリスク、マンションであれば、管理組合がうまく運営できないリスクなど、顕在化すると大事になるリスクは尽きないと思うのだ。所有に伴うメンテナンスも面倒だし、飽きがきて、すぐに違う場所に住みたくなるかもしれない。

もちろん、お金が有り余っていれば、投資先のポートフォリオのひとつとして所有するのは、アリだと思うのだが…。

家族はいてもいい。家族が一番大事!というならそれでいいと思う。ただ、「捨ててはいけない」「捨てたら悪人だ」という思い込みは、間違っている(p171)。
家族の血のつながりを重要視しすぎてはいけない(p184)。

私は、家族や親戚を、とても大切に思っている。でも、大切に思うあまり、期待値が高くなってしまうせいか、お互いに介入しすぎたり、依存しすぎたりすると、うまくいかないと思っている。

子どもの頃や若い頃は、よく、家族が自分の考えを理解してくれないことに、腹が立ったり、悲しんだりした。でも、大学生になって独り暮らしをし、社会人になって色々な人と接するようになって、次第に分かってきた。人間は一人ひとり違うのだ。完全に分かり合えなくて、当然なのだ。

家族や親戚は、助け合って、支え合って生きていくのが理想だと思うが、近しい間にも、スペースが必要で、適度な距離感でつきあうのがよい、と感じている。

状況を受け入れるということは、怒りのコントロールにも役立つ。…切り替えて、最適解を考えるようにしよう。大事なのは「はい次!」の精神だ。すぎる時間は、待ってくれない。怒るエネルギーを浪費する時間より、次の対処策の実行に時間を使ってほしい。(p212-213)
シェアリングエコノミーのさらなる進化は、所有の価値をもっともっと下げていく。…シェアの市場に置き換えられない、行動力に裏打ちされた経験値が高値で取引される社会になっていくだろう(p236-237)。
人生におけるシェアは、彼氏の分は2割でちょうどよいと考えているそうだ。…現代女子のリアルだと思う。…結局のところ、ひとつのものにマインドシェアの多くを、奪われたくないのだ(p246-247)。

現代女子が恋人に割くシェア(時間や労力のことだろうか)が、たった2割しかない、というのには、ちょっとびっくりした。でも、これも、好きな人と適度な距離感を保つ、ということで、上記の家族との付き合い方の記述とも共通しているのかなと思う。

思い出の品を捨てられないという人は結局、ヒマなのだ(p258)。
やりたいことに全力を尽くせていないから、思い出などに思考が奪われる。…思い出に浸っている時間は、もっと面白くて幸せな時間を作り出す機会を目減りされている(p259)。

思い出に浸っている時間が、新しいことをする時間を目減りさせているというのは、確かにそうかもしれない。

でも、私にとっては、思い出はとても大事だ。たくさんの思い出を日記や旅ノートに残している。時に思い出を見返して、幸せな気分に浸るのは単純に嬉しいし、昔の自分を見返すことで、自分の今や今後を考える糧にもなる。見返したい思い出は、自分の好きなことの宝庫だ。思い出をおさらいすることで、次に自分がやりたいことに気づくことができるかもしれない。だから、悪いことばかりじゃないと思う。

とはいえ、確かに、人生が充実していて楽しいときには、そういった思い出に浸る時間などなく、全力で、目の前の楽しいことに集中して、目一杯楽しんでいる。

思い出には過度に依存せず、今後のことに力や集中力を注ぎつつ、でも、思い出したいときにいつでも思い出せるよう、大切なものは捨てずにとっておこうと思う。

何年も時間をかけないと得られないスキルなんて、世の中にはほとんど存在しない。要は、苦労した上の世代が「時間をかけないと上達しない」というポジショントークで、既得権を守るための勝手な“修業”なのだ(p267)。
あらゆるものを捨てている僕が、最後まで絶対に捨てないものは「時間」だ(p279)。
面倒なルーティンも習慣化できれば続けられる。…特に健康管理を目的とした習慣は欠かさないように気をつけている。多動的人生を支えるには、鍛えられた健康な身体が第一だ(p296)。

時間と健康が大切、ということには、ただただ、共感した。特に、アラフィフにもなり、折り返しの、2周目の人生に突入する年頃になると、時間と健康ほど大切なものはないと痛感する。

おわりに

上記は、この本のエッセンスのあくまでごく一部にすぎず、他にも沢山の「捨てる」べきものについてのメッセージが満載だ。読む人によっても、ライフステージの変化によっても、刺さる箇所は違ってくるのではないかと思う。

こんなにたくさん、捨てて良いものがあったんだ! 私もあれを捨ててみよう、などと考えながら読み進めると、読後に、スッと、肩の荷がおりるような、デトックスできたような、爽快な気分になる。そして、しがらみや思い込みを捨てて、身軽になって心機一転、新たな自分として出直してみようか、という前向きな気持ちになる。

さらに、以前ご紹介した『多動力』と併せて読むのもおすすめ。多動的に、自分のやりたいことを追求するためには、短い人生の限られた資源を、大切なものに集中させて、不要なものを見極めて捨てていくのがよい、ということが、一層よくわかる。

こういったメッセージを、『多動力』『捨て本』という、キャッチーなタイトルで世間に問いかけた堀江氏の感性に脱帽だ。

ご参考になれば幸いです!

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サザヱ
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