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短歌

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「短歌人」に掲載された短歌を集めていきます。国東杏蜜名義。
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記事一覧

たんか 202104

たんか 202104

わたしにも人の心があったと言う風の噂で泣いてしまった

けぶる森、湖のボート、バルテュスのポーズで眠っている女の子

てきとうにうそついた朝うそだってしってきいてる顔おもしろい

八ヶ月ぶりですよという美容師の手にはさみありよい人である

口に入れすぐに継ぎ目をさがしてる飴を割るとき祈る太陽

こわい できないことが消えてくだんだんできそうな気がしてくる

(「短歌人」2021年4月号 国東杏蜜)

たんか 202103

窓の光に猫が寝てるをまたいで開ける風、まだすこし花粉が匂う

映画館 予告でへとへとになっているポップコーンは誰かにあげる

白い店今も買いたい絵がかかる壁のストライプばかり思い出す

歯磨き中鏡の中で笑っているのはイマジナリー姉さん陽気です

嬉しいな、すてきなたのしい歌集を買ったでもきっとどこかで人が死ぬ

歌集ってミステリの次くらい人が死ぬしかもほんとの死だって 噂

           

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たんか 202102

たんか 202102

ネヴァーモアとカラスは言うが信じないネヴァーモア耳を塞いで眠る

痛みは槍 力点がやけに遠くあり崩れつつある高速道路

銀木犀が泣いてわんわんでかくなりついには星を降らせる話

季節が去るそのおとがとてもいやだからいいこにしてるがまんができる

立居全て祖母に似ており葬式に出ると周囲の時間が戻る

昼寝する猫を枕に目をつぶるゆるやかな上下、いずれくるパンチ

(「短歌人」2021年2月号 国東杏蜜

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たんか 202101

たんか 202101

大破してまだ息がある鹿があり銃がなく弱い両手がある

死を見張るわたしの両眼を怖がって暴れる鹿の痛みが垂れる

パジャマのまま黒い群衆に紛れ込む白い窪みに沈香がにおう

ひがさでもみぎしたをむけふりはらうぱらぱらおちるひかりのしずく

やわらかい心がなくてわからない優しい言葉もみすみす捨てる

なぜおまえうまれてきたと声がする答えるなそれは質問じゃない

(「短歌人」2021年1月号 国東杏蜜)

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たんか 202011

たんか 202011

人形の背骨になる日の左腕 木で言えば楓、実で言えば栗

俺のこと歌にするのと聞く人にできないよってとりあえず嘘

かけがえのなさをもたずにうまれてきた人間でいて竹の抱擁

きみおれの木嶋佳苗になってくれって笑えるけれど笑ってていい?

人生は空中ブランコ手が滑るネットがないのよく見ていてね

(「短歌人」2020年11月号 国東杏蜜)

たんか 202010

たんか 202010

たすけてって言ったらたすかる? たすかるなら言う? タッパーウェア

みんなして人差し指を負傷して土嚢の口をくくったしるし

視界から消えることしかできることないような気がして靴を履く

強い雨、、、 強い祈りを観測する湖に降るすべての命

ベッドの東そこがいちばん死に近い痛みの形は生への土下座

(短歌人2020年10月号 国東杏蜜)

たんか 202009

お嬢さん、おはいんなさい出れないよ回転が複雑になっていく

セロテープの台でむちゃくちゃ殴ってる これは夢です あれは星です

愛なんていずれ忘れるものだけどほんとのことにも証明はいる

赤緑金金まだらまばたきでもうわからない花火の順番

運転が出来なくなって空は青、白線は格子、人間はいない

(短歌人2020年9月号 国東杏蜜)

たんか 202008

たんか 202008

人生の最初の方でこけたままだれかが台車を押してくれてる

明け方に発作があるとわかってて眠る胆力を見せつけてやる

麻酔から覚めたとたんに嘘をつくうわごとを言ったかは、知らない

筋肉とつよいこころが必要です月を見上げて自転車を漕ぐ

生き残る努力はしました許してね、と言えるくらいに頑張るやくそく

(短歌人2020年8月号 国東杏蜜)

たんか 202006

たんか 202006

ねえなあに たばこをとんとんするのはなあに ねえそれはなんのおまじない

だめですよ毎晩泣いても偉くなるお友達がもう増えないらしい

人は愛で倒れたりはしないんだって爪の間が蕗の皮の黒

世界中の恋人たちの声がする猫の目が四つどの窓にもある

ゆるしてのいみならわかるぜったいにうまれてこない つぎは ゆるして

(短歌人2020年6月号 国東杏蜜)

たんか 202003

たんか 202003

騙されて笑ってるようじゃ人間を信じたことにならないらしい

優しさが足枷になるという人の鎖の断面をよく見てみる

いきにしたはなしをかえりにまきもどす景色をたよりにおもいだしてく

ミシュランマンになりたくないという人にダウンを買った七年かかった

みんなやさしいそのやさしさの源泉をしずかにゆびで塞いでいたい

(短歌人2020年3月号 国東杏蜜)

たんか 201912

たんか 201912

消えたいの意味はうっかりかかわったひとのうまれの蒔き直し

夏の海はひるをすぎるとすこしねる今なら背からかるくえぐれる

いいロスジェネは死んだロスジェネわたしは素敵な生きている負債

橋から見るおおきな川の透明の水の底から青い断崖

だからね、歌人の胸には傷がある。立ち上がる少年を見ている

(短歌人2019年12月号 国東杏蜜)

たんか 201911

たんか 201911

よく澄んだ目をもつことばを知るあなた見てきて欲しい湖がある

とおいとおい憧れの袖にすこしだけ触れてみたからこの島は沈む

なんですぐ歌を配るのあなたアーティストなのJASRACはいいの

しおりにどうぞとたこ焼きの割引券をもらってはごちそうさま

なんにでも自分を重ねて涙するならなかった・なれなかった・なる もの

(短歌人2019年11月号 国東杏蜜)

たんか 201910

かえりたい線路の長さが違うみたいかたんことんかたんことん

悲しみは針の穴より小さくてするどく命を縫いつけていく

人殺しの話ふられて天気図が気になってくるよく似た午後

きつつきはきをつついて虫をくうきのなかの虫がうまいときいて

怖くなった 急に名前を呼べなくなって蛍は光をためている

(短歌人2019年10月号 国東杏蜜)

新しいきぬぎぬのうた

新しいきぬぎぬのうた

今度こそ犬になるのが夢だったので夢で犬になったので 見て

ちぎれんばかりに尻尾をふる 透明のそれ ぼく それ ぼくだから

時速四〇キロまで出るらしい本気で逃げてみてくれる? かみころす

楽しいね芝生楽しい芝生楽しいことしかないうんこしたい

雨だというどこにもいけないというぼくは信じないこの眉を見ろ

歯磨きはきらいです歯磨きガムはときどき中身が空洞ひとが住んでる

あなたには花柄よりもチェ

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