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源氏物語Su-分講座『全体像』テキスト版

YouTube動画『源氏物語Su-分講座 全体像』

この記事は、YouTube動画『源氏物語Su-分講座 シリーズNo.1 全体像』の内容を、文章&画像でまとめたものです。動画でなくテキストで読みたい方は、こちらをどうぞ。

「源氏物語」を恋愛もの、と見るのは単純すぎる

絶世の美男子・光源氏が、女性遍歴を繰り広げる物語…と解説する本・テレビ番組がありますが、それは最初の数巻だけのあらすじです。全54巻、そのあとは、いったい何が語られているのでしょう?

前置き:そもそも「源氏物語」とは?

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源氏物語は今からちょうど千年ほど前、紫式部という女性によって書かれた小説です。平安時代の都や宮廷が描かれているので、「歴史もの」と錯覚しそうになりますが、完全なるフィクションです。時おり、実在した人の名前が登場しますが、それはリアリティを追求した作者のテクニックであって、ストーリーは史実とは全く異なります

本題:源氏物語をザッと眺めてみる

光源氏と女性との恋が主題の巻に、女性マークをつけてみます。すると…。

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以下のとおり、冒頭に集中していることがわかります。

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実は源氏物語、当初からこの順序だったとは限らないのです。どの巻から書かれリリースされたのか、作者はどんな順序に配列したのか、それらはもはや、まったく不明なのです。

しかし現代の読者は、上記の順に読んでしまうため、「光源氏が毎巻ちがう女と恋をする話」と、強く印象づけられてしまいます。実際は政治や派閥抗争、出世争いなども書かれているのですが、現代人には理解しにくい描写であり、ラブばかりが目立つせいでもあります。

メインストーリーとサイド話を分けてみよう!

現代の順序では、話の流れに割り込む形で、「番外編」的な小話が挿入されており、ストーリーラインがとても分かりにくいのです。ですから話の本筋と、そうでない「ボーナストラック」的な巻を分離して見てみましょう。

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この全54巻から、本筋と関わりが薄い巻を下方へ移してみます。

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このとおり、分離できました。お分かりでしょうか。全54巻の半分に近い23もの巻が、実は「番外編」なのです。

※「花宴」は本筋では、と思う方がいるかもしれませんね。が、この巻、「光源氏がある女性と知り合い、いろいろあったのち一定の落着を迎える」という、「夕顔」や「末摘花」などと同じ構造になっています。また光源氏の須磨流離は、「貴種流離」自体が作者の構想だったのであり、その理由は正直「何でもよかった」訳なので、除外しました。

話を、まとまりごとに分けてみる

メインとサイドに分かれた巻々を、さらに整理してみましょう。

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各巻の内容を見ていくと、一定のまとまりがあちこちに見えてきます。それを枠線で囲むと、こんなに見やすくなりました!

※この「3部構成」や「玉鬘10帖」は、砂崎の発明でも独断でもありません。源氏学で定着している見解です。

今回はメインストーリーだけに注目!

サイド話も捨てがたい面白さではありますが、源氏物語の全体像を知るには邪魔ですので、今回は消えてもらいます。…以下のように、本筋である「第1部」「第2部」「第3部」だけを見てください。

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第1部は、光源氏が誕生し、挫折して須磨へ流離し、そのあと都へ返り咲いて成功するまでを描いています。政敵との争いあり、友情あり、最後の対決ありの痛快エンタメです。

第2部は、一転、陰影の濃い話になります。光源氏、そと見には順風満帆なのですが、内心は孤独と苦悩にさいなまれ、老いも痛感します。そして出家を決意するところで、第2部の幕が下ります。

第3部は、光源氏亡きあとの世界です。その子・孫たちのエゴが交錯する、重苦しい恋愛ドラマです。絶望に満ちた雰囲気で、最後に救済された…ような、されなかったような、やるせないエンディングで締めくくられます。

つまり、源氏物語全体の構造とは

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楽しいエンタメだった第1部。それが第2部では、人の本質を見つめる心理ドラマに転じ、第3部では、宗教的な主題へ踏み込んでいきます。文学作品として、各段な深化を遂げているのです。作者の、クリエイターとしての成長だったのかもしれません。

有名な「若紫」巻は、どこ?

以上、源氏物語全体の流れを追ってきました。それでは最も有名な巻、「若紫」がどこに位置するのか、見てみましょう。光源氏と、生涯の妻である紫上との、運命的な出会いの巻です。

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このとおり、第1部の2巻めにあります。

現行の巻の並びでは、1巻「桐壺」で光源氏が誕生したあと、「帚木」「空蝉」「夕顔」と続き、5巻めになってやっと「若紫」です。メインヒロインがようやく登場、という印象を受けます。しかしメインストーリーだけを追ってみると、「若紫」は2巻め。ドラマがいきなり動き出すという、スピーディ展開になっているのです。

教科書によく載ってる「夕顔」巻は?

はづき十五夜。中秋の名月を背景に、白い花のような女性と光源氏との、はかない恋を描く「夕顔」。教科書にもよく採用される巻です。源氏物語全体から俯瞰すると、どのように位置づけられる話なのでしょうか?

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「夕顔」は、サイドストーリーの3巻めです。実は、「無くても本筋には影響ない巻」なのです…。

まとめ

それでは、おさらいしましょう。

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源氏物語で、いわゆる「光源氏の女性遍歴」な巻は、ほぼサイドストーリー。主な話は第1部・第2部・第3部の3つに分かれ、光源氏は第2部のあと死去します。

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そして第1部から第2部、第3部へと進むにつれ、物語の内容は深みを増し、文学作品としての純度が高まっていくのです。

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以上、源氏物語Su-分講座、今回は全体像のお話でした。次回は第1部をまとめたいと思います。


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