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源氏物語 若紫「小柴垣の垣間見」文法解説テキスト版②

この記事は、YouTube動画『源氏物語Su-分講座 文法編No.2 若紫より小柴垣の垣間見②』の内容を、文章&画像でまとめたものです。動画でなくテキストで読みたい方は、こちらをどうぞ。

そもそも「小柴垣の垣間見」とは

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光源氏が小さな柴製の垣根を隙見してみました。平安文学の常識では、中に美女がいて恋が始まる場面です。しかし、住人は尼さんと子供でした。読者にいわば、肩透かしを食わせた作者。さて次は何が起こるでしょうか。

「小柴垣の垣間見」あらすじを知りたい方は

あらすじをさっくり知りたいという方は、こちらの動画をどうぞ。原文の面白さを味わうためにも、筋を押さえておくことをお勧めします。

もう一つ、注記の説明

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以下の動画内で、①、②という記号を使用しています。①は文法知識、②は平安文化の情報を意味します。①と②、両方が嚙み合うと、原文が各段に面白くなりますので、どちらも意識するようにしてください。

本文:「雀の子を犬君が…」

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「つる」が2か所出てきます。いずれも完了の助動詞「つ」の連体形です。「完了」は、現代の標準語では表現しにくい概念なのですが、【そこで終わってしまった】ニュアンスです。なのでペットの雀を犬君という子が逃がしてしまって、もう取り返しがつかない、という口惜しさが滲みます。

「たり」は存続、続いていたというニュアンスです。雀は、籠の中にとじこめて「いる」状態だった、という意味ですね。

文末の「り」は、「つ」と違い【今も存続している】ニュアンスがあります。まさに今「思っている」「口惜しがっている」という感じです。

このゐたる大人、…

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女児の涙の訴えを聞いた女性が、「いつもおっちょこちょいの犬君が、またそんな失敗をして、叱られるとは、不愉快ですこと」と相づちを打ちます。
「さいなむ」は「叱る」という意味、受身の「る」がついて「叱られる」という意味になっています。「心づきなし」は「自分の心にそぐわない、不愉快だ」の意。係り結びになることで、話し手の感情(つまり不愉快さ)がヴィヴィッドに表現されています。

いづ方へか…

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こちらの係り結びも、やはり感情があふれ出た結果ですね。「雀はどこへ行きましたか」ではなく、「雀はいったい、どこへ行ってしまったのでございましょう?!」という感じになっているのは、係り結びのおかげです。

「まかる」は「身分高い方から遠ざかる」というニュアンスです。「下がらせていただきます」と訳せます。「雀はいったい、どちらへ下がらせていただいたものでございましょう?」という文章、現代人には違和感あるかもしれませんね。しかし平安人には、今目の前にいるご主君が一番、そのいらっしゃる場所が最も高き所です。ですから「雀が逃げた」という現象も、自然とこのような話し方になるのです。

いとをかしう、やうやう…

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「もこそ」、これは「何かイヤなことが起こりそう」という含意があります。「だんだん馴れて可愛くなってきていた雀、カラスなぞに見つかってしまわないでしょうか(食われてしまうかも…)」というニュアンスです。

とて、立ちて…

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少女の訴えに対して、上のように「困ったものですねえ。雀はどこへ行ったでしょう」云々と返事していた女性が、言い終えて立ちあがり、出ていきます。おそらく雀を捜しにいったか様子を見にいった、というところでしょう。

この女性がまたまた、なかなかの美女です。「なめり」は断定を避けて、ぼやかして言っている感じです。要するに、垣間見(隙見)なので、よく見えていないのです。

少納言の乳母とぞ…

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この立っていった女性に向かって、「少納言の乳母」と呼びかけた人がいます。ここにも「めり」がついているのは、断定を嫌う平安人らしい婉曲語法です。「後見」というのは後見人、平安時代には乳母も含みます。
女児に向かって「そうですか、雀が、それは大変でございますねえ」と正面から受け止めていた様子、加えて「少納言の乳母」と呼ばれたこと、以上から類推して、この女性は女児の乳母なのだな、と推量したという意味です。

まとめ:女児のすばらしい資質が見えてくる

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今日の部分は、女児と乳母(少納言)との会話がほとんどでした。女の子が「ペットの雀が逃げちゃった」と泣いて残念がり、乳母がそれをしっかり受け止めてあげていました。
この会話から漂う雰囲気は「良家!」です。前回の部分でも、尼君と女の子の、いかにも高貴な人らしい様子が描かれていましたが、今回メインの「少納言」という女性も品がよい。女の子(のちのメインヒロイン・紫上)の、「よいお家で大事に育てられている感じ」が、お分かりいただけたかと思います。

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それでは今回はここまでです。次回をお楽しみに!

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