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島移住で知る冬の風物詩「いものつるタワー」で感じる季節の移ろいと地域の文化
2021年7月に東京から小豆島の小さな町、土庄町へ移住した私の島暮らしライフは早くも7ヶ月が過ぎ、現在、島で迎える初めての冬を絶賛満喫中。
年末年始から1月中旬までの小豆島の最高気温は5℃以下、最低気温は大抵マイナスと、結構な寒さ。
「オリーブ栽培が盛んな小豆島の冬はあったかいだろう」と勝手に期待していた私のイメージは、早々に打ち砕かれ、灯油ストーブやもふもふの布団カバーを買い込んで新年を迎える運びとなった。
この年の瀬に、コロナの業者さんがフェリーで小豆島までわざわざ来てくださりました。感謝🥺✨
— SAYULOG@ちいさな学びをみんなとシェアするYouTuber (@sayulogofficial) December 30, 2021
素敵なご夫妻だったので、帰りに島の柑橘類をプレゼント。@okbdarts @weltail714 @ken39_0708 @shironekoAudiA3 @tairon_setouchi
みなさま、お騒がせしました🙏
ストーブ問題、無事解決しました! https://t.co/YFoI4WmbAq pic.twitter.com/MUMY9HqTPt
大事なことなので、もう一度お伝えしておく。
瀬戸内の冬は、そこそこ寒い。
立地によっては、キッチンに置かれたオリーブオイルが凍るほどに寒い(土庄町地域おこし協力隊オガワさん談)のだから、雪は降らずともその寒さは相当なものである。
▼海外から日本へ帰国、東京から島暮らし、私が小豆島へ移住した理由
穏やかな瀬戸内海に囲まれた小豆島。
海と山、自然溢れる風景を存分に楽しみながら、我が家の大家さんや島の人たちと日々交流を重ね、こんなご時世でもこうして楽しく心穏やかに健康に過ごせているのだから、島ならではの不自由さなどさほど問題にならないほど、個人的には「地方移住の選択は間違いなかった」という思いしかない。
さて。今回は、地元に住まないとなかなかわからない(もしかすると島民であっても他の地区の方もご存知ないかもしれない)、季節の風物詩エピソードに触れながら、ここ、土庄町の四海地区、伊喜末集落に根付いた文化や暮らしについてみなさんとシェアしたい。
冬の風物詩、出現!芋づるタワー(いものつるタワー)
毎年11月のいも掘りシーズンになると、小豆島の西側、土庄町の伊喜末という集落に不思議な物体が出現する。
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さつまいもの産地、伊喜末で毎年11月に開催される
いも掘りで出た芋づるを積んで塔のようにするイベント
子どもたちは焼いもに夢中!
その名も「芋づるタワー(いものつるタワー)」。
ここ、伊喜末だけで見られる「冬の風物詩」だ。
伊喜末は、先日の「小豆島七福神めぐり」の記事でもご紹介した「伊喜末八幡神社」のあるエリア。
この「芋づるタワー」、40〜60代くらいの諸先輩方が子どもの頃は、毎年この地区であちこちに見られたという。
伊喜末の畑では、毎年11月初旬のさつまいものいも掘りシーズンになると、各家庭の畑に1基ずつ、この「芋づるタワー」がミステリーサークルのようにあちこちにポコポコと出現していた、というのだから、不思議な光景である。
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※なお、塔の数え単位は「1基」「1本」「1塔」ということも併せてシェアしておく。
公園のベンチ、モニュメント、神社の鳥居、歩道橋、信号機、タワー、観覧車、ダム、原子力発電所、そしてピラミッドにいたるまで、これらにはある共通点があります。それは何でしょうか?
答えは、すべて同じ助数詞「基」で数えるということです。
(中略)
実は、この「基」という漢字には、建物の土台や物事の礎となる物という意味があり、簡単には動かされない物を表します。そこから、人間ひとりの手では動かすことができない施設や設置物などを数えるようになりました。
普段、話し言葉ではあまり使わない数え方ですが、ニュースや街中でしばしば目にします。
(目からウロコ!数え方のナゾ)
「いものつる」からわかる、伊喜末の文化
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地元の子ども達とみんなで掘ったさつまいもを焼きいもに。
ほっくほくでとってもおいしかった!
伊喜末は昔から砂地と呼ばれる土質で、さつまいもを育てるにはとても良質な土だと言われ、専業・兼業農家を営む家庭が多かったそう。そんなこの地区に農耕機械がなかった時代から畑で大活躍していたのが、牛である。
ところで、私が移住した小豆島を上から見ると牛のかたちに見えることで有名なことを、みなさんはご存知だろうか。
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島の人たちは、島内の場所を説明する際に
「牛の頭の方」「牛のお腹のあたり」などの表現することがある。
「牛のかたちに見えるから」だったのか、はたまた単なる偶然なのかはわからないが、小豆島は昔から官牛放牧の地(国営の牛の放牧がされていたところ)として知られるほど、昔から牛とはご縁が深い場所。
島内の人たちがその昔、各家庭で牛を育てていたのは、食肉用や乳牛用として育てるだけではない。昔は、田畑を耕すときに牛に器具を背負わせ、農業の貴重な助っ人として、人々の暮らしを助けてくれていたそうだ。そうした歴史があるからか、この島の人、特に牛と縁深いエリアで育った人々にとっては、牛はよく働き、そして、家庭にお金をもたらしてくれる貴重な存在だったという。
小豆島内でも特にここ、伊喜末を含む四海エリア周辺の家庭では、自宅に牛を飼っている家庭がたくさんあったらしい。
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これを牛に背負わせて田畑を耕していたという
(樋内さん宅・物置にて)
しかし、近代化が進むにつれ、伊喜末も他の多くの地域と同じように、農業から他の仕事へ徐々にシフトしていく家庭が増えていく中、本格的に農業を営む家庭も減ってゆき、同時に、田畑を耕してきた牛の役割も農業の機械化により徐々に衰退。
いつの間にか、この地の家庭で牛を飼育する文化も消えていき、自宅横に構えていた牛小屋は、徐々に車庫へとその姿を変えていったそう。
伊喜末が地元の前田さんご協力のもと、今となってはほぼ見られなくなった当時の牛小屋の様子が残る樋本さんのお宅でお話を伺うことができた。
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資料提供などご協力くださった伊喜末の前田さん(右)
ご自宅の様子を紹介してくださった樋本さん(左)
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牛小屋だった建物は、現在では物置として使われている
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左右それぞれで牛を飼育していたという
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シンプルな取り外し式の小屋
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牛小屋に閉じ込められるか瀬戸際の私(笑)
多くの家庭で牛を飼育されていた伊喜末。
前述の通り、さつまいもの産地であるため、いも掘りシーズンになれば山ほど芋づるが獲れる。
実は芋づるは、牛にとって秋から冬にかけてのみ食べられる季節物の飼料。人間にとっての「秋の秋刀魚」「冬の寒鰤」的な立ち位置の食材である。
この芋づるを乾燥させ、牛の飼料にするために塔のように積み上げたことが、芋づるタワーの始まりだったようだ。
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<出典>『小豆島四季』宇民成喜 写真集
画像提供:マルシマ印刷株式会社
復活!芋づるタワーのある風景
一時は町から消えてしまった冬の風物詩「芋づるタワー」だったが、15年ほど前に地元の人々から声が上がり、いも掘り+焼きいも+芋づるタワーづくりを地域の人々みんなで楽しむ土庄町のイベントとして復活した。
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ご近所の畑からもたくさんの芋づるが届く
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仕事帰りでここを通るたび
クリスマスツリー代わりに眺めて冬を感じた年末でした(笑)
さつまいもの葉が恋しい”タイワナイズ”された私
最後にとってもとってもおまけなエピソード。
6年ほど私が住んだ「第2の故郷」である台湾では、日常的に食卓に「地瓜葉:さつまいもの葉」が並ぶ。
下記は、前職のオフィス付近にあり、たまにお世話になっていたベジタリアン向けのお弁当屋さん(台湾ではベジタリアン料理のお店に「素食(sùshí)」の看板が出ている)で買ってきたランチ。
右下、緑色の炒めた葉っぱが「さつまいもの葉の炒め物」である。
台湾では、家庭料理はもちろん、こうしたお弁当屋さんのスタンダードおかずとしてもさつまいもの葉は定番。
さらに余談だが、台湾で写真撮影をするときの掛け声は
「はい、チーズ!」は
撮影者:「地瓜~?(さつまいもの〜?)」
全員: 「葉〜!(葉っぱ〜!)」
である。
「いぇー!」という発音で笑顔になりやすいことから、この掛け声なのだが、なぜさつまいもなのかは未だ謎のままだ。
さつまいものシーズンが過ぎてしまったのが残念だが、来シーズンどこかで分けていただくことができたなら、伊喜末のさつまいもの葉を使って、台湾料理「炒地瓜葉(さつまいもの葉炒め)」を作ってみたいと密かに思っている私である。
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■ Special Thanks(敬称略)
前田 満照(陽当の里 伊喜末)
- 陽当の里 伊喜末
樋本 ハルコ
マルシマ印刷株式会社
- マルシマ印刷株式会社
株式会社パオ・フィール
- 株式会社パオ・フィール
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・YouTubeではお話できなかったことや、企画、撮影の裏側
・これまで住んでいた台湾、オーストラリア、トルコなど海外で気づいたこと
・東京出身の私が移住した小豆島のこと
・個人の活動と並行して携わらせていただいている地域おこし協力隊のこと
・30代の私が直面している親の老後や介護のこと
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