過去の話
ポエムです。
会社は男の人のものだと思っていた。仕事を最後決めるのは男の人で、それによって上に立つようになっていくのは男の人で、男の人同士の関係で物事は決まっていって、それは邪魔しないほうが身のためだと思っていた。そういうことは学校のクラスやサークルで学んだ。
仕事はできるだけ責任が少ない、あるいは2番目以降あたりのものを率先して選んでいた。そうじゃないと、相手方の男の人が強く出てきて、女じゃ話にならんと言った時、自分だけでは収拾がつかないからだ。社内で男の人がふてくされるのを見て自分のせいではと思ってしまうからだ。それは年の離れた人と仕事上で出会って学んだ。
人生の7分の5は仕事に捧げないと生き抜けない世の中で仕事が男の人のものなら、世界は7分の5は男の人のものだった。私はその利のおこぼれにあずかって生きているにすぎない。遊んでいてもスキップしていても誰にも構われない存在だった。
家は男の人のものだった。戸籍の主は男の人で、女が家を買うとすごい(あるいは終わり)と言われ、娘は墓に入る人数にはカウントされていない。女には生きる場所も死後行く場所も無かった。
身体は男の人のものだった。男の身体の方が頑丈で脆い。女の身体の方がしなやかで強くて男の人から見て美しくなければならない。女の自分の身体への評価はそれ自体では無意味だった。女には所有する身体が無かった。
主体も希望も持つだけ無駄、敵わないし叶わないから。それが私から見た世界だった。
女から産まれる子供は男か女になるようにされて、どちらであったとしても、本人にとって一番良い振る舞いを、女も男も指南できなかった。
だとすれば正解は何だったのか、誰にも言えなかった。すべて過去の話。
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