波
圧迫されています。
ひどく、ひどく圧迫されています。
身も心ももう押しつぶされて消えてしまいそうです。
圧迫されています。
ひどく、ひどく頭を蝕むように、じわじわと脳細胞を圧迫していきます。
聞き飽きました。最初は良かったです。
ですがもう聞き飽きました。
機械音声の敬語ほど気持ちの悪いものはありません。
ミームと化したこの情景も、そろそろみんな聞き飽きた頃じゃないか。
気持ちの悪い。気持ちの悪い。
執着などそんなもの捨ててしまえ、捨ててしまえ、捨ててしまえば良いものを。
そんな言葉が隣に立っている少年のイヤホンから漏れ出て聞こえてくる。
迷惑だけれど、不快ではなかった。
最終電車に乗り込んだ僕は
虚ろになりながらただじっと
満員の幽霊達をじっと観察して
じっと観察して初めて、過去というものを肉眼で確認するのでした。
そうして過去は、1駅、1駅と終着駅へ近づくほどに数を減らしていき、残った何かは静かにゆらゆらと、ゆらゆらと揺られ流されていきました。
波は穏やかで、終着駅に相応しい静けさと哀愁の永遠を、引き立て続けているのです。
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