1216頁、読了
タイトルだけで、「ああ、あの本ね」とわかる方もいらっしゃるでしょう。1216頁ある大著、岸政彦編『東京の生活史』を読了しました。
発売後、割とすぐ入手したのですが、ずっと棚に置かれたままでした。これではいけないと一念発起し、今年の元日から、一日に一人分の語りを読む、と決めて、毎晩大体、寝る前に読んできました。5月30日で150人目の方の語りを読み終え、31日に、岸さんのあとがきを読み終えました。
東京にいる、いた、150人の語りを、150人の聞き手が聞き、書き起こしたものです。本に載っているのは語られた言葉のほんの一部で、語り手についてたくさんのことがわかるわけでもありません。語り手によって、すごく情報量が多い方もいますし、そうでもない方もいます。基本的に聞き手と語り手は知人同士なので、知ってることとして言葉になっておらず、わかりにくいと感じる時もあります。東京の話より、生まれ故郷や、現在の東京ではない居住地についての話が多い方もいます。何にせよ、テキストとして残されているのは、その方の人生のほんの一部です。
いろんな方が語っています。でも決して、その方々が東京にゆかりのある人の平均でも、代表でもありません。不思議と共通項が見られる語り手もいたりします。習い事や仕事などで音楽に関わってる方が多いような気がしました。文化的な傾向のある方が多いような気もします。
私と(間に何人かおいても)つながりそうな方はおられませんでした。だから、私が普通に暮らしていれば、出会わない方々の、聞けない話ばかりです。共感できるなと思うのはやはり、自分と趣味などが似ている方だったりしました。私は触れないであろう世界の話を語っている方もいました。応援したくなる方もいました。共感とかそういう話ではなくて、とても衝撃を受けた語りもありました。
何かの折に、ふいにこの本で読んだ言葉を思い出すでしょう。そして、しばらくその言葉について思いを巡らせるでしょう。そんなことが起こる読書体験ができて、よかったと思います。