映画『八犬伝』は3度美味しい
小学生の頃、毎日放課後になると夢中で見ていたNHK『新八犬伝』が映画『八犬伝』として蘇った。
あの人形劇が実写版でどのように描かれているのか、ぜひ見てみたい。
①子供の頃夢中になった人形劇『新八犬伝』
NHKで1973年4月から1975年3月まで全464話放送された『新八犬伝』。
子供の頃この人形劇が毎日の楽しみだった。
小学校5年生から6年生の卒業まで、毎日夕方の18:30〜18:45テレビの前で釘付けだった。
何がそんなに面白かったのか?
話しの内容もさることながら、これまでの「人形劇」のイメージがガラッと変わってしまった。
人形作家辻村ジュサブローさん(当時40歳)の人形の動きやその表情に魅惑されていたのかもしれない。
②滝沢馬琴『南総里見八犬伝』あらすじ
安房の国館山城主、里見義実はひとり娘伏姫が可愛いがっていた飼い犬の八房に、敵の大将の首をとれば伏姫の婿にしてやると約束してしまう。
言葉どおり敵の首をとった八房は伏姫をさらって逃亡してしまった。
父義実は伏姫を取り返そうと追っ手を放ったが、銃弾が八房だけでなく伏姫をも貫いてしまい、伏姫が首にかけていた八つの珠が天に飛び散った。
後にこの八つの珠に描かれた仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌は8人の犬士として、里見家の宿敵玉梓が怨霊達と戦うことになる。
③映画『八犬伝』のおもしろさ
映画『八犬伝』では、
『南総里見八犬伝』の作者である滝沢馬琴(役所広司)の生涯と、物語としての『八犬伝』が並行して描かれるパラレルワールド方式で展開していく。
虚と現実の世界、1度に2つの世界が楽しめる。
28年にも及ぶ滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』の創作活動は苦渋に満ちたものだった。
所帯は持ったものの決して裕福ではなく、妻からはいつもののしられながら虚の世界を描き続ける馬琴。
そんな彼を励まし続ける親友の葛飾北斎(内野聖陽)。
馬琴は虚の世界を描く意味はいったい何なのかと自らに問い続ける。
『東海道四谷怪談』で人気を博した鶴屋南北(立川談春)との問答も見応えがある。
物語としての『南総里見八犬伝』もおもしろいが、その作者である滝沢馬琴の生涯と彼を取り巻く人物達がまるで歴史の教科書を見ているようでわくわくする。
④奇跡の物語
82歳で生涯を閉じた馬琴は晩年には視力を失っていた。
物語を書く意欲も無くなった彼の、文字どおり右腕になったのが、亡き息子の嫁お路(黒木華)だった。
何の役にも立たない嫁と思っていたお路が、馬琴の言葉を文字起こしすると勝手出る。
学がなく文字を読むことすらできなかったお路と共に、口述筆記で完成した『南総里見八犬伝』は奇跡の物語と言えるだろう。
⑤結局のところ
いろいろ書いてきたが、この映画を見たい!と思ったそもそものきっかけは、八犬士のひとり犬塚信乃役の渡邉圭佑が見たかったから。という極めてミーハーな理由が大きい。
そして次々と登場する8人の犬士がこれでもか!というくらいのイケメンのオンパレードで、映画の最後はお腹いっぱいになって、キャラメルポップコーンを残してしまったくらいだ。
物語のおもしろさ、馬琴の生涯、八犬士のイケメンぶり。
3度美味しい『八犬伝』。
オススメの映画だ。