鎌倉のコアンドル
鎌倉の小町通り。
路面が見えないくらいの人込み。
それを掻き分けて泳ぐように歩く。
目指しているのはコアンドルという銘店だ。かの川端康成や大沸次郎が愛して通い詰めたというフレンチビストロだった。
ホテルオークラのレシピを忠実に半世紀も守り続けているという。私の悪い癖で宿泊するホテルで朝食を食べ過ぎてしまって、ちょっとビーフシチューには届かない胃の容量だった。
頼んだのはストロガノフのセットで、最初に給仕されたコーンスープが絶妙だった。こういう基礎の上にアラカルトの醍醐味がある。
ちなみに醍醐というのはチーズを指しているという説もある。
メインのストロガノフが運ばれてきた。
この店のドミグラスソースは、2週間もの間煮込み続けられるという。
高緯度地方にあたるヨーロッパでは、暖炉が欠かせない。その火を絶やさぬように心掛けている。
その暖炉では、常にソースパンがかけられて煮込み続けている。毎日そこに硬いすね肉やら野菜やらを加えて、出来上がっていくのがこのソースの発祥だという。
そのソースで薄切りロースを煮込んだストロガノフ、充分に堪能した。
ちなみに私の得意料理のひとつがビーフシチューでもある。女性たちの胃袋をいくつもつかんでいる料理だ。ただしそのレシピはかなり邪道であり彼女らに種明かしをしたくない。