元旦の由布
今年の元旦は湯布院を走っていました。
もう道路には霜の降りた厳冬期でした。
まだ薄闇の中でエンジンを掛けて、温情をかけての暖機タイムを取ってシフトを1速に入れて発進しましたね。ホテルの朝食も取らずに。
それだけ由布岳にさす曙光を見たかったのです。
鶴見岳も橙色に染まってゆき、凍てついた荒れ野で撮影しているカメラマンがもうひとりいました。帰り道で、この氷点下のなか、冬季装備で踏み込んでいく登山家とすれ違いました。
湯布院は朝靄のなかで幽玄な気配の町でした。
かつて妻とよく訪れていて馴染みの店があるのです。ですがこの日では素通りしました。
想い出の封印は解きたくない、という頑なさで。
パンドラの箱の底に残っているのは、希望ではないかもしれないですから。