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故郷を走る 2 I 一陣の風のように
桜街道を駆けていく。
その先には故郷がある。
桜吹雪にはまだ遠いけど、この道は父が高校の学生寮へ送迎してくれる時に必ず通って、父が毎春の楽しみにしていた。その父は急逝してしまってもう30年になる。今ではもう私の方が年上になってしまった。
生後4ヶ月で母も喪っている。
母の享年は26歳なので、彼女はまるで自分の娘のような年頃に思える。
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新地中華街の味は格段に落ちてしまった。
それでいて以前より価格は肥大している。
最早、生粋の長崎人は町中華へ歩むしかない。それにはバイクという機動力は有難い。長崎市の端っこで、もう4年ぶりに本格的な皿うどんを堪能した。
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4年ぶりに友人に会う。
彼は癌のステージ4からの寛解を経て、今でも精力的にカメラマンとして活動していた。昔ながらの音楽談義をして、音楽が語れるバーを作りたい。
料理を作ってよと誘われた。
ともかくひとりでも多く会える機会を拾うように、陸地では慌ただしく時間が過ぎていく。
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山桜はもう散り始めている。
油絵の差し色のように、緑の山肌にぽつりぽつりと紅色が乗っている。その色が朧になっている瞬間がある。
ああ、はらはらと花弁が舞っている。
そこに一陣の風が立っているんだな。
風の中で疾駆しながら、そう考える。