![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173839852/rectangle_large_type_2_49432c09db162463a4c3de2bb8bce362.jpeg?width=1200)
恋猫と |シロクマ文芸部
特等席に陣取ったにゃ。
ここは人気のバーガースタンドという場所にゃ。
オープン席の脇にある、壁付けの棚の上で、荷物が置かれることもある場所にゃ。そこだと獲物を貰いやすいのにゃ。
いつもお肉の焼ける匂いと、ポテトとかが揚げられる匂いに満ちてにゃ、ねているだけでお腹がすくのにゃ。
でも冷めてくれにゃいと。
アツアツは苦手なのにゃ。
何やら訳ありの人間の男女がきたにゃ。
30年ぶりのデートだとゆってる。母猫の猫生の倍なのかにゃ。
道理でぇ。手慣れたようにもぎこちないようにも見えるにゃ。
どうも男の方がちょっと焦ってる。
猫にしてみりゃ、汗の臭いで看破できるにゃ。
女の方が上手にゃ。ちょっと体重を後ろの方に逸らしている。
しょうがないにゃ。
ここはひと皮脱いでみせるにゃ。
飛び出した。
ポテト狙いに見せて、アツアツの珈琲を狙ったにゃ。
「あちっち」と男が席から腰を浮かせ、そのスーツのズボンに三毛のように沁みが広がったにゃ。
女も一瞬は驚いたけど、濡れたティッシュを取り出して、その敏感な場所をぬぐった。そうして手を引いて、くすくすと笑いだしたにゃ。
「何よ。もう。いい年しちゃって、本気になって」
さあ。
その冷めたポテト。珈琲のしみたポテトをよこすのにゃ。
![](https://assets.st-note.com/img/1739096122-zExY0JDQdPerhIifL8uRB4aA.jpg?width=1200)