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恋猫と |シロクマ文芸部

 特等席に陣取ったにゃ。
 ここは人気のバーガースタンドという場所にゃ。
 オープン席の脇にある、壁付けの棚の上で、荷物が置かれることもある場所にゃ。そこだと獲物を貰いやすいのにゃ。
 いつもお肉の焼ける匂いと、ポテトとかが揚げられる匂いに満ちてにゃ、ねているだけでお腹がすくのにゃ。
 でも冷めてくれにゃいと。
 アツアツは苦手なのにゃ。

 何やら訳ありの人間の男女がきたにゃ。
 30年ぶりのデートだとゆってる。母猫の猫生の倍なのかにゃ。
 道理でぇ。手慣れたようにもぎこちないようにも見えるにゃ。
 どうも男の方がちょっと焦ってる。
 猫にしてみりゃ、汗の臭いで看破できるにゃ。
 女の方が上手にゃ。ちょっと体重を後ろの方に逸らしている。
 しょうがないにゃ。
 ここはひと皮脱いでみせるにゃ。

 飛び出した。
 ポテト狙いに見せて、アツアツの珈琲を狙ったにゃ。
「あちっち」と男が席から腰を浮かせ、そのスーツのズボンに三毛のように沁みが広がったにゃ。
 女も一瞬は驚いたけど、濡れたティッシュを取り出して、その敏感な場所をぬぐった。そうして手を引いて、くすくすと笑いだしたにゃ。
「何よ。もう。いい年しちゃって、本気になって」
 さあ。
 その冷めたポテト。珈琲のしみたポテトをよこすのにゃ。


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