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パスタを茹でる時に塩は必要か?問題の回答
空想科学料理は最適な料理の作り方を知識と想像で書いたレシピです。
いつもは実際に作っていないレシピなので分量の確定や不具合の検証はできていませんが、今回のは別です。
裏の取れたコラムなのでご安心ください。
ご興味のある方はぜひ実験をしていただき、フィードバックしていただけるとありがたいです。
パスタを茹でる時に塩は必要か?問題の回答
この問題は2012年位にSNSで盛り上がっていた古めのテーマですが、今でも答えは不明瞭らしいので料理人と調理科学のW視点から一つ答えを出してみたいと思います。
先ずは定説パスタを茹でる方法
パスタを茹でる方法の定説は「パスタ100gに1L以上のお湯を用意し、お湯に対して1%位の塩を加えて茹でましょう。」と言うものだ。
実際にはお湯1Lに塩10g程度の塩を加えて茹でる計算になる。
SNSの疑問を読み解く
そして「この塩が要らないんじゃない?」と言うのがSNS上で話題になった訳ですよ。
なぜそんな声が出るのか?と想像すると2種類の理由を思いつく。
一つ目はレシピに「塩を入れて茹でろ」と書いてあるので入れているが「1%より遥かに少し」しか入れておらず、入れない時との差が理解できないケース。
お湯1Lに塩10gといえば結構な量で、職業料理人以外はかなり勇気のいる量だ。
ちゃんと計ってみるとちょっと引く気持ちも分からないでもない。
しかもレシピには具体的な塩の量や目的を細かく書いていない場合もある。
なので茹で鍋に塩を軽く小さじ1/2程度加えて「パスタは塩茹でにした」と思っている。
この場合は、塩なしのパスタと茹で上がりがほとんど変わらずに茹で上がる。
結果、「塩なんて入れても入れなくても変わらない」となる。
もう一つは市販のパスタソースを使うケース。
これはソース側の問題でもあるが、ユーザーが塩を入れずに茹でたパスタと和えて美味しくなるように作ってある場合が多い。
そうなると塩なしで茹でても最終的には美味しくなる訳だから、塩は入れないのは当然だろう。
箱の作り方にも「茹でろ」とは書いてあるが「塩を入れろ」とは書いていないので当然入れない。
これに慣れると「塩なしでも美味しいじゃん」という感覚になる。
こういう違いがあるのに「パスタを茹でるときは塩がいる?要らない?」とざっくりとした話をするからどうも噛み合わない。
前提条件が違う状態で議論しても結論は出ないのだ。
あと一つ思いついたのは、イタリア料理としてのパスタを作ってない場合もあるかもしれない。
スパゲッティを茹でて何某かのソースで和えたり、何なら炒めたりして食事にはしているが、はなっから「イタリア料理のパスタ」として作っていない場合だ。
そうなるとアルデンテは関係なくなり、結果として麺に味がなくてもいい、茹で加減もアルデンテではなくしっかり茹ででもいいという結論に達する事もあるだろう。
しかし「パスタを茹でる時」というワードだけ取り出して語ると「イタリア料理としてのパスタを茹でる時」と「創作料理としてのパスタを茹でる時」で違う結果になる。
なるほど、日本は食のバラエティに富んでいるので十分にありえる。
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ケース別結論「市販ソースを使う場合」
このように考えると、もう答えは出たような物なので短くて恐縮だがケース別にまとめてみる。
市販のソースを使う場合
市販のパスタソースを使う場合はソースが塩なしパスタに合わせてくれているので茹でるときに塩は入れないで正解。
ま〜パスタとして美味しいかどうかはソース次第なので不明だが、塩を入れるか入れないかで言うと市販ソースを使うならば入れなくて正解だろう。
この場合、パスタとソースをよく和えてソースを染み込ませるとパスタに塩と旨みが染み込んで美味しくできるはずだ。
この場合はパスタとソースを合わせる時間が長めになりやすいので、イタリア料理的に楽しむなら麺の茹で加減は固めがいいだろう。
手作りパスタソースの場合
次に手作りでパスタソースを作った場合の結論は複雑なのでよく読んでほしい。
「パスタソースを自分で作った場合、かつアルデンテで美味しく食べてほしいなら塩はちゃんと計って1.2%〜1.4%程度入れて茹でるのが正解。」となる。
ケース別結論「ソースも自分で作るが気楽に作る場合」
仮定条件がモリモリになって申し訳ないのでしっかり解説する。
まず「パスタソースを自分で作った場合」だけで限定するとぶっちゃけパスタを塩茹でしてもしなくてもどっちでも良いが、少し入れたほうが最後の味付けが簡単になる。
あくまで家で作る場合の話だが、大体の塩味で作ったソースに固めに茹でたパスタを加えて和えながら煮て、味を確認しながら塩で調整していくのが簡単だろう。
これならパスタ自体に塩味が薄くても時間をかけてソースを吸わせて味を整えていけば結果的にちゃんと味がつく。
注意点は味を調整している間にパスタがソースを吸うので、最初のソースの液体量は多めがいい。
そして味付けに時間をかけるとパスタは柔らかくなっていくので、硬めに茹でてソースと合わせる。
そしてソースが絡むまでしっかり煮ながら混ぜる。
この2点を押さえると完璧ではないがそこそこ美味しく仕上がるだろう。
ケース別結論「ソースも自作し、イタリア料理としてのパスタを極める場合」
次に「アルデンテで美味しく食べる」と言う条件が入るとパスタは塩茹でした方が良く、しかも塩分濃度も1.2〜1.4%に揃えた方が良い。
「アルデンテで食べる」と言うのはパスタを噛んだときに中心に硬めの食感があり、これが麺のコシっぽく感じて食べると言う事だ。
コシのある麺は洋の東西を問わず、麺食い民俗にとっては美味しいと感じる点でもある。
イタリアでもアルデンテが好まれ、アルデンテのパスタこそ美味しい仕上がりなのだ。
パスタをアルデンテの状態で美味しく食べてもらうには、パスタが茹で上がった後、食べるまでに時間制限がある。
美味しいパスタは茹で上がってから「ソースと絡めて味を見て調整し、盛り付けをして運んで食べてもらう時間」を費やしてなお芯に食感がある事が必要なのだ。
そして塩がこの「パスタとソースを煮絡めて味を見て調整する時間」を短縮する重要アイテムなのだ。
パスタを茹でる時に塩が無い、もしくは塩が薄いお湯で茹でるとパスタの塩味は薄くなる。
それをソース単体で美味しい塩加減で作ったソースと合わせても全体の塩加減が不足する。
塩が足りないので味見をして塩を加えてまた味見という工程が必要になり、長めに味を調整することになる。
時間をかけて和えているとソースがしみて味は良くなる。
しかしパスタが伸びてアルデンテを逃しやすい。
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これに対してパスタの茹で上がりに小麦の味がする程度の塩加減でパスタを茹でると、パスタをソースに合わせた時にパスタに既に味がある。
ソースも麺も味があれば料理の味が決まるのが早くなる。
あとはソースの絡み具合の見極めに集中できる。
結果としてアルデンテのいい時に美味しく食べてもらえる可能性が高くなるのだ。
パスタの塩は何のために入れるのか?さわけんシェフ的見解
パスタを茹でるときに塩を入れるのは何のためか?と聞かれたら私は「アルデンテを逃さない為」と即答する。
お湯の温度を上げる為や食感を出す為という説もあるがいづれも同意し難い。
パスタを茹でるお湯の温度を上げても際立っていい事もなく、塩でパスタに弾力を出すという話については多少あるかもしれないが、実際は全く使えない。
パスタに弾力がはっきり出る塩加減は塩分濃度3%位からで、その塩加減でゆでたパスタはしょっぱ過ぎて一度洗って塩抜きしないと全く使えないのだ。
塩の作用で麺がプリッとできるかもしれないが塩分が合わない。
塩分を調整していると手間がかかりすぎるので、美味しパスタを作る工程としてはやはり使えない。
1%ちょっとの塩でも無塩よりは食感もいいかもしれない程度だろう。
最後に
料理人は美味しいパスタを食べてもらいたい。
その為にコシのある麺を食べてもらう事を考えてパスタの茹で時間を決める。
茹で上がった後にどれくらいソースと和えて旨味を吸わせるのか、どれくらい時間をかけて盛り付けるのか、サービス人がどれくらいでお客さんの前に持っていってくれるかなどを頭に入れて作っている。
そうすることでパスタに味がついて麺にコシっぽい物が感じられる美味しいパスタを安定して作ることができるのだ。
料理に入れる塩の割合は0.6%〜1%あたりになるのは概ね決まっているが、どこにどう入れるのかは料理する人の自由だ。
パスタの場合、茹で汁がしょっぱめでソースが薄めの方が味が安定するという人もいる。
それによって食感や旨みの感じ方が変わってくる事もあるので料理は深くて面白い。
料理は美味しいのが正解なので最初はレシピ通りに作ってみて、そのあとはご自身で考えて美味しくできるやり方を確立すればいい。
いろいろ考えて料理を作ると巷に溢れるレシピというものがいかによく考えられているか、またはいい加減かが見えてきて料理をもっと楽しめるのでは無いだろうか。
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