「すぐ読み終えられる本」の可否
ぶっちゃけ、私は「簡単に読み終えられちゃう本」にあまり価値をかんじていなくて、よくAmazonにある「目新しいことはかいてなかった」というレビューに同意しちゃうタイプだったけど、編集者としてはたらくうちにその意識がすこしずつ変わったし、ここ数日でさらに「すでに知ってる情報を取得しなおすことにも、あたらしい情報をとりいれるのとおなじかそれ以上の価値があるんじゃないか」と考えるようになった。
たとえば自己啓発界隈では、毎月のようにいろいろな出版社から本を出しているかたがいる。当然ながら、それらの本の内容は切りくちやターゲティングこそことなれど、おなじような内容をくりかえしていることも少なくない。
ただでさえ本がおおすぎるのに、そんなに似たような本を出すことに意義があるんだろうかと考えてしまっていた。
読書のきっかけを作る
そんな考えが変わったのは理由は2つある。
1つめは、先日Twitterをつうじてお会いした古山有則さんとの会話がきっかけだ。
古山さんはもともと読書コンプレックスをもっていたらしいんだけど、多作な自己啓発作家Sさんの著書をよみきれたことで克服し、4年間で10000冊読了するまでになったらしい。
なるほどたしかに、すぐに読みきれる本はビジネス書や自己啓発書を読むきっかけや習慣作りの導入としての役割はもっているだろう。
切り口が違えば新しい気付きを得られる
もうひとつは、すでに何冊も自著を上梓しているビジネス書作家のかた(かりにAさんとする)と打ちあわせしたときに聞いたものだ。そのひともかなりの多読家で、専門的な本や堅めのビジネス書と同時並行で、S氏の本を月に数冊は読んでいるらしい。
さわ「でも●●さんなら、いまさら、あのあたりの自己啓発書から新しく学ぶことなんてないでしょう?」
Aさん「そんなことありませんよ。同じメッセージでも、切り口が違えば新しい気づきが得られます。あと、そこそこ文章量があるのに1時間程度で読みきれるスムーズな文章が書けるのはすごいことです。勉強になります」
私もなんだかんだ公私あわせて月間15冊くらい本を読んでいるけど、とくにビジネス書を読む場合、売れゆき(およびその要因)や新奇性に着目しがちで、おなじような内容からあらたにまなびなおすというスタンスを忘れかけていた気がする。それを思いだせた。
と同時に、かならずしも本の企画をたてる場合、すべての本においてテーマにおける差別化に目くじらを立てる必要はないのかもしれないなとも思っている。おなじ著者のおなじようなテーマだったとしても、もっと既存の本とはちがう年代や境遇、立場のひとにとどく本づくりはできるはずで、そうした提案をしてこその編集者なのかもしれない。
ということをボンヤリとおもった。
まあもちろん、そういう本は大ヒットは狙えない(とおもう)ので、結局は編集者として手がける本のバランスの問題ではあるだろう。
その本がどういう売れかたをしそうかおもい描きながら、そのとおりになれば、たくらむものとしてはうれしい。
(了)
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