海外人事担当者が必要な4つの知識とは? 【明日から役に立つ!海外人事のヒント#3】
みなさんこんにちは。
SaveExptats広報です。
SaveExpatsは海外駐在員が健康で活き活きと働く社会を目指して活動していますが、駐在員だけではなく、それを支える海外人事の方々にもお役に立てればと思い、海外人事の皆様に向けたコラムをスタートしています!
第3回目は、「海外人事担当者に必要な知識」について、一緒に考えていきたいと思います。
海外人事担当者の困りごと
まずは海外人事を担当する皆さんの課題や困りごとを次のように整理しました。
海外人事の業務に関する情報が他の人事領域と比較して圧倒的に少ない!(書籍やセミナーもない・・・)
担当者の守備範囲が広いにもかかわらず、体系的に専門性を学習する方法がない!
人事部門内に海外駐在の経験者が少なく、駐在員の実態がわからない。
さらに社内でもっともグローバル化が遅れている!
これらの課題を解決するためには、必要な情報を体系的にまとめることが重要です。しかし、情報が少なく、体系的に学習する方法がありません。
その理由は、海外に駐在員を派遣している企業はグローバルに事業を展開している限られた企業であり、そもそも海外人事に関する情報が少ないからです。また、みなさんが担当する海外駐在員は国内勤務者に比べて少人数のため、限られた人数で業務を行う結果、一人ひとりの業務範囲が広くなってしまいます。
海外人事は国内人事と比較すると人事領域における必要な知識は広く浅くなり、それに加え海外人事ならではの専門性が必要となってきます。具体的にどのような専門性や知識が必要かを考えると、以下の4つの側面に分けることができます。
①本社人事・人事企画系の知識
まず一つ目は、本社人事・人事企画系の知識です。制度や人事施策の企画・設計のことを指します。
等級、評価、報酬、教育体系など各領域について、良質な参考書をそろえ、それらに一通り目を通し、概要やポイントを把握しておくことが重要です。これら制度設計や人事施策の検討の領域は、近年の環境変化が速く、知識が陳腐化しやすい傾向があります。そのため、ゼロから自前で構築するよりも、外部の専門家に相談することがトレンドとなっています。
原理原則を理解し、専門家と対等に渡り合える程度の知識を備えておきましょう。
②HRBP系の知識
2つ目はHRBP系の知識、すなわち、事業計画と人事戦略の整合性を図りつつ、それらに必要な人的資源をマネジメントすることであり、人事担当者として非常に重要な能力です。
経営資源の中でもヒトはすぐに準備できないため、中期の事業計画や長期的な環境変化を予測し、事業計画達成に必要な人的資源を準備していきます。1つ目の本社人事・人事企画系の知識に加え、事業部門での企画やマネジメントの経験が求められます。これらはMBA研修などを通じて効果的に習得することもできます。
*HRBP: Human Resource Business Partner
③人事管理系の知識
3つ目は人事管理系の知識です。海外人事担当者の業務の中でも、最も情報量が豊富な分野であり、制度運用などのオペレーションの最適化、効率的な制度運用が求められます。
国内における給与支給や社会・労働保険、税務などの知識に加え、海外駐在員への対応に必要な知識をさらに上乗せして習得していくことが求められます。セミナーやビジネス書を利用して、効率的に勉強を進めることが重要です。
④事業所人事系の知識
4つ目は事業所人事系の知識です。まずは自社の制度についてしっかりと理解しましょう。駐在員特有の取り扱いを含むことはもちろんのこと、さらに、現地で駐在員が遭遇するさまざまな事態に適切にアドバイスできるよう、現地事情や海外勤務ならではの「あるある」についても把握しておくことが重要です。
部門のこれまでの経験を整理し、形式知化できれば部門のコア・コンピタンスにすることができます。また、駐在員がパフォーマンスを最大限発揮できるようにするためには、健康管理に関する基本的な知識も重要です。
このような観点で自社の海外人事部門の担当者に必要な知識やスキルについて棚卸しを行い、さまざまな分野から情報を収集して学習していくことをおススメします。
さらに、必要な情報は業務遂行に直接関係する知識やスキルだけではありません。海外でのビジネス遂行をサポートするという特殊性から、国内人事とは異なる情報を収集する必要があります。常に海外での出来事に関心を持つことはもちろん、最新のビジネスニュースや国際情勢に関する情報源、例えばニュースアプリやオンラインビジネスプラットフォームの活用も考えられます。そして何より、現地に赴く努力をすることが、究極の情報収集方法といえるでしょう。
オペレーション主体から戦略人事への転換
人事部門のグローバル化の遅れは、以前から指摘されていることです。人事の領域ではその時々の流行りがバズワードとして飛び交います。最近では、働き方改革やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)、ジョブ型雇用などを耳にすることが多いと思います。これらのバズワードに踊らされないよう注意が必要です。
「人事部門のグローバル化」という言葉も2010年前半に流行しました。これら人事領域の流行りに共通するのは、人事部門の役割認識の欠如です。人事の役割とは、事業計画達成のための人的資源を、質的、量的にタイムリーにマネジメントしていくことです。人事の仕事は手段に過ぎないのです。
人事部門が真にグローバル化するためには、圧倒的な目的志向で機能と役割を明確化し、グローバルに展開する事業そのものにフォーカスして、どのようにすればグローバルで事業計画が達成できるのかを問い直す必要があります。
前述のHRBP機能と合わせ、当面は事業系の海外駐在経験者を海外人事部門に招へいし、人事担当者と二人三脚で戦略を立案・実行していくことが、人事部門のグローバル化への近道のひとつと考えられます。
今回は、海外人事担当者が直面する課題と必要な知識について考察しました。変化の激しい現代において、人事部門の役割はますます重要になっています。皆さんがこの記事を参考にし、実務に役立てていただければ幸いです。
次回も引き続き、実践的な知識と具体的な事例を交えながら、人事の専門性を深めていくテーマをお届けします。お楽しみに。