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エッセイ

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さまざまなエッセイです。
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#小説

うしろあたまに秋をみる

うしろあたまに秋をみる

駅のホームで毎日同じ人のうしろあたまを見ている。
えりあしだけひょろっとやや長いショートカットの女性。
私はいつも前から4人目くらいの位置で朝の急行列車を待っているのだけど、その人はいつも最前列にいる。
かれこれ、半年ほどその人のうしろ頭をわたしは見ている。

うすらオレンジ黄色い茶髪、おっと根本がどうも伸びてきたぞ、そろそろ染めどきだなあとか、えりあしがどうも肩につきそうだぞ、などさながら季

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虫でもいいからそばにいて

ゴキという二文字から始まる黒い虫ついて考えたい。考えたくもない、という方もいると思うが私はあえてここで考えてみたい。
(以下、彼らの呼称を仮に黒さんとする)
長らく忘れていた黒さんとのことを思い出したのは、昨日読んだ岸本佐知子さんのエッセイ集に黒さんとのひと夏戦いの記録が載っていたからだった。
やあ、と現れるだけで家中がひっくり返るような騒ぎを巻き起こす黒さん。
私はいつの間にか、目を細めて黒さん

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春の昼下がりはコインランドリーにいこうよ

春の昼下がりはコインランドリーにいこうよ

カナダに住んでいたころ、毎週日曜日はわたしのコインランドリーDAYであった。
というと聞こえはいいが、要はなけなしの数ドル片手に一週間たまりに溜まったボロきれを洗濯機が「ああっもうそれ以上はだめぇ、ああっ」と悶え苦しむほどパンパンに詰め込みガンガンに洗いまくる日である。
そんなに詰め込んだらちゃんと洗えないヨ?  と柔軟剤使うタイプの女に髪の毛サラッされそうだがとにかく水を通して熱風をあてればな

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30女のバイト遍歴 1  - 13歳、チンピラのチラシ屋でバイトしてた時のはなし。

30女のバイト遍歴 1  - 13歳、チンピラのチラシ屋でバイトしてた時のはなし。

いわゆる、なんとなしに不安っていうものが、30になってから初めてにょきにょきとその姿を現してきたような気がする。
私はいままで悩みという悩みもなく、とにかくその場その場の欲求に従って生きてきたのだけど、ふと振り返ってみてしっちゃかめっちゃかな自分の履歴書をみて愕然とした。

肉屋、バーテンダー、ペンキ屋、居酒屋の調理人、事務員、AD、CADオペ、改札機の保守員、テレビの美術さん、遺跡発掘、イタリア

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ひみつの海外(こっそり読んでね!)

ひみつの海外(こっそり読んでね!)

カナダ・トロントに住んでいたころ。無職に耐えられず日本食料品店で働いたことがあるのだけど、そこの日本人店員たちの醸し出すあまりの日本アッパレ!クール!ジャパン!感にばちばちやられてしまって、すぐにやめてしまった。
日本の文化は言語や食や美において優れていて、西洋の文化は雑だとか品がないだとかなんだかそういうざっくりとした議論(というよりぼやきであるといったほうが正しいと思われる)を聞いていると、

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