全国自然博物館の旅【23】おがの化石館
今回は化石スポット巡りの旅となります。地質学的な資料に恵まれたジオパークに指定地域は、化石マニアにとって絶好の宝探しポイントです。筋金入りの化石発掘者ともなれば、トレジャーハンター並みの装備で現地へ赴きます。
私たちが博物館で見ている古生物の姿は、全て化石の研究から判明したことなのです。ぜひ各地のジオスポットで、太古の遺産を探す旅に出かけましょう。
化石を探しに秩父へ行こう!
日本地質学の聖地・ジオパーク秩父。大迫力の自然景観が見られ、地形を活かしたアウトドアツアーも開催されています。一方で、筆者のように化石を探しにやってくる者は少数派だと思います。秩父のメジャーな観光地を巡るのも素晴らしい旅になると思いますが、たまには脇道に逸れて、普通の人がなかなか行かない場所を目指してみるのもいいのではないでしょうか(笑)。
まず筆者は、西武鉄道の秩父駅前にてレンタカーに乗って、秩父のアイドル古生物に会いに行くことにしました。秩父地域では古代哺乳類パレオパラドキシアの化石が発見されており、骨格が国の天然記念物に指定されています。その詳細につきましては過去の記事で解説しておりますので、ぜひご覧ください(下記リンク参照)。
パレオパラドキシアに会うために、般若の丘公園へと車を走らせます。小鹿野町の般若地域では、パレオパラドキシアの化石産地の1つでもあります。西武鉄道の駅からは少々離れており、ルートによっては狭い道を通る可能性もあるので、車の運転には気を使いました。
辿り着いた先に待つのはパレオパラドキシアの拡大模型。そして、古代魚類チチブサワラの実物大模型です。約1500万年前の秩父地域には海が広がっていて、浅海域ではパレオパラドキシアが暮らし、沖合ではチチブサワラが泳ぎ回っていました。
古生物ファンなら「パレオパラドキシアだ。すげー!」と感動しますが、よく知らない人なら「何これ、カバの模型?」と思うかもしれません。そういった場合、化石にお詳しい方は、優しくパレオパラドキシアの魅力を伝えて、カバとは違う動物であることを説明してあげてくださいね。
再びレンタカーに乗り込み、今度は秩父最強の化石発掘スポット「ようばけ」へと向かいます。ようばけは赤平川の浸食によって形成された崖であり、約1500万年前の地層が剥き出しになっています。秩父のジオサイトでもある化石探しの名所ですが、対岸に渡ることは禁止されていますので注意しましょう。
ようばけの手前の岸辺は化石の発見率が高く、運が良ければパレオパラドキシア級の大物が見つかるかもしれません。なお、本格的な化石探しをするなら、ヘルメットや手袋などの防具が必要です。また、初心者の方はプロの同行のもとで発掘を楽しみましょう。
化石の捜索を終えたら、いよいよ博物館へGO。ようばけと化石館は、互いに目と鼻の先にあります。今日はジオパーク秩父の秘密をとことん学びます!
化石マニアよ、地球の遺産に震えろ!
ジオパークから目覚める太古の野生
入館と同時に、ジオパーク秩父の看板古生物の登場。古代哺乳類のパレオパラドキシアです。化石王国としての秩父を象徴する奇獣、しっかりと目に焼きつけたいですね。
1階フロアの展示標本は、パレオパラドキシアを筆頭に、秩父にて発見された古生物たち。ご当地の貴重なお宝を拝めるのは、地域化石館ならでは! マニアの方は、ケース内に並べられた化石を見るだけでテンションが爆上がりですね。
秩父地域の目玉となる古生物は、パレオパラドキシアだけではありません。巨大魚チチブサワラ、古代ヒゲクジラ類のチチブクジラも、ジオパーク秩父の重要なスターです。
彼らの存在が古生物ファンの目に留まり、より多くの人々の関心を惹きつけます。まさにジオパーク秩父の大使です。
ジオパーク秩父は化石の名産地。よって、当地を発掘フィールドとする化石ハンターがいらっしゃいます。一般の愛好家の方々が集めた生物化石は、かけがえのない学術標本です。
これから先、皆様の採集した化石を博物館に寄贈することもあるかもしれませんので、見つけた化石については採集地・採集者・採集日時の記録を残しておきましょう。それがないと正式な学術標本とは見なされません。
名産地の化石標本が大集結! 大地から得られし宝の山
ジオパーク秩父の学びで化石への理解を深めたら、さらに広い地域の古生物に会いに行きましょう。2階フロアに上がると、広々とした展示空間に出ます。
ここからは、秩父を飛び出して、よりグローバルな世界の標本との対面となります。地球規模での化石学習の始まりです。
ケースに展示されている標本は、世界各国の名産地にて発掘された貴重な化石たち。地球史の幅広い時代の生命たちが集結しており、見ごたえ抜群です。化石という地球遺産の価値を改めて強く感じます。
どの化石も、1点1点が貴重で学術的価値はとても高いです。これほどたくさんの標本に囲まれて、マニアの方はすごく幸せな心地になると思います。
そして、2階フロアの奥には、さらにテンションを上げさせてくれる大物が待っています。全長4 mの海洋肉食爬虫類プラテカルプスです。白亜紀の浅い海で暮らしていた捕食者であり、ドラゴンのごとき洗練されたフォルムは必見!
子供たちからすれば、看板古生物のパレオパラドキシアよりもかっこよく見えるかもしれません(笑)。
学術的な財宝でいっぱいの化石館。悠久の地球の歴史を、この施設の展示から感じ取ることができます。おそらく、来館者の大半は化石マニアであると思われますが、一般の方にもこれほど素晴らしい宝の数々を見ていただきたいと願っております。
当地のジオパークの本質を知れば、もっと秩父が好きになると思います。
おがの化石館 総合レビュー
所在地:埼玉県秩父郡小鹿野町下小鹿野453
強み:秩父地域産の豊富な生物化石標本と充実したキャプション、幅広い地域と時代を取り扱った資料の高い化石展示、芸術品のごとく処理が施された生物体の明瞭な化石標本
アクセス面:車で行くのがベストです。関東在住の方なら自家用車で来られるでしょうし、西武鉄道の秩父駅前にはレンタカー屋さんがあります。アクセスのアドバイスですが、行きも帰りも広い道を選びましょう。299号線や283号線の道路を少し逸れれば狭い道が多くなり、車種によっては通行しづらいところもあります。秩父駅から化石館まで普通にカーナビの通りに向かう場合、狭い道に入るリスクはそれほど高くないですが、万が一ということもありますのでご注意願います。
地球科学に関心のある方々にオススメの化石博物館です。どちらかと言えば、古生物に詳しい化石マニア向けの展示施設だと思います。ものすごく標本資料が充実しており、数多くの生物種の化石を拝むことができます。秩父の大地の成り立ちや、大昔の秩父地域の生態系を織り成す動植物についての展示がとても濃密であり、ジオパークならではの本格的学習ができます。
マニアの人々は、化石館ならではの雰囲気にたまらなく癒されると思います。地球科学に関心のある方々に強く薦められる博物館です。ただし、ティラノサウルスやトリケラトプスといったスーパースター的な恐竜の巨大骨格展示はありませんので、エンターテインメントの欲求よりも、純粋な学術的好奇心をもって楽しむべき施設だと思います。