![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141119300/rectangle_large_type_2_af46eeec5b69f46f1c758b70c4034489.jpeg?width=1200)
全国水族館の旅【35】北九州市水環境館
水域環境は主に海水域と淡水域に分けられますが、実は2つの水質が交わる特殊な領域が存在します。それが「汽水域」と呼ばれる環境なのです。
水中の塩分は淡水ほど薄くなく、海水ほど濃くはない。2つの世界が出会う場所には、どのような生き物が暮らしているのでしょうか。その秘密を実地で学ぶため、北九州市の水族館を訪れました。
北九州市は全国屈指の環境先進都市!
川沿いに位置する汽水域の水族館。所在地は、北九州市の大型都市・小倉です。九州の内外からアクセスしやすい街であり、仕事や観光で常に多くの人々が集まっています。
一般的に、小倉観光と言えば有名な小倉城のイメージが先行すると思います。行楽シーズンではお城の周りには全国各地から観光客が訪れ、小倉はさらに賑わいます。
![](https://assets.st-note.com/img/1716086377836-AOpWPrtPP5.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716085934528-bWWdQSBPrV.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716086525851-5VRvhTFyF0.jpg?width=1200)
自然と都市と文化が融合した北九州市は、とても魅力的な街です。さらに、環境保全について素晴らしい実績を持っており、全国的にトップレベルの環境先進都市でもあるのです。
昭和の高度経済成長期。北九州市地域は四代工業地帯の1つとして、日本の近代化や経済発展を支えてきました。その一方で、有害物質が環境中に排出され、海も川も大気も深刻な汚染に見舞われました。
そんなとき、北九州市の人々は一斉に立ち上がりました。市民・企業・学術機関・行政が一体となって、大規模な環境改善に乗り出したのです。工場での生産工程の見直しと汚染物質の除去、住所の方々による環境クリーン活動、行政での「北九州市公害防止条例」の制定など数々の対策が実施され、北九州市は美しい青空と清流の水域を取り戻しました!
まさに環境再生の先駆にしてプロフェッショナル。公害を克服した奇跡の街として、北九州市の成果は国内外に広く報じられました。近年においても環境保全活動の成果はめざましく、北九州市は公害克服のノウハウを海外に伝えており、OECDからアジア初の「グリーン成長都市」に認定されました。
![](https://assets.st-note.com/img/1716184829060-3x2AunftmA.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716158051528-vDqLFjYy4o.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716158131639-j0y7kfyoyY.jpg?width=1200)
北九州市水環境館は紫川の岸辺に立っており、小倉城の対岸に位置しています。本館の設立にあたっては北九州市民のアイディアが導入されており、改めてこの街が環境先進都市であると実感できます。
汽水域の特殊な生態系と、自然環境と人類の未来。北九州市から知りたいことは山ほどあります。さっそく、学びがたっぷりの水環境館へと行ってまいります。
![](https://assets.st-note.com/img/1716086781056-nEjnQOC4nG.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716086810004-80aVPScc53.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716086850425-b38S5smuNR.jpg?width=1200)
海と川の交差点に立つ環境学習型の水族館
甦った紫川の流域に息づく生命たち
南口から入った来館者を出迎えるのは、紫川の中の様子がわかる「河川観察窓」です。汽水域ですので、海に棲む生き物もたくさんやってきます。水の向こうに目を凝らしつつ、水棲生物との出会いを楽しみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1716185125377-VJqWsOTE8K.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716187621723-iXphMxZcwB.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716188153658-l7SjW78aHF.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716187921268-ERK0WWWE8Q.jpg?width=1200)
それでは、待ちに待った水族展示を見ていきたいと思います。
最初に出会うのは、汽水域に生きる魚たち。我々のよく知る海水魚も多く、海と川の境界という特殊な環境への関心が高まってきます。さらに、暖かい海から黒潮に乗って福岡県にやってきた「旅の魚たち」とも出会えるので、あらゆる環境に広がり適応しようとする生命のたくましさを感じられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1716200988846-ZPeft0ju5a.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716201104401-j3fOvAqyNr.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716200444264-L2F7AV4alY.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716200385023-LtcqUmTQa1.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716201650848-JKE4ZqXM7V.jpg?width=1200)
水族館の河川の淡水魚展示では、多くのマニアの方々がタナゴ類との出会いを楽しみにされていると思います。本館においても、美しく可愛いタナゴたちがたくさん飼育展示されています。
紫川だけでなく、全国の水域で普遍的に見られたタナゴ類は、人間による環境破壊のせいで急速に数を減らしています。水環境館ではタナゴ類を救うべく、人工繁殖などの対策を実施しています。各種展示にてタナゴ類の過去と現在を知り、保全のために何が必要なのかを考えてみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1716226942273-fTKKh8hYlU.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716257422446-7R9oGS2dBh.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716257447276-K3jQ3gnCgt.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716227256594-abZ4t4Ftao.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716227001938-bv4WhRTM1e.jpg?width=1200)
魚たちに続いて、川でよく見かける生き物といえばカメです。他の地域と同じように、紫川においても、在来種のカメのみならず、繁殖力の強い外来種が見られます。身近な淡水生物であるカメたちの姿、じっくり観察して癒されてください(笑)。
![](https://assets.st-note.com/img/1716202748752-YfpY5tIeZV.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716202838246-zr99dezba2.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716202857574-fy6NPcFElL.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716203600160-p4XeMkFTHW.jpg?width=1200)
河川の流域では豊かな植生が育ち、そこにはたくさんの爬虫類や両生類が生息しています。紫川にも多くの種類が息づいており、流域生態系の多様性を感じさせてくれます。美しくて妖しげな北九州市の爬虫類・両生類の素顔、とても魅力的で見とれてしまいます。
![](https://assets.st-note.com/img/1716225896219-xEinHsjiOy.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716226106985-QA4NDY6fCa.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716226264052-aMWX9NmKr8.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716226352961-9MnzNaDjGC.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716226511566-rpEaJEzAoq.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716226587047-eaNk20NfvU.jpg?width=1200)
奇跡の川が教えてくれる未来への環境保全
長大な紫川では、上流域・中流域・下流域のそれぞれで生態系が異なっています。透き通る淡水の清流、水生植物の豊かな中流域、海水の混じる下流の汽水域、さらに本流から外れた小川や池なども存在しており、紫川は数知れない生命を育んでいるのです。
本館における河川の生物展示は、とっても豪華で超見ごたえ抜群です。美しい河川は多様な生命の楽園なのだと改めて理解できます。
![](https://assets.st-note.com/img/1716252584666-CGpubc1Ecv.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716253051908-hsfOL8bRIw.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716252873674-WfpA3RN13H.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716253792243-6D1U5YLqnz.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716257672427-xeOh7AeXxI.jpg?width=1200)
そして、やはり気になるのは汽水域。海の魚と川の魚の交差点であり、魚たちの療養所でもあります。河口付近はケガをした魚たちにとって休息の場となり、大雨で流されてきた淡水魚が川に戻るまでの避難場所となります。
本来なら交わることのない2つの世界が、汽水域では奇跡の出会いを果たします。魚たちの交差点にはどのような生態系が広がっているのか、展示を通して学んでいきましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1716254688759-Uh3AgTvoiR.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716254399255-G9D97N04Pu.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716255316374-WdVXRd6lU1.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716255574932-j0SS1H2lrb.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716255426787-DOAje7pajS.jpg?width=1200)
河川環境保全における重要なテーマとしてあがるのは、希少種と外来種の問題です。希少種の減少、外来種の拡散、外来種と在来種の交雑による遺伝的撹乱ーー他の地域と同じように紫川でも多くの難題に直面しており、様々な対策が取られています。
日本に連れてこられ、一方的に駆除される外来種も被害者です。不幸な生き物を増やさないために我々に何かできるのか、本館の展示は来館者に強く問いかけています。
![](https://assets.st-note.com/img/1716263197557-09JRRl9tvA.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716262736032-2SSWKoI3G3.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716262999685-TjPHFrxrVS.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716264332295-I14KbXSvtm.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716264236820-MGtQYV7PSq.jpg?width=1200)
学術展示が濃密なうえに、本館では紫川と人のつながりを感じさせてくれる工夫がたくさんあります。各種イラスト展示や映像展示に触れながら学んでいると、紫川が有する生物多様性に感動してしまいます。
本当に素晴らしいと思うのは、これほど美しい自然環境を復活させたのは、地域の人々の力だということです。北九州市は昭和の時代から環境保全の最先端を走り、見事に母なる紫川を甦らせました。自然と人間が調和する未来の形は、紫川の歴史から学べると思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1716271023254-bSWfW8YGqh.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716271061681-BhlgZ1VW8C.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716272225389-R0zMoKIhYa.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716272296789-d72ByHjZU0.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1716271171342-1t5IDTUD0Z.jpg?width=1200)
水環境館での学びを経て、北九州市が環境先進都市である所以を理解できました。紫川の環境再生の原動力となったのは、地域自然を愛する人々の強い想いだったのです。
現在こうして海と川の交差点に生命があふれているのも、北九州市の産官学が一丸となって突き進んできたからなのです。環境保全のためには技術開発や日々の研究が必要不可欠ですが、最も重要なのは人々への意識啓発となる環境教育なのかもしれません。北九州市水環境館の学術教育活動は、未来の環境保全のプロフェッショナルを生み出すことでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1716271981050-0SgIutrAl4.jpg?width=1200)
北九州市水環境館 総合レビュー
所在地:福岡県北九州市小倉北区船場町1-2
強み:汽水域の特殊な環境を説く生体展示と学術的資料、河川生態系の実像を伝える学術性の高い水族展示、紫川を題材に地球環境と人類の未来について問いかける環境教育性の高さ
アクセス面:JR小倉駅から徒歩10分。美しい小倉の街並みを眺めながら、ゆったりと歩いていきましょう。都市部に近いので、車よりも公共交通機関の利用が理にかなっています。また、本館は19時(午後7時)まで開館しているので、他の有名スポットを巡ってからでも十分に観覧することができます。
環境先進都市・北九州市が誇る素晴らしい環境学習施設であり、老若男女問わず、多くの人々に本館を訪れていただきたいと強く思います。紫川の河口域にて間近の汽水域環境の生態系を学習できるだけでなく、北九州市の環境再生の歴史や自然と人類の関係の在り方についても学ぶことができます。環境教育の真髄が詰め込まれた、まさに未来へつながる特別な水族館です!
先述の通り、教育性が非常に高く、なおかつ展示内容がわかりやすいので、誰もがスムーズに 学術情報をインプットできます。汽水域の環境メカニズム、紫川の自然再生の軌跡、河川環境の特徴を体系的に学べます。さらに、生体展示の飼育生物種も多様であり、淡水上流域から汽水域まで幅広い環境の生物分布を知ることができます。
全ての生き物好きにとって、本館での学びはきっと大切な体験になると思います。紫川の自然環境を学習しつつ、環境先進都市としての北九州市の偉大さを感じてください。
![](https://assets.st-note.com/img/1716271239058-j4SU8pfwNt.jpg?width=1200)